フリーランス国際協力師の原貫太(@kantahara)です。
僕はブログやSNSを使ってアフリカの情報を山のように発信してきましたが、世間一般のアフリカに対するイメージはまだまだ偏っている印象を持ちます。
- アフリカは貧しい
- アフリカは危ない
- アフリカは可哀想
- アフリカは動物がたくさん
- アフリカは病気が恐ろしい
こういった偏見を持っている人は未だに多いと思いますが、結論を言うと「その捉え方は必ずしも間違ってはいないけど、より正確とは言えない」です。
その理由を今から解説します。この記事を読み終えた頃にはアフリカに対するイメージも大きく変わっていると思いますよ。
本題に入る前に「アフリカ」ってどこ?
本題に入る前に、前提を確認しておきます。基本的にこの記事がターゲットにしているのは「サハラ砂漠以南のアフリカ」です。主には東アフリカ、さらには僕が活動するウガンダを例に挙げていきます。
基本中の基本ですが、アフリカは国名ではなく大陸名です。全部で55ヶ国あります(54ヶ国説もあり)。
アフリカを語る時、サハラ砂漠を境に「サハラ砂漠以北アフリカ」「サハラ砂漠以南アフリカ」と分けることが多いです。理由を話すと長くなるので割愛しますが、サハラ砂漠以北のアフリカはイスラムの影響を強く受けており、サハラ以南アフリカと比べると人種や文化も大きく異なります。(もちろんこれも地域差がありますが…)
ということで、この記事の中では「アフリカ」をサハラ砂漠より南のアフリカというイメージで捉えてください。
アフリカは貧しい…?
一つ目の偏見は「アフリカは貧しい」です。
もちろん、アフリカには人間としての基本的ニーズが満たされていない「絶対的貧困」に苦しむ人がたくさんいます。例えば僕が支援するウガンダ北東部のカラモジャは生活環境が非常に厳しく、ドロドロに濁った水を飲む子どもたちもいます。
世界銀行の定義では、絶対的貧困とは一日1.90ドル以下で生活をする人々を指し、2030年までに絶対的貧困層の約9割がサハラ砂漠以南アフリカに集中すると予測されています。
ですので「アフリカは貧しい」という考えは必ずしも間違っていません。
しかし、アフリカ大陸には約12億人が暮らしています。経済状況も人それぞれです。その日生きるための食べ物がないアフリカ人もいれば、首都で高級外車を乗り回しているアフリカ人もいます。
例えばウガンダでも、首都カンパラの高級住宅街に足を運べば日本人の数十倍から数百倍稼いでいる現地人もいます。政治家や銀行役員、国際機関の職員なんかがそうですね。
僕の知り合いのウガンダ人に国連勤務の方がいるのですが、聞いたところ月給は約20,000ドル。日本円に換算すると約240万円です。一応補足しておくと年給ではなく月給になります。
その他にも、国際機関の若手スタッフでも日本円で月給20~30万円は貰っている人はたくさんいますし、ローカルの大企業でも役員レベルになると月10,000ドル以上貰っているアフリカ人はザラにいます。
最初に解説したように「アフリカは貧しい」という考え自体間違ってはいません。しかし「アフリカ全体が貧しい」という考えはやはり偏見であり、現代アフリカに対する正しい捉え方とは言えません。
経済成長が著しいアフリカ諸国では経済的格差の問題がますます深刻になっています。貧困地域に行けば栄養不足が原因で餓死する子どもがいる一方、首都のお洒落なカフェでは毎日のように食料廃棄されていますから。
「アフリカは全体的にはたしかに貧しいけど、経済成長とともに絶望的なまでの格差が広がっている」くらいに考えておきましょう。
アフリカは危ない…?
二つ目の偏見は「アフリカは危ない」。初めてアフリカに行くと周りに伝えた時、「強盗に遭わない?」「誘拐されない?」「テロに巻き込まれない?」とすごく心配されました。
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これも同じように、「危ない地域もあれば、女性が夜一人で出歩けるような国もある」です。
アフリカ大陸には55も国があり広大なため、治安の安定している国もあれば、めちゃくちゃに危険な紛争地もあります。
例えば僕が活動するウガンダは、首都カンパラを含めて全体的に治安が安定しています。しかし、北部に隣接する南スーダンでは6年紛争が続いており、日本人が行くには大変危険な地域です。外務省の海外安全ホームページでもレベル4の「退避勧告」が出されていますね。
一方で、ウガンダの南西に隣接するルワンダは「アフリカで一番治安の良い国」とも評価されており、「女性が夜一人で外を出歩いていても問題ない」と言われることもあります。
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また、これは日本でも同じことが言えますが、一つの国の中でも地域によって危険度が大きく違います。上述したようにルワンダは非常に治安のいい国ですが、「世界で最も危険な紛争地の一つ」と呼ばれるコンゴ民主共和国東部との国境付近には近寄るべきではありません。
そもそも「アフリカ」という言葉は「アフリカ大陸」を表しているため、一概に危ないか、危なくないかを評価することはできません。「アフリカ旅行は危険?5回旅行した人があなたの不安すべて解消します!」という記事の中でも詳しく解説しているので、あわせてチェックしてみてください。
アフリカは可哀想…?
