「貧困とは何か?その定義や実態について理解したい。」
「絶対的貧困や相対的貧困とは何だろう?わかりやすく説明してほしい。」
こんな悩みを解決します。
フリーランス国際協力師の原貫太です。途上国で貧困問題に取り組みながら、貧困問題に関するブログを書いています。
貧困とは何か?貧困問題についてゼロから理解できるように、貧困の定義や絶対的貧困と相対的貧困の違いなど、貧困の基礎知識をわかりやすく解説します。
貧困とは?
貧困と一言で表しても、その定義は国や組織によって様々です。例えば国際機関の一つUNDP(国連開発計画)では、貧困を以下のように定義しています。
貧困とは、教育、仕事、食料、保健医療、飲料水、住居、エネルギーなど最も基本的な物・サービスを手に入れられない状態のことです。(「UNDP-貧困とは」より引用)
貧困とは、衣食住といった人間として必要最低限のニーズを欠いている状態だけを指すのではありません。
貧困とは、衣食住を欠く以外にも、教育を受けられなかったり、収入を得るための仕事がなかったり、病院に行けなかったりと、人間らしい生活を送る上で基本的に必要な物・サービスにアクセスできない状態を指します。
絶対的貧困・相対的貧困とは?
貧困には様々な定義・形態が存在しますが、中でも代表的な貧困の定義が絶対的貧困と相対的貧困です。
簡単に言ってしまえば、世界で問題になっている貧困が絶対的貧困で、日本で問題になっている貧困が相対的貧困です。
絶対的貧困とは
絶対的貧困とは主に途上国で問題になっており、人間として生きるために最低限必要な物やサービス、つまり衣食住や医療、基礎教育すら欠く状態の貧困を指します。
世界の貧困について語る時、多くの場合は絶対的貧困で表されます。
絶対的貧困は世界銀行によって、1日1.90ドル以下で生活する状態と定義されています。日本円にすると、一日約200円以下で生活するレベルの貧困が絶対的貧困です。
かつては一日1.0ドル以下で生活する人を絶対的貧困と定義していましたが、その後一日1.25ドル以下に改訂され、さらに2015年10月に一日1.90ドル以下と定義されました。
この一日1.90ドルが、世界の貧困を定義する「国際貧困ライン」と呼ばれるものです。絶対的貧困の定義は、国際機関である世界銀行(World Bank)が定めています。
国際貧困ライン以下で暮らす絶対的貧困層は、2015年時点で世界に7億200万人いるとされています。
世界人口の9.6%、実に世界の約10人に1人が絶対的貧困層に分類され、人間として最低限の生活すら送れていません。
アフリカの絶対的貧困については、こちらの記事で解説しました➡アフリカの絶対的貧困を現地の写真付きで解説【リアルな実態を知れます】 - 原貫太の国際協力ブログ
相対的貧困とは
一方の相対的貧困とは主に日本を含む先進国で問題になっており、その国の文化水準や生活水準に比べると、適正な水準で生活を送ることが困難なレベルの貧困を指します。
周りの人たちに比べると相対的に貧しいため、相対的貧困と呼ぶのです。
具体的には、ある世帯の所得が、その国の全世帯の所得の中央値の半分にも満たない状態にある時、相対的貧困であると言います。
もう少し簡単に説明すると、例えば日本のある家庭の収入が、日本のすべての家庭の収入額を並べた時の真ん中の金額の半分にも満たない状態にある時、その家庭は相対的貧困となります。
年によって変化はあるものの、日本の所得の中央値は年収約250万円です。相対的貧困は所得の中央値の半分に満たない状態なので、日本では年収250万円の半分にあたる年収約125万円以下が相対的貧困になります。
つまり、人間として必要最低限の生活を送ることはできていても、日本の生活水準や文化水準に比べると適正な水準で生活を送ることが難しい状態にあれば、その人は相対的貧困であるとなります。
例えば日本の高校進学率は98.8%と言われていますが、日本人のほとんど全員が高校に通える状況にもかかわらず、経済的な理由から高校に進学できない状態であれば、相対的貧困であるということができます。
日本の相対的貧困率は約16%と言われており、つまり6人に一人は年収約125万円以下の生活を送っているのです。
絶対的貧困と相対的貧困の問題点は?
