原貫太の国際協力ブログ

フリーランス国際協力師原貫太のブログです。国際協力やNPO・NGO、アフリカ、社会問題などのテーマを中心に解説しています。

【ありがた迷惑】被災地や途上国で問題になった「迷惑ボランティア」とは?

「迷惑ボランティアには、どんな事例があるのだろう?」

「迷惑なボランティアをしないために、どんなことに気をつけるべきか?」

 

こんな疑問にお答えします。

 

フリーランス国際協力師の原貫太です。特定の組織に所属せず、ボランティアでアフリカ支援をしています。

迷惑ボランティア

ウガンダの子どもたちと原貫太

 

ボランティアは、一般的にはそれ自体が素晴らしいものと捉えられています。

 

ですが、実は善意によって行われたボランティアが、誰かに迷惑をかけていたという事例もたくさんあります。

 

例えば日本では、地震や台風の被災地を支援しようと現地に赴いたボランティアが、実は被災者にとって精神的なストレスになっていた事例も報告されているのです。

 

ありがた迷惑なボランティアとは、いったい何か?

 

被災地でのボランティアや発展途上国で行われた海外ボランティアで「迷惑だった」事例を紹介し、ありがた迷惑なボランティアにならないための注意点を解説します。

 

 

YouTubeでも解説しました。動画のほうが分かりやすいかもしれません

 

迷惑ボランティアとは

迷惑ボランティア

 

被災者や途上国の人たちにとって負担になる「迷惑ボランティア」は、この3つに集約することができます。

 

  • 自己完結できないボランティア
  • 現地の状況を理解していないボランティア
  • 善意を押し付けてくるボランティア

 

自己完結できないボランティア

一つ目の迷惑ボランティアは、「自己完結できないボランティア」です。

 

2011年3月に東日本大震災が起きた際、自分の食べる物や宿泊する環境を確保せず、現地に出向いたボランティアが大きな問題になりました。

 

自分の食べ物や寝床を確保することなく被災地に出向いたら、避難生活を送っている地元の人たちや支援団体に、逆に迷惑をかけることにもなりかねません。

 

「やらない善よりやる偽善」という言葉があります。特にインターネット上では、美談のように語られがちです。

 

でも、やることによって逆に迷惑をかけてしまうのであれば、やらない方がマシの場合もあるのです。

 

支援やボランティアというのは、それ自体が絶対的に素晴らしいものと考えられがちだからこそ、ロジカルな視点を持って、自分の行動を客観視しましょう。

 

自己完結できないボランティアが迷惑になるのは、日本の被災地だけではなく、発展途上国でも一緒です

 

例えば大学生の中には、春休みや夏休みなどの長期休暇を使い、東南アジアやアフリカをはじめとした発展途上国に「海外ボランティア」へ出かける人がいます。

 

誤解のないように言っておきますが、大前提として海外に挑戦したい学生を応援したい気持ちはあります。

 

でも、応援したいからこそ、あえて厳しいことを言わせてください。本当に現地のためになるボランティアをしたいなら、自己完結できる形で海外に行きましょう。

 

東南アジアやアフリカなどの途上国では、衛生環境が日本と比べると圧倒的に悪い地域も多く、水道水が少量でも体内に入れば、下痢になってしまうことがあります。

 

そのため途上国滞在中は、下痢にならないようにするため、水道水を絶対に飲まないようにしたり、歯磨きする時でさえも、口をゆすぐのには水道水ではなくミネラルウォーターを使う…といった工夫が必要です。

 

ですが、このようなことを全く考えずに途上国に足を運べば、現地で体調を崩してしまい、受け入れ先の現地団体に迷惑をかけることにもなりかねません。

 

もちろんお腹を壊すかどうかはその人の体調にもよりますし、慣れない途上国の環境であれば、仕方ない側面もあります。

 

100%対策するのは無理だとしても、できる限り自己完結できる形でボランティアをする。

 

そのために事前にしっかり情報収集と準備をするのが、海外ボランティアとしての必要最低限のラインです。

 

被災地における災害ボランティアでも、途上国に行く海外ボランティアでも、困っている人を助けるための大前提として、まずは自己完結できる形を模索しましょう

 

現地の状況を理解していないボランティア

迷惑ボランティア

 

二つ目の迷惑ボランティアは「現地の状況を理解していないボランティア」です。

 

誰かを助けるボランティアをするなら、まずは現地の状況が、ボランティアや支援を本当に必要としているかというのが大前提です。

 

自分たちの「ボランティアをしたい」「支援をしたい」という想いが先行してしまい、現地の状況を無視していたら、それは迷惑なボランティアになりかねません。

 

よくある問題は、時間的なズレを考慮せず、支援物資を送ろうとする問題です。

 

例えば自分たちが食料品や毛布を被災地に送ろうとしても、それが現地に到着するまでには、時間的なズレが生じます。

 

