フリーランス国際協力師の原貫太(@kantahara)です。
アフリカでの支援活動を継続するにあたり、皆さまからの寄付に支えられている今、寄付する意義を深く考えることがあります。
寄付という言葉の意味を辞書で調べると、
寄付(きふ)とは、金銭や財産などを公共事業、公益・福祉・宗教施設などへ無償で提供すること。(Wikipediaより引用)
とあります。
アメリカやヨーロッパと比べると、寄付文化が定着していないと言われる日本。中には「寄付なんて意味ない!」と、悲しい発言をする人もいます。
日本人のほとんどが寄付した経験があるにもかかわらず、寄付の意味を「資金を必要とする人にお金を出すこと」とだけ捉えている人が多い印象。
本当に意義のある寄付って、何なのでしょうか?「寄付する」という行為が、社会にとってどんな意味を持つのでしょうか?本気で考えてみました。
- 日本人の65%は寄付した経験がある
- 寄付市場の大きさ、日本とアメリカの違い
- 日本の寄付は「つり銭型寄付」でしかない
- 意義のある寄付とは、社会変革型寄付を指す
- 社会変革したいという想いを、寄付という行為に込める
- 組織に寄付するよりも、人に寄付をしたい
- 人に寄付をすると、受益者の顔も見えやすい
- 寄付する意義、考えてみませんか?
日本人の65%は寄付した経験がある
寄付する意義を考える前に、そもそもの前提として「日本人のほとんどは寄付した経験がある」という事実を確認しておきましょう。
街中で行われる街頭寄付。コンビニのレジ横に置かれた募金箱。学生時代の赤い羽根募金…。日常生活の中でも、寄付をする機会は意外とたくさんあります。
実際の調査結果でも、日本人のほとんどは寄付をしていると示されています。2004年の大阪大学大学院国際公共政策研究科の調査によれば、2002年に現金寄付をしたことがある家庭は53.8%、現物資産による寄付をしたことがある家庭が12.0%。
あわせて65.8%の家庭は、寄付した経験があると答えています。他の調査結果を参照しても、概ね日本人の6割~7割は寄付した経験があると言われています。
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寄付市場の大きさ、日本とアメリカの違い
その一方で、日本の寄付市場とアメリカの寄付市場を比べると、その間には絶大な差があることが分かります。
しかしそれでも、「日本の寄付がこれまで活発だったか」というと、そうとはいえないのが事実です。
(中略)日本の個人寄付の総額は、推計で年間2189億円であるのに対して、アメリカの個人寄付は22兆9920億円ともいわれています。その差は、実に約100倍という大きなものです。
もちろん、日米で経済規模や人口の違いはありますが、経済規模や社会規模でいうと、GDPでも人口でもアメリカは日本の2倍強ですから、これほど大きな寄付金額の差を十分に説明することができません。(『ファンドレイジングが社会を変える』より引用)
アメリカでは人口の9割が寄付をすると言われ、日本でも6~7割の人は寄付経験があることを考えると、寄付市場の大きさにこれだけの差が生まれる原因は、一人当たりの寄付額にあるようです。
日本の寄付は「つり銭型寄付」でしかない
買い物をした時、レジ横に置かれた募金箱にお金を入れることも、寄付した経験にカウントされます。
また、東日本大震災が起きた時、当時まだ高校生だった僕も、街頭募金に100円を入れたことがあります。これも寄付した経験としてカウントされます。
アメリカでは一人あたりの寄付額が約18万円と言われるのに対して、なぜ日本ではこれほどまでに寄付金額が少ないのか。『ファンドレイジングが社会を変える』の中で著者の鵜尾さんは、日本の寄付社会を「つり銭型寄付」という言葉を使い、その理由を説明しています。
この日本の寄付の背景のひとつとして、私は、日本社会が「つり銭型寄付社会である」と表現して説明しています。何か特定の目的のためにある程度のまとまった金額を寄付するのではなく、「気が向いたときに、つり銭程度を寄付する」という行動が中心的に見られるという社会です。
金額の大小だけがポイントではありませんが、つり銭型寄付社会の特徴として、ぱっと思いついた時に身近で信用できそうなところに寄付をして、その後の使途や成果にはそれほど大きな関心を持たないという傾向があります。(『ファンドレイジングが社会を変える』より引用)
ずばりこの文章が、日本の寄付社会の実状を端的に説明しています。
街頭募金でも、コンビニ募金でも、赤い羽根募金でも、日本人のほとんどは"その時"に気が向いたら寄付をする。「気が向いたら」なので、大きな額ではなく、つり銭程度の金額しか寄付をしない。
そして自分の寄付が何に使われたのか、どんな社会変化を起こすことに貢献したのか、日本人の多くは寄付の成果にはほとんど関心を持ちません。