絶対的貧困と相対的貧困は、それぞれ何が問題でしょうか?
絶対的貧困の問題点
絶対的貧困の問題点は、常に命を失うリスクにさらされている点や、人間としての尊厳が踏みにじられている点にあります。
例えば僕がアフリカで出会った難民の子どもたちは、一日一食しか食べることができていませんでした。
写真では笑顔で映っていますが、彼らは栄養失調の状態にあり、いつ体調を壊してしまうかわかりません。
お金がないため、体調を壊しても病院で診察してもらうことができません。そうなれば、命を失ってしまうリスクもあります。
また、人間としての尊厳が踏みにじられている点も絶対的貧困の問題です。病気になっても病院に行くことができなければ、あとは死を待つだけです。
予防できる病気であるにもかかわらず、何を手を打つことができない絶対的貧困の状態は、人間としての尊厳が踏みにじられていると言えます。
相対的貧困の問題点
相対的貧困の問題は、社会から公正が欠如している点や、貧困層の人たちとそうではない人たちの間に機会の格差が存在する点にあります。
相対的貧困が存在する社会では、生まれた家庭の環境によって、教育や情報といった、一般的にはあたりまえにアクセスできる機会を失っている人たちがいます。
周りのみんなはあたりまえのように高校進学ができているのに、相対的貧困の人はお金がないという理由で高校進学ができない。
周りのみんなはあたりまえのようにスマホでYouTubeを観ているのに、相対的貧困の人はお金がないという理由でスマホすら買えない。
大半の人があたりまえのようにアクセスできている機会を、相対的貧困の人たちは享受することができていません。
そんな社会は、決して公正であるとは言えませんよね。相対的貧困の問題は、この公正が社会から欠如している点にあります。
社会から公正が失われると、貧困層の人たちとそうではない人たちの間では、機会の格差が広がっていきます。
努力をした結果として格差が広がるのではなく、生まれた瞬間から格差が存在する。それが機会の格差です。
相対的貧困の人たちは、そもそも競争するためのスタートラインに立つことすらできていません。
生まれた場所や環境のせいで相対的貧困の人たちは厳しい状況に置かれており、その貧困状態から自分の努力だけでは脱出できないこともあります。
こんな不公正な社会を許してしまっていいのか?結果の格差ではなく、機会の格差を許してしまっていいのか?
相対的貧困の問題点に目を向けることは、一人ひとりが公正や正義と向き合う機会になると僕は考えています。
貧困問題をなくすための取り組み
世界や日本では、貧困問題をなくすために様々な取り組みが行われています。
例えば世界では、戦争によって家を追われた難民の人たちが直面する貧困問題を解決するため、国際支援団体によって活動が行われています。
難民の人たちが一時的に衣食住の欠如をカバーできるよう、国際機関やNGOによって物資の配給が行われたり、難民の人たちが自立することを目指した職業訓練も行われています。
また、日本では相対的貧困の問題をなくすために、近年は子ども食堂などの取り組みが広がっています。
子ども食堂とは、主には相対的貧困下にある子どもやその親、および地域の人々に対して無料、もしくは安価で栄養のある食事を提供する支援活動です。
食事の提供以外にも、人々の繋がりを作るための団欒の場として、子ども食堂が活用されることもあります。
世界や日本の貧困問題をなくすため活動している団体には、NPOや国際機関など、様々な団体があります。
貧困問題をなくすための活動に対して、寄付以外の方法で関わることも可能です。貧しい人のためにできることを見つけたい方は、こちらの記事も読んでみてください。
➡貧しい人を助ける方法は?アフリカ支援のプロができること5つ紹介します - 原貫太の国際協力ブログ
さいごに
貧困とは何かを簡単に解説してきました。
世界の貧困と日本の貧困、絶対的貧困と相対的貧困、それぞれに問題点があることを理解してもらえたと思います。
僕のブログでは貧困に関する解説記事を多数アップしていますので、その他の記事も読んでみてください。
こちらの記事もよく読まれています。あわせてご覧ください➡貧しい国の生活は?子どもたちのリアルな実態を、現地の写真付きで解説 - 原貫太の国際協力ブログ
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