フリーランス国際協力師の原貫太(@kantahara)です。今回は「新卒で国際協力を仕事にするべきではない3つの理由」をお伝えします。
国連やNGOなど、国際協力業界で働く人たちにキャリア相談をすると、多くの人が「新卒は国際協力業界ではなく、一般企業に就職したほうがいいよ」と主張します。僕自身も大学生の時は、同じようにアドバイスされていました。
そもそも新卒で国際協力を仕事にするのはかなり難しいという大前提を最初に確認した上で、「なぜ新卒で国際協力を仕事にするべきではないと考える人が多いのか?」その理由を3つ解説します。
そもそも新卒で国際協力を仕事にするのはかなり難しい
まず確認しておくと、そもそも新卒で国際協力を仕事にするのはかなり難しいというのが現実です。
JICAや一部の開発コンサルタントの新卒採用を除き、大学新卒で就職できる国際協力系の団体はほとんどありません。
もちろんJICAや開発コンサルタントの新卒枠は、倍率も非常に高いです。そのため、新卒で「国際協力師」になるのは"基本的に"難しいと考えてください。
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NGOやソーシャルビジネスをゼロから立ち上げる方法もありますが、もちろん「新卒で起業する」ことになるので、簡単な道ではありません。
大学院新卒の場合、選択肢は多少増えますが、国連や開発コンサルタント、NGOで働く場合は実務経験を求められることが多いため、応募条件の「社会人経験3年以上」「関連分野での実務経験」などがハードルになります。
就職にせよ起業にせよ、新卒で国際協力の仕事に就くのはとても難しいことがわかるかと思います。
なお、新卒で国際協力に携わる9つの方法は以下の記事で解説しています。
➡国際協力に新卒で携わる9つの方法を解説【仕事だけではなく有給インターンやボランティアも】 - 原貫太のブログ
新卒で国際協力を仕事にするべきではない理由
「新卒で国際協力を仕事にするのは難しい」と解説したものの、全く不可能というわけではありません。
先ほどもサラッと紹介したように、JICAや一部の開発コンサルタントの新卒枠、また非常に稀ではありますが、NGOに新卒で就職する方法もあります。
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また、自らNGOやソーシャルビジネスを起業すれば、最も確実に国際協力を仕事にすることができます。後ほど説明しますが、僕は新卒で国際協力NGOを起業しました。
しかし、冒頭でもお伝えした通り、国際協力業界で働く人たちには「新卒は国際協力を仕事にするのではなく、一般企業に就職するべき」と考える人が圧倒的に多いです。
なぜ新卒では国際協力を仕事にするのではなく、一般企業に進むべきなのか?その理由は大きく3つあります。
国際協力に貢献できるだけの専門性がないから
大学の学部を卒業しただけでは、国際協力の現場で使えるような専門性はほとんど身につきません。
僕の場合、ウガンダで公衆衛生の改善をするために子どもたちに手洗い指導や啓発活動をやっていましたが、公衆衛生に関する専門的な知識が全くなかったので、何をするのが最善なのか悩むことがありました。
もちろん自分でも本や論文を読んでいましたが、実務経験を経て、さらに大学院も出ているような人と肩を並べると、いかに自分には専門的な知識がないかを痛感し、少し惨めな気持ちにもなりましたね。
プロとして国際協力をやっていく上では、国際協力をやりたいという自分の気持ちではなく、いかに現地の問題解決に貢献できるかが大切です。
ただ熱い思いだけを持っている新卒ペーペーの人間より、企業で働いた経験を持ち、何らかのスキルや専門性を身に着けている方が、よほど世界の問題解決に貢献できます。
特にNGOや開発コンサルタントなどは、即戦力として働ける専門性のある人間が欲しいからこそ、新卒の人間では戦えない現実があります。
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仕事をこなすだけのビジネススキルがないから
これは、特にNGOを起業した時に痛感しました。
どんな国際協力団体で働くかにもよりますが、仕事をする上ではお金を回したり、数値的にインパクトを測ったりと、ビジネス的なスキルが求められる場面がたくさんあります。
特にNGOの場合、国際協力を行う団体といえども、基本的な組織形態は普通の会社と変わりません。ビジネスの知識やスキルは仕事をする上で必ず必要になります。
NGOが活動を継続するためには寄付を集める必要がありますが、その寄付をより多く集めるためには、今度はマーケティングの知識が必要になります。
また、結局はNGOも一つの「組織」に過ぎないため、人事のマネジメントをするスキルや経験も必要です。国際協力の仕事は、何も現地で支援活動しているだけではありませんからね。
新卒で国際協力NGOを起業した時、社会人のプロボノの方にも入ってもらっていましたが、企業で働く人は仕事の進め方をよく分かっています。
学生時代の僕は、インターンやボランティアでしか「仕事」をした経験がなかったので、ビジネススキルの差を痛感していました。
特に予算の立て方、追いかけ方など、数字を追う点ではかなり苦労しましたね。NGOの場合、国際協力活動を継続するために寄付を集めたり、事業収入を生み出したりする必要がありますが、僕の場合はだいぶ”力技”でやっていた気がします。
また、今の時代は企業が大きな影響力を持っているからこそ、一度ビジネスマンとして働き、企業の中身を見てみるのもいいです。
国連で働こうが、JICAで働こうが、NGOで働こうが、社会に大きなインパクトを生み出すためには企業を巻き込んでいく必要がありますからね。
国際協力業界から一般企業へ転職するのは難しいから
これは知人から聞いた話ですが、NGOから一般企業への転職は難航するケースが多いようです。
世間的にはまだまだ「国際協力は慈善活動」というイメージを持たれることも多く、「ビジネス感覚がなさそう」と、書類選考で落とされてしまうケースもあるようです。
特に新卒で国際協力業界に就職した場合、企業での仕事経験が全くないことになってしまうため、選考はさらに不利になる可能性も考えられます。
新卒キャリアは今でも就職活動に強いですし、一般企業なら新人研修なども受けられることを考えると、やはり新卒という肩書を大いに活かすべきという意見の持ち主が多いですね。
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でも僕は、新卒で国際協力を仕事にした
新卒で国際協力を仕事にするべきではない理由を語ってきましたが、何を隠そう僕自身は大学在学中にNGOを起業し、新卒で国際協力を仕事にしました。
ここまで解説したように、国際協力業界で働く人たちに話を聞いてみれば、「新卒は一般企業に就職するべき」という意見が大半だと思います。
しかし、キャリアに絶対的な正解はありません。進路というのは、それを決める時点では正解はなく、自分が選んだ進路を正解にするために、後から努力するべきものだと僕は考えています。
僕自身は大学を休学し、アフリカでインターンをしている間に南スーダン難民に出会い、「この人たちのために、今できることをしたい」という想いから、新卒でNGOを起業しました。
自らの気持ちにまっすぐ向き合った結果、僕は新卒で国際協力を仕事にする道に進みましたが、自分の心に正直に向き合ったからこそ、今でもその選択に後悔はありません。
まだ23歳という若さで国際協力を仕事にしたからこそ、たくさんの人に応援してもらえたというメリットもありました。
また、個人的には「国際協力に新しい働き方を創り出す」という信念を持ちながら活動しているため、「新卒で国際協力を仕事にする」という、新しい道を切り拓く人が出てほしいという気持ちもあります。
もちろん、想いだけで続けられるほど国際協力は甘くありません。堅実なスキルや知識がなければ、国際協力に貢献するのは難しいのも事実です。
僕がNGOを起業した当初は月給6万円でしたし、収入の点からも、闇雲に新卒で国際協力を仕事にする道を選ぶべきではありません。
そのため、新卒で国際協力を仕事にしたいなら、ただ想いだけで突っ走るのではなく、学生の間に相当の経験とスキルを磨いておくようにしましょう。
なお、国際協力を仕事にしたいけど最初に何をすればいいのか分からない人には、初めの一歩として青年海外協力隊をおすすめしています。以下の記事もよく読まれているので、あわせて読んでみてください。
➡海外ボランティアを仕事にしたい人はまず青年海外協力隊を目指すべき3つの理由 - 原貫太のブログ
さいごに
「新卒で国際協力を仕事にするべきではない理由」というテーマで解説しました。
国際協力は想いだけで続けることはできません。問題解決のための専門性が必要になったり、より多くの人たちを巻き込んでいくためには情報発信のスキルも必要です。
国際協力は一生をかけて取り組んでいくような仕事、いや「生き方」だからこそ、焦ることなく着実に経験とスキルを磨いていきましょう。
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