僕自身も、東日本大震災が起きた後の街頭募金で寄付した時は、そもそもその団体がどんな活動をしているのかを知らなかったし、寄付したお金がどんな成果に結びついたのか全く興味がありませんでした。
逆に言えば、寄付の成果に関心が無いから、寄付するという行為の意味もほとんど考えないと言えます。
意義のある寄付とは、社会変革型寄付を指す
他方で、寄付をして、社会になんらかの変化を起こしていきたい、寄付したあとの結果や変化を見ていきたいという感覚の寄付を、私は「社会変革型寄付」と呼んでいます。
社会変革型寄付の最大のメリットは、寄付者がまとまった金額を寄付してくれる可能性があるというNPO側にとってのメリットと同時に、寄付者が寄付の成功体験を得やすいという、寄付者側のメリットもあります。
街頭募金で小銭を寄付して、成果がどうなったのかちっともわからないというよりかは、10万円寄付して、「あなたの寄付のおかげで、〇〇が実現しました!」という報告や感謝に触れ、自分の人生の中で達成感を感じるほうが良いという寄付者もいるでしょう。
(『ファンドレイジングが社会を変える』より引用)
現在僕は東アフリカのウガンダ共和国で、生理が原因で学校に通えない女の子たちに布ナプキンの作り方を教える活動をしています。
その活動も、支援者の皆様から頂いた寄付を使って行っているのですが、ある方にこんなことを言われました。
「私はアフリカに行くことはできない。だから寄付しかできないけど、それでも現地の子どもたちの力になりたいんだ。」
アフリカに滞在している時、「寄付を通じて社会を変えたいという支援者からの期待」を背負っているんだから、どんなに大変でも起き上がり、前を向こう。
そうやって、良い意味でのプレッシャーを感じることができています。
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社会変革したいという想いを、寄付という行為に込める
支援完了の報告をした時は、寄付者の方から「無事に支援が届いて、とても嬉しいです!」という喜びの声もいただきます。
支援者の方々は、「社会変革したい」という想いを、寄付を通じて僕に託してくれているのです。この「社会変革型寄付」こそが、「本当に意味のある寄付」だと僕は考えています。
組織に寄付するよりも、人に寄付をしたい
これは僕が寄付をする時に大切にしている考えなのですが、組織に寄付をするのではなく、人に寄付をするようにしています。
もちろん組織としての評価や実績を判断基準に寄付することもあります。でも、自分が寄付したお金を運用することになるのは、結局はそこで働いている人です。
だから僕は「〇〇さんという、応援したい人がそこで働いているから」という理由で寄付をすることが多いです。
また、現在僕はフリーランスとして、どこの組織にも所属することなく国際支援を続けていますが、寄付者の中には「原さんだから応援したい」と言ってくれる人たちがいます。とても有難いことです。
組織に寄付するのではなく、人に寄付をする。人にお金を託す。想いを託す。このことを意識するだけでも、自分が寄付をする意義がより感じやすいと思います。
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人に寄付をすると、受益者の顔も見えやすい
僕のように現地で草の根支援の活動をしていると、最終的に支援が届く先の受益者の顔も見えやすいです。僕はSNSを使って、支援先の活動地からたくさん情報を発信しています。
布ナプキン支援を行っている小学校の先生から、日本の皆さまに感謝メッセージをもらいました。
— 原貫太 / フリーランス国際協力師 (@kantahara) March 8, 2020
彼女は性教育指導も行う立場。これまでは生理で学校に通えない女の子たちに、何もしてあげられませんでした。
皆さんからのご支援のおかげで、遠く離れたウガンダの女の子たちが教育を受けられています! pic.twitter.com/C76fnl8OcN
また、僕のように草の根で活動している人間は、正直に言って慢性的な資金不足に苦しめられているのが実情です。
資金的に余裕があれば、例えばナプキンを手に入れられず、生理が原因で学校に通えない子どもたちをもっと助けることができるのに。そんな悔しい気持ちを抱えながら、活動をしています。
中には「私たちは寄付しかできないんだ。ごめんね…」と言葉をかけてくださる人もいますが、必死になって活動する僕にとっては、「寄付しかできない」という言葉がとてつもなく有難いのです。
寄付する意義、考えてみませんか?
寄付という行為には、希望があります。社会課題を一緒に解決し、より良い社会を一緒に創っていこうという希望です。
もしこの記事をきっかけに、フリーランス国際協力師原貫太の活動を応援してくださる方がいらっしゃいましたら、サポーターズクラブの一員としてアフリカでの国際協力活動を応援していただけますと幸いです。
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