三つ目の偏見、アフリカは可哀想。
可哀想というのはあくまでも感情であり、主観によるものなので、結局はその人がアフリカをどう捉えるかによります。ですが、少なくとも僕の周りのアフリカ人は「別に可哀想なんて思ってほしくない」という人が多いです。
可哀想という感情の多くは「アフリカには問題が山積みで、それに苦しむ人がいるから」という想いから生まれていると思います。
もちろん紛争で傷つき、家族を失い、故郷を離れることになった難民は「可哀想」に見えるかもしれません。しかし、そんな厳しい状況に置かれながらも、周りの人たちと協力しながら強く生きている人たちと僕は出会ってきました。
また、アフリカの田舎に足を運ぶと一日1.90ドル以下で生活を送る人たちがたくさんいます。先ほど紹介したような、いわゆる絶対的貧困層と呼ばれる人たちです。
ですが、たとえ経済的な指標では貧しい生活を送っていても、彼らは農業を中心に自給自足の生活を送っています。間違いなく日本のサラリーマンよりは家族と過ごす時間が多いですし、話を聞く限り彼らは十分に幸せを感じているようです。
「可哀想」という感情は、私たちの主観によるものでしかありません。メディアが切り取るアフリカはこういった偏った感情にも繋がりやすいですが、より大きな視点でそこに生活する人たちの姿に目を向けてみてください。
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アフリカには動物がたくさんいる…?
四つ目の偏見、アフリカには動物がたくさんいる。
これは、たしかにその通りです(笑)道端を歩いていても、そこら中に牛やヤギ、ニワトリがいます。放し飼いにされている動物も多いので、道路を塞いでしまい、渋滞の原因になることもしばしばです。
でも、キリンやゾウ、ライオンといった”The Africa”を感じさせる動物は、基本的には一部の国立公園にのみ生息しています。
中には「アフリカ人は動物と共生し、原始的な生活を送っている。」という偏見を持っている人もいます。たしかにアフリカには近代化の波に飲まれることなく、狩猟採集を中心とした生活を送っている民族もいます。
ただ、アフリカ諸国の首都では近代的な高層ビルも軒を連ねており、キリンやゾウはまず生息していません。というか、生息できません。また、道端を闊歩している牛やヤギといった動物は、主には食肉用に飼われています。
「アフリカ=サファリ=キリン、ゾウ、ライオン」といったイメージはアフリカの一部にしか通用しない、ということを頭に入れておいてください。
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アフリカには恐ろしい病気がある
最後の偏見は「アフリカには恐ろしい病気がある」です。
代表的なものはマラリアでしょう。蚊が媒介する熱帯地域特有の感染症です。僕はまだマラリアを発症したことはありませんが、経験者の話を聞く限りは地獄のような苦しみを味わうらしい…。
しかし、マラリアは予防が可能です。蚊よけスプレーや蚊取り線香を使えば低コストで予防できますし、ちょっとお金を出せば予防薬を服用することも可能です。
僕はまだマラリアに感染したことがありません。運がいいだけかもしれませんが、感染リスクのある地域に足を運ぶ時はいつも以上にスプレーを使ったり、長袖長ズボンを履いたりすることで予防に努めています。
また、万が一マラリアを発症したとしても、迅速に病院に行って治療すれば、死に至るほどの病ではありません。
マラリア以外にもエボラ出血熱、狂犬病、破傷風など、たしかにアフリカには恐ろしい病気がたくさんあります。
しかし、僕が思うに日本のインフルエンザも相当恐ろしい病気です。これだけ発達した医療環境が日本にはありながら、毎年約10,000人も亡くなっているのですから。
「アフリカに行きたいけど病気が怖いんですよね…」という人に必要なのは情報です。正しく予防・対処すれば、ほとんどの病気は大事に至りません。
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さいごに
アフリカに付きまとう5つの偏見、
- アフリカは貧しい
- アフリカは危ない
- アフリカは可哀想
- アフリカは動物がたくさん
- アフリカは病気が恐ろしい
を解説してきました。結論、「100%間違っているわけではないけど、もっと情報を仕入れて、正しくアフリカを捉えてみよう」といった感じですね。
アフリカに関する記事はこのブログでもたくさん書いているので、あわせて参考にしてくださいね。「なぜアフリカからは紛争が無くならないの?」と疑問を持っている人は以下の記事を読んでみてください。