原貫太の国際協力ブログ

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絶対的貧困と相対的貧困の違い、それぞれの問題点は?超わかりやすく解説します

フリーランス国際協力師の原貫太(@kantahara)です。

 

貧困には様々な定義がありますが、代表的なものが絶対的貧困と相対的貧困です。この記事では

 

  • 絶対的貧困と相対的貧困の違いは何か?
  • 絶対的貧困と相対的貧困の問題点は何か?

 

をわかりやすく解説します。

 

 

絶対的貧困と相対的貧困の違いは?

絶対的貧困 相対的貧困

南スーダン難民の子供たち。彼らも絶対的貧困下にある

 

絶対的貧困とは、衣食住や医療へのアクセス、基礎教育の機会を欠くなど、人間として必要最低限の生活すら送れないレベルの貧困を指します。主にはアフリカをはじめとした発展途上国で問題になっている貧困です。

 

一方の相対的貧困とは、その国の生活水準や文化水準に比べ、適正な水準で生活を送ることが難しいレベルの貧困を指します。ある世帯の所得が、その国の全世帯の所得の中央値の半分に満たない状態を指し、日本をはじめ先進国で問題になっている貧困です。

 

絶対的貧困の定義は?

絶対的貧困の定義は、世界銀行によって1日1.90ドル以下の生活を送っているレベルの貧困と定義されています。この1日1.90ドルという水準は「国際貧困ライン」と呼ばれるものです。

 

かつて国際貧困ラインは一日1.0ドルと定義されていましたが、その後一日1.25ドル以下に変更となり、2015年10月には一日1.90ドルに改定されました。

  

一日1.90ドルという国際貧困ラインよりも下のレベルの生活を送っている人たちが、いわゆる絶対的貧困層です。日本円にすると約200円なので、「一日を約200円以下で暮らす人たちが絶対的貧困」と定義することもできます

 

南アジアやアフリカを中心に、世界には絶対的貧困層が7億人以上いると言われています。実に世界人口の約10人に1人が絶対的貧困、つまり人間として最低限の生活すら送れない状態にあるのです。

 

絶対的貧困に関しては僕がアフリカで撮影した写真と一緒に以下の記事で詳しく解説しているので、こちらもあわせて読んでみてください。

アフリカの絶対的貧困を現地の写真付きで解説【リアルな実態を知れます】 - 原貫太のブログ

 

相対的貧困の定義は?

相対的貧困とは、その国の所得の中央値の半分に満たない状態と定義されており、その国の生活水準や文化水準と比較して困窮した状態を指します。

 

年によって変化はあるものの、日本の所得の中央値は概ね年収250万円と言われています。相対的貧困は所得の中央値の半分に満たない状態なので、日本では年収250万円の半分にあたる年収約125万円以下が相対的貧困と言うことができます

 

年収125万円以下では、日本の物価では生活するのはかなり大変ですよね。つまり、日本の生活水準や文化水準に比べて、適正な水準で生活を送ることが難しい状態が相対的貧困です。

 

例えば日本の高校進学率は98.8%と言われていますが、日本人のほとんど全員が高校に通えるという状況にもかかわらず、経済的な理由から高校に進学できないという状態は相対的貧困であると言えます。

 

日本の相対的貧困率は約16%と言われており、6人に1人は年収約125万円以下の生活を送っています。これはOECDに加盟している先進国30カ国の中でも、4番目に高い数字です。 

 

絶対的貧困と相対的貧困、それぞれの問題点は?

