「NPO法人で年収1000万円の人はいるのだろうか?」
「NPO法人が人件費に多くのお金を使うことは可能だろうか?」
こんな疑問にお答えします。
フリーランス国際協力師の原貫太です。2017年にNPO法人を設立し、新卒でNPO職員になりました。
2019年からはフリーランスに転向して、現在はアフリカでの支援活動に関わっています。
タイトルにもある通り、現時点ではNPO法人で年収1000万円をもらえる団体は存在しません。内閣府によるNPOの実態調査で判明しています。
しかし、今後NPOが優秀なスタッフを雇用するにあたって、一人あたりの人件費に年収1000万円を払う可能性は十分にあると思います。
また、本業と副業と組み合わせることで、年収1000万円を超えることも可能です。詳しく解説します。
NPO法人で年収1000万円は存在しない
NPO法人で年収1000万円もらえる団体は存在しません。内閣府が実施したNPO法人に関する実態調査によると、1人あたり人件費の最大値は950万円となっています。
この人件費は給料手当・アルバイト手当の合計であり、役員報酬や福利厚生費、交通費は含まれていません。
日本には5万団体以上のNPO法人が存在しますが、今回の調査で対象になっているNPO法人は1623個のため、調査結果には含まれていないNPO法人もたしかに存在します。
ですが、この調査では日本の主たるNPO法人は調査対象になっていることを考えると、NPOの有給職員で年収1000万円以上もらっている人がいる可能性は限りなく低いです。
僕の周りにはNPO法人で働く職員も多数いますが、代表や事務局長レベルでも、年収1000万円以上もらっている人がいるという話は耳にしたことがありません。
現状としては、日本のNPO法人に就職して年収1000万円以上もらうのは、ほぼ不可能だと理解してください。
なお、NPO法人の給料がどこから出るのかなど、NPO法人の給料事情について詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。
➡NPO法人の給料は231万円!どこから出る?待遇は?元NPO職員が全部教えます - 原貫太の国際協力ブログ
*「特定非営利活動法人に関する実態調査」はこちら
アメリカのNPO法人は年収1000万円以上?
日本のNPOスタッフの年収は、この10年でかなり高くなってきました。
10年くらい前は「NPOの平均年収は180万円程度」と言われていましたが、現在のNPO職員の平均年収は231万円となっています。
その一方で寄付大国アメリカに比べると、日本のNPOの年収はまだまだ低いのが現状です。
アメリカのNPOの平均年収は、役職や立場ごとに以下のようになっています。
- 事務局長…56,000ドル
- 役員補佐…49,000ドル
- プログラムマネージャー…64,000ドル
- プログラムディレクター…67,000ドル
- プログラムコーディネーター…41,000ドル
- 経理部長…51,000ドル
(引用元:Non-Profit Organization Salary | PayScale)
さらに、事業規模が1億円から10億円レベルのNPOなら、事務局長の年収は1000万円程度。事業規模が10億円から25億円レベルのNPOなら、事務局長の年収は1500万円程度と言われています。
アメリカには日本以上にNPOの数・種類が多いため、団体によっても年収はバラバラであり、一概には言えません。
ですがアメリカのNPO業界に比べると、一般的には日本のNPO業界の年収レベルはまだまだ低いのが現状です。
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NPO法人で年収1000万円は将来的に可能
現状としてはNPO法人に就職し、年収1000万円を超えるのはかなり難しいですが、将来的には事務局長レベルなら年収1000万円は可能だと思います。
その理由は3つです。
寄付市場が拡大しつつあるから
第一の理由は、寄付市場が拡大していることです。少しデータが古いですが、2016年時点の日本の寄付市場は以下のようになっています。
個人からの寄付は7,756億円、法人からの寄付は2015年度の数値になりますが、7,909億円。
個人寄付と法人寄付、合計すると1兆5,665億円です。2009年からの推移を見ても、確実に上昇しつつあることがわかるはずです。
寄付市場が拡大し、今後NPOが人件費により多くのお金を割ける余裕が出てくると、事務局長レベルであれば年収1000万円も不可能ではありません。
その一方で、日本には「寄付金から給料を出す」という仕組み自体に抵抗を覚える人も多いです。
そのため、たとえ寄付市場が拡大したとしても、NPO法人の給料が増加するまでには多少の時間を要するとは思います。
寄付文化が社会に根付きつつあるから
10年くらい前なら「寄付=胡散臭い」「寄付=偽善」といったイメージを持つ人も多かったかもしれません。
しかし、近年はインターネットを活用して不特定多数の人から寄付を集めるクラウドファンディングが普及したり、ふるさと納税を通じてNPOに寄付する習慣が生まれたりと、寄付文化が社会に根付きつつあることを実感する場面が多いです。
また、2020年7月にはオリエンタルラジオの中田敦彦さんがYouTubeに「【寄付をしてみよう①】大切なお金の使い方」という動画をアップし、NPO業界では大きな話題になりました。
この動画に寄せられたコメントに目を通してみても、個人的には「寄付が社会に受け入れられつつあるんだな」と感じます。
2020年に入ってからは新型コロナによる困窮者が増える一方で、逆に生活に余裕がある人は、給付金の10万円をNPOに寄付したという人も多いです。
付市場がさらに拡大し、その上で人々の寄付に対する理解が今以上に深まると、NPO法人の職員に年収1000万円の人が少しずつ現れ始めると思います。
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副業を許可するNPO法人も多いから
NPO法人の中には副業を許可したり、フレックスタイム制を導入したりする団体も多いです。
特に設立されてから10年も経っていない、比較的職員の年齢層が若いNPOには、副業を許可している団体も多いですね。
NPOからの給料は年収1000万円に到達しなくても、副業からの収入を合計すると年収1000万円を超えることは十分に可能です。
紹介した3つの可能性の中では、「NPO法人で働く人が副業をやり、本業と副業の収入で1000万円を超える」というのが、最も実現可能性が高い方法だと思います。
僕はNPO職員ではありませんが、NPOに関する情報をブログやYouTubeで発信することで広告収入を得たり、NPOに特化した原貫太のオンラインサロンSynergyを運営したりしています。
年収1000万円には到達しませんが、同世代のサラリーマンとほぼ同等、むしろ少し多いくらいの収入はあります。
インターネットやSNSを活用した副業にも取り組むことで、NPO業界で働く人が本業と副業の合計収入で1000万円を超えることは、十分に可能だと思います。
さいごに
「NPO法人は安月給。食べていけない」とイメージを持つ人も多いですが、近年はNPO職員の収入も確実に向上しつつあります。
NPOの活動資金はその多くが寄付によって支えられているため、人件費に1000万円以上をかけるなんてよろしくないと感じる人もいるかもしれません。
しかし、NPOに優秀な人材を集めるためには、賃金や待遇を今以上に改善し、年収1000万円の人もいるような業界にしていく必要があると僕は思います。
年収1000万円以上の働きをしていれば、NPO法人の職員にそれだけの人件費をかけても問題はないのですから。
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