「新卒でNGOに就職してみたい。可能なのだろうか?」
「新卒はNGOと一般企業、どちらに就職するのがいいのだろう?」
こんな疑問にお答えします。
フリーランス国際協力師の原貫太です。NGO職員として2年間働いた後、2019年からフリーランスに転向して国際協力をしています。
学生からよく「NGOに新卒で就職したいのですが…」と質問されますが、個人的には新卒でNGOに就職するのはお勧めしません。
NGOに新卒で就職するのは可能かを解説した上で、新卒でNGOに就職する方法、さらには「新卒はNGOではなく、一般企業に就職すべきと僕が考える理由」を解説します。
新卒でNGOに就職することは可能か?
NGOは事業拡大や欠員補充の際に新規職員を公募しますが、基本的には社会人経験のある中途採用しか行っていません。新卒でNGOに就職するのは、非常に難しいのが現実です。
NGOの活動資金は、その多くが寄付によって支えられています。そのため新人研修などの人件費に資金を割けるほど余裕のあるNGOは少ないです。
そのためNGO業界では、各団体が求める分野・業務において、即戦力として力を発揮できる中途採用しか行っていないのが一般的です。
NGOに就職する場合、団体の公式ホームページやJICAが運営する国際協力専門の求人サイト「Partner」などで求人情報を探すことになりますが、応募要件の一つに「社会人経験3年以上」が設けられている場合も多いです。
一般的には新卒でNGOに就職することは難しく、3~5年の社会人経験が必要になると考えてください。
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新卒でNGOに就職する方法
新卒でNGOに就職するのは難しいですが、全くの不可能というわけではありません。
インターンや青年海外協力隊を経てからNGOに就職する方法など、新卒でNGOに就職する方法を4つ紹介します。
NGOで長期インターンをする
学生時代に2~3年の長期インターンを経験すれば、新卒でNGOに就職できる可能性があります。
僕の周りには大学卒業後すぐにNGO職員になった人もいますが、ほとんどは学生時代にNGOでインターン経験を積み、その流れで団体に就職しています。
NGOの活動の全体像を把握するためにも、時間のある学生のうちに国内事務所・海外事務所、どちらでもインターンを経験できるといいですね。
例えば僕と一緒に『国際協力師たちの部屋』を出版した延岡由規さんは、学生時代に認定NPO法人テラ・ルネッサンスで約3年間インターンをしてから、団体に就職しました。
無給インターン⇒有給インターン⇒正職員という流れですね。
NGOは即戦力として働けるかという点だけではなく、NGOのビジョンに共感しているかという点も大切にします。
そのため学生時代にインターン生としてNGOの内部に入り、様々な仕事を経験して実績を出しながら、その団体の一員として存在感を示すことができれば、新卒で就職することも可能です。
ただ、大学卒業時にそのNGOが新規職員を募集しているか、新規職員を採用する資金的な余裕があるかにも左右されるため、100%就職できる保証はありません。
青年海外協力隊を経験する
大学を卒業してすぐに青年海外協力隊に進み、帰国後にNGOに就職する方法です。この場合も社会人を経ることなく、実質的には新卒でNGO職員になることができます。
青年海外協力隊はボランティアとはいえ、国際協力の業界では「2年間の実務経験」としてカウントされる場合が多いです。
青年海外協力隊の活動を終え、日本に帰国してからすぐNGOに就職するのではなく、まずは大学院に進学して開発学などを専攻し、卒業後NGOに就職する人も多いですね。
この場合は2年間の実務経験だけではなく、大学院で専門的な知識を身に着けているため、就職にはさらに有利になります。初めから海外駐在員として採用される可能性も期待できますね。
ただ、NGOは一般企業とは違って小さな組織であることが多いため、協力隊としての経験値や修士号だけではなく、コネクションも大切な要素です。
そのため就職したいNGOがあれば、やはり大学や大学院時代にインターンはしておくことをおすすめします。
情報発信力を身に着ける
SNS運営やWebライティングなどの情報発信力がある人なら、たとえ新卒でも即戦力としてNGOに採用してもらえるかもしれません。
NGOの活動資金は、その多くが一般の人たちからの寄付によって賄われています。特に近年はクラウドファンディングが普及したことで、インターネットを活用した寄付集めに力を入れるNGOが多いです。
そのため情報発信力がある人なら、NGOの広報・資金調達部門のスタッフとして採用してもらえるかもしれません。就職は難しくても、最初は有給インターンや業務委託から契約が始まる可能性もありますね。
僕自身、大学時代からブログやSNSでの情報発信に力を入れていたので、インターンをしていたNGOの理事長から「一緒に働かないか?」と誘ってもらっていました。
結果的には(④で紹介するように)僕は自らNGOを設立する道を選びましたが、情報発信力がある人なら新卒でNGOに就職するのも夢ではありません。
ただ、NGOに就職するためにはスキルだけではなく、NGOのビジョンに共感していることや内部事情に精通していることも必要な要素のため、繰り返しにはなりますが学生時代にインターンをしていくことが望ましいです。
自分でNGOを立ち上げる
新卒でNGOに就職する最も確実な方法は、自分でNGOを立ち上げ、卒業したら一人目の職員になることです。僕は大学4年生でNGOを起業し、大学卒業後に職員になりました。
NGOはサークルのような形で任意団体で設立することもできますが、長期的にNGO職員として仕事をしていきたい場合、できる限り早くNPO法人格を取得するようにしましょう。
ただ、NGOを設立してもすぐに寄付が集まることはありませんし、助成金や補助金なども「法人格を取得してから3年以上活動実績がある」などの要件が課せられている場合がほとんどです。
そのため、自分でNGOを設立して一人目の職員になったとしても、最初の1~2年は安月給で働くことになることを覚悟してください。
NGOを設立することに興味があるけど、何から始めればいいのか分からない方はこちらの記事を読んでみてください。
➡NGOを設立する4つのステップ【実際に起業した人がわかりやすく解説】 - 原貫太の国際協力ブログ
新卒でNGOに就職するべきではない理由
NGO職員の方たちに話を聞いてみると「新卒はNGOではなく一般企業に就職するべき」と意見する人が多いです。
日本のNGO職員の平均年収は341万円のため、NPO法人格を持っているNGOに就職することができれば、決して生活ができないレベルではありません。
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NGOの給料は341万円!どこから出る?待遇は?元NGO職員が全部教えます - 原貫太の国際協力ブログ
しかし、残念ながら今の日本では「NGO=ボランティア・慈善活動」というイメージを持っている人も多いのが実状です。
そのため、一般企業からNGOに転職することは容易でも、NGOから一般企業に転職するのは比較的難しいと言われています。
NGOに就職することができても、そこで結果を出すことができなければ意味がありません。一般企業とは違い、支援者の大切な「寄付」を預かって活動するNGOだからこそ、高いプロ意識が求められます。
「自分の給料も、支援者の寄付から出ているんだ」と思うと、プレッシャーを感じてしまう人もいるはずです。
そのプレッシャーを仕事の活力にできる人であれば大丈夫ですが、日々の仕事に追われているうちに、いつの間にか「なぜNGOに就職したのか?」という大切な目的を見失ってしまう可能性もあります。
実際に僕の周りにも、新卒でNGOに就職したけど仕事が上手くいかず、体調を壊してしまった方も何人かいますね。
「新卒でNGOに就職するべきか?」という問いには賛否両論がありますが、実際にNGO職員として働いてきた立場からは、「学生時代によほどの経験を積んでいない限り、まずは一般企業に就職して社会人経験を積むべき」と言っておきます。
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新卒で国際協力を仕事にするべきではない3つの理由 - 原貫太の国際協力ブログ
さいごに
結論的には、新卒でNGOに就職することは不可能ではないものの、非常に難しいのが現実です。
NGOに就職することは、あくまでも一つの手段に過ぎません。また、国際協力に関わる方法はNGOだけではなく、国際機関やJICA、開発コンサルタント、さらには僕のようなフリーランスなど、様々な方法があります。
NGO職員になることが、自分にとって相応しい国際協力の関わり方なのか。ご自身でも考えてみてください。
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