自分たちが支援した物資が到着する頃には、物流も復旧しており、避難所には食料や毛布が十分に備蓄されているかもしれません。

 

そのような状況であるにもかかわらず、あとから支援物資が到着したら、それを管理するためのコストや場所が必要になり、逆に現地の迷惑になってしまうかもしれないのです。

 

テレビや新聞の報道を見て、自分も何かしたいと思い、被災地にボランティアで訪れる人がいます。

 

ですが、テレビや新聞の報道でさえも、被災地の状況をリアルタイムに伝えてくれるとは限りません。

 

そのため、自分が被災地に足を運んだ時には想定していた状況とは異なり、ボランティアでは役に立てないケースもあるのです。

 

また、土地勘がなくて迷子になってしまい、地元の人たちに迷惑をかけてしまうケースも考えられますよね。

 

現地の状況を理解していなければ、役に立てないどころか、かえって迷惑なボランティアにもなりかねません。気をつけましょう。

 

善意を押し付けてくるボランティア

迷惑ボランティア

 

三つ目の迷惑ボランティアは「善意を押し付けてくるボランティア」です。

 

熊本地震が起きた際には、阪神淡路大震災や東日本大震災を教訓にして、SNS上で「被災地でいらない、迷惑なものリスト」が拡散されました

 

そのリストの中には、千羽鶴や応援のメッセージを書いた寄せ書きが含まれていたことで、賛否両論の議論が起こったのです。

 

例えば千羽鶴というのは、一時的には嬉しいかもしれませんが、生活の中で役立つことはないため、結局ゴミになってしまう。

 

でも、せっかく作ってもらったからこそ捨てるのも難しく、置き場に困ってしまい、迷惑になってしまう…。このような事例が実際に報告されています。

 

いずれにせよ大事なことは、「自分の善意を無理に押し付けようしてはいけない」ということです。

 

例えば福島の避難所では「心のケアお断り」という貼り紙がされていたことがありました。

 

ボランティアの中には「心のケアをします」「お話し相手になります」などの目的で被災地を訪問する人もいたのですが、被災者の方がそれを直接的に断るのが難しく、張り紙で対応をしていたらしいです。

 

ボランティアや支援をする際には、自分の善意を無理に押し付けようとすることはあってはいけません。

 

ボランティアの人たちが被災者の立場になって考えることができていたら、このように張り紙で断られるといったことも起きていなかったはずです。

 

そもそも本来心のケアというのは、心理カウンセラーのような、ちゃんとした専門性やスキルを持っている人がやるべきことですよね。

 

迷惑ボランティアにならないために

迷惑ボランティア

 

迷惑ボランティアにならないためには、「ボランティアや支援をする時には、自分が主人公にならない」という姿勢が大事です。

 

今回紹介した迷惑ボランティアに共通する問題は、「ボランティアをする人自身が、まるで主人公になろうとしている姿勢」にあります。

 

ボランティアや支援というものは、誰かに褒めてもらうためにするものでもなく、自分が気持ちよくなるためにするものでもありません。

 

何らかの問題に直面している人が、その状況を少しでも良くするためにサポートをすること。それが、ボランティアや支援の本来の役割です。

 

例えば僕自身は、アフリカでボランティアに取り組む時、「現地の社会問題を解決する主人公は現地の人たち」という視点を見失わないように意識しています。

 

具体的な話をすれば、

 

  • まずは現地で社会問題の解決に取り組む若者から話を聞く
  • ただ物資を渡すのではなく、現地の人たちが持続可能な形で問題解決できるように、知識やノウハウを教える

 

ボランティアに取り組む際は、このような姿勢を大事にしています。

 

いずれにせよ大事なことは、時々立ち止まり、自分がやっているボランティアや支援を客観的に見つめ直す習慣をつくることです。

 

ボランティアは専門家から学ぶべき

迷惑ボランティア

アフリカで難民支援をしていた時の原貫太

 

もう一つ伝えたいことは、善意だけで動くのではなく、ちゃんとした知識やスキルを身につけるべきだということです。

 

被災地の支援にせよ、途上国の支援にせよ、社会福祉団体やNPOなど、そこで長年活動しているプロフェッショナルの人たちがいます。

 

ボランティアの人たちは、プロフェッショナルの人たちから謙虚に学ぶ姿勢を持ち、できるならそのプロの人たちと一緒に動けないかを考えるべきです。

 

自分が主人公になって活動しようとするのではなく、たとえ脇役だとしても、ちゃんと現地の人たちのためになるボランティアや支援を追求する。

 

そのような姿勢を大事にすることが、本質的だと僕は思います。

 

さいごに

迷惑ボランティアの事例と、迷惑ボランティアにならないために気を付けるべきことを紹介しました。

 