絶対的貧困 相対的貧困

水を運ぶ南スーダン難民の子供


絶対的貧困も相対的貧困も、どちらも困窮した状態にあり、生活を送るのが厳しいといい点は共通点です。

 

一方でその定義からわかるように、絶対的貧困と相対的貧困の問題点は少しずつ異なります。

 

絶対的貧困の問題点は、常に命を落とすリスクに晒され、人間としての尊厳を傷つけられていることにあります。

 

一方で相対的貧困の問題点は、その社会から公正が欠如していることや、貧困層の自己肯定感の低下や社会への反発心、さらには犯罪に繋がるリスクがあることなどが挙げられます。

 

絶対的貧困の問題点

絶対的貧困の問題点は、必要最低限の生活を送るための衣食住が満たされていないこと、言い換えると「常に命を落とすリスクに晒されていること」と表現することができます。

 

  • 着る服がない➡感染症にかかってしまうかもしれない
  • 食べる物がない➡栄養不良や飢餓に陥ってしまうかもしれない
  • 住む家がない➡台風や地震が起きれば危険な状況に追いやられるかもしれない

 

また、絶対的貧困の人たちはお金がないため、病気になっても満足な治療を受けることができません。

 

世界にはマラリアで亡くなる子どもたちが毎年27万人以上います。マラリアは500円の治療薬を飲めば助かる病気ですが、その500円すら出すことができず亡くなっていく子供たちがたくさんいます。

 

僕が活動しているウガンダ北東部でもマラリアの感染率がとても高く、貧困層の子供たちがマラリアのせいでよく命を落としています。

 

死が身近にあり、常に命を落とすリスクに晒されているということは、人間としての尊厳が傷つけられている状態にあります。これが、絶対的貧困の大きな問題点です。

 

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相対的貧困の問題点

相対的貧困の問題点はまず一つ、社会から公正が欠如している点にあります。

 

日本の相対的貧困は年収にすると約125万円なので、月収換算では約10万円です。日本の一般的な家庭、例えば子どもが高校に通えるような家庭と比べれば、月収10万円という金額はとても少ないです。

 

ですが、絶対的貧困層の人たちは1日1.90ドル以下の生活を送っています。ちなみに僕がアフリカで出会った難民の方の収入は月収500円でした。日収ではなく、月収です。

 

アフリカと日本の間には物価の違いがありますが、アフリカの難民には安全な水や衛生環境、住居すら確保されていないことを考えると、月収10万円という日本の相対的貧困はまだ”マシ”に思えるかもしれません。

 

しかし、相対的貧困には、絶対的貧困とはまた違った問題点が存在するのです。

 

相対的貧困の問題点を考える時に大切な視点は、一つの社会における公正です。公正とは、人々に同じ機会へのアクセシビリティ、つまり同じ機会にアクセスすることができる社会環境があることを指します。

 

高校に進学して、勉強ができること。スマートフォンを手にして、あらゆる情報にアクセスできること。

 

周りのみんなにとっては「あたりまえ」の生活を送れない人がいる今の日本社会は、決して公正な社会ではありません。相対的貧困の問題点は、この公正が社会から欠如している点にあります。

 

社会から公正が失われると、行き着く先は格差社会です。努力でその格差を埋め合わせすることができる社会ならまだいいですが、自分の努力だけでは相対的貧困状態から脱出できないという人たちもたくさんいます。

 

「周りの人たちと比べて経済的に貧しい」という相対的貧困は、その人の自己肯定感の低下や社会に対する反発心に繋がるリスクもあります。さらには、相対的貧困下の環境で育った子供が犯罪に走ったり、薬物に手を出したりしてしまうリスクもあるのです。

 

絶対的貧困と相対的貧困のまとめ

  • 絶対的貧困と相対的貧困の違い➡絶対的貧困は衣食住や医療へのアクセス、基礎教育の機会を欠くなど、人間として必要最低限の生活すら送れないレベルの貧困を指し、相対的貧困はその国の生活水準や文化水準に比べ、適正な水準で生活を送ることが難しいレベルの貧困を指す。
  • 絶対的貧困と相対的貧困の問題点➡絶対的貧困は、常に命を落とすリスクに晒され、人間としての尊厳を傷つけられている。相対的貧困は、その社会から公正が欠如していることや、貧困層の自己肯定感の低下や社会への反発心に繋がるリスクがある。

 

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