フリーランス国際協力師の原貫太(@kantahara)です。現在は東アフリカのウガンダ共和国に滞在しています。
今回は「絶対的貧困」について、アフリカで撮影した写真とともに詳しく解説します。
一言で「貧困」と表しても、その形態は様々にあります。僕のアフリカでの経験も活かしながら、絶対的貧困とは何なのか?そのリアルな実態を解説します。
こちらの記事もよく読まれています。貧困とは何か?基礎から理解したい人はあわせて読んでみてください➡貧困とは何か?定義や違いを世界一わかりやすく解説します! - 原貫太のブログ
絶対的貧困とは「人間としての基本的ニーズも満たせない貧困」
絶対的貧困とは、人間が人間として必要最低限のニーズを満たせずに生活している状態を指します。
必要最低限のニーズとは、基本的には「衣食住」のことを指しますが、国際協力の世界では「衣食住」に加えて「医療」や「基礎教育」も含めることが多いです。
この必要最低限のニーズを、英語ではBasic Human Needs(ベーシック・ヒューマン・ニーズ)と呼びます。そのため、絶対的貧困の状態にある人たちに対して行う衣食住の支援を「BHNs支援」と呼ぶことが多いです。
絶対的貧困とは1日1.90ドル以下で生活するレベルの貧困
僕が生活している東アフリカのウガンダ共和国をはじめ、発展途上国で問題になる貧困はその多くが「絶対的貧困」で語られます。
例えば「世界には1日100円で暮らす人が12億人以上もいる」といった話を聞いたことがある人もいるでしょう。簡単に言えば、そのレベルの貧困が絶対的貧困です。
貧困(絶対的貧困)の定義は様々にありますが、代表的な定義(指標)が世界銀行の定める「国際貧困ライン」です。かつて国際貧困ラインは1日1ドルと定義されていましたが、その後1日1.25ドルに改訂され、さらに2015年10月には1日1.90ドルに変更されました。
この国際貧困ラインを下回る生活を送る人たちが、いわゆる「絶対的貧困層」です。
なお、絶対的貧困と対照的に使われる貧困が「相対的貧困」ですが、これについては以下の記事の中で解説しています。あわせてご覧ください。
➡貧困とは何か?定義や違いを世界一わかりやすく解説します! - 原貫太のブログ
絶対的貧困には世界の約10人に1人が該当する
国際貧困ラインは1.90”ドル”と米ドルで定義されているため、2015年の改定は単純にドルの価値が落ちたことを受けたものと考えて差し支えありません。
日本円にすると約200円なので、ざっくりですが「絶対的貧困とは、1日200円以下で暮らすレベルの貧困」と定義することもできます。
この新国際貧困ライン以下で暮らす世界の貧困層は、2012年には9億200万人(世界人口の約12.8%)から2015年には7億3600万人(世界人口の約10.0%)に減少したと世界銀行は発表しています。
世界では10人に1人が絶対的貧困、すなわち人間として最低限の生活すらままならない状態に置かれているのです。
アフリカでは5人に2人が絶対的貧困に直面している
絶対的貧困が問題になっているのはアフリカだけではありませんが、アフリカの絶対的貧困層の割合は、他の地域と比べると圧倒的に高いことが分かります。
下の図を見てください。
世界の貧困に関するデータより借用
南アジアのみデータがありませんが、この表を見るだけでもサブサハラ・アフリカ地域の貧困率がダントツで高いことが分かります。
絶対的貧困の多くは農村部で広がっているけど…
ただ、あくまでもこの貧困層(絶対的貧困層)は1日1.90ドル以下で暮らす人々の割合です。つまり、経済的な指標から見た「貧困」を指しています。
アフリカにせよアジアにせよ、絶対的貧困の多くは農村部に集中しています。 ただ、農村部に暮らす多くの人は農業で生計を立てているため、そもそもお金に縛られない生活している人も多いです。
そのため、たしかに経済的には1日1.90ドル以下で暮らしているけど、自給自足の生活を送っているため、問題なく1日3食は食べることができるなど、お金が無くても十分に幸せな生活を送れている人が存在するのも事実です。
ただ、こういった農業中心の生活を送っている”絶対的貧困”層の人たちは、干ばつや洪水といった自然災害が起きた場合、一気に生活が苦しくなってしまう可能性もあります。
そのため一部の国際機関やNGOは、こういった地域であっても生計向上をはじめとした支援を継続的に行っているのです。
この「貧困でも幸せなのか?」という難しいテーマに関しては、以下の記事で考察しました。あわせて読んでみてください。
➡貧困でも幸せは本当か?アフリカで生活して、その答えがわかった - 原貫太のブログ
僕がアフリカで目の当たりにした絶対的貧困
アフリカで僕が目の当たりにした絶対的貧困のうち、
- 居住区に暮らす難民
- 僻地に暮らす人たち
を取り上げ、それぞれが直面する問題を写真付きで解説します。
居住区に暮らす難民が直面する絶対的貧困
僕はウガンダ北部の南スーダン難民居住区で支援活動に携わっていたことがあるのですが、そこで生活する人の多くも絶対的貧困に直面しています。
紛争から逃れようと、ほとんどの難民が着の身着のまま南スーダンからウガンダに避難してきました。そのため、多くの難民が各種機関からの援助に頼らなければ、生活がままならない状態、つまり絶対的貧困に直面しているのです。
僕が活動していた「パギリニヤ難民居住区」では約18,000人の子どもが生活していましたが、そのうち約半分が経済的な理由から学校に通うことができていませんでした。
教育を受けるという、人間としてあたりまえの権利すらも剥奪してしまうのが絶対的貧困なのです。
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僻地に暮らす人たちが直面する絶対的貧困
先週、ウガンダの中で経済的に最も貧しい地域、北東部のカラモジャを訪れました。この地域に暮らす人たちは、そのほとんどが絶対的貧困下にあると言われています。
この地域は乾季になると干ばつも激しく、清潔な飲料水を手に入れることが難しいため、子どもたちはドロドロに濁った水を飲んでいました。トイレも不足しているため衛生環境が非常に悪く、下痢やマラリアで亡くなる子どもが後を絶たないと聞きます。
こういった絶対的貧困に直面するアフリカの地域では5歳未満の乳幼児死亡率も高く、下痢やマラリア、肺炎など、本来予防可能な病気で亡くなる子どもが後を絶ちません。
アフリカにおける絶対的貧困 総まとめ
絶対的貧困とは何か、最後にもう一度まとめます。
- 絶対的貧困とは、人間としての基本的なニーズ(衣食住・医療・教育)すら満たせないレベルの貧困を指す
- 貧困の定義は様々にあるが、代表的な定義は世界銀行が定める国際貧困ライン。1日1ドル➡1日1.25ドルと変遷し、2015年には1日1.90ドルに改訂された
- 絶対的貧困層は世界に約7億人いる。およそ10人に1人が絶対的貧困に直面している
- サハラ砂漠以南のアフリカでは、およそ5人に2人が国際貧困ラインを下回る生活をしている(=彼らは絶対的貧困層と呼ばれる)
- 絶対的貧困層の多くは農村部にいるが、お金に縛られない自給自足の生活を送っている人が多い
アフリカをはじめとした途上国で問題になる絶対的貧困。さらに詳しく知りたい方は、ルポライターの石井光太さんが書いた『絶対貧困―世界リアル貧困学講義』をおすすめします。
僕自身、途上国の現場には何度も足を運んできたつもりでしたが、この本は新しい発見に満ちていました。絶対的貧困の世界をできる限りリアルに知りたい人はぜひ読んでみてください。
その他、国際協力や貧困に関するおすすめの本32冊を以下の記事で紹介しています。こちらの記事もあわせてご覧ください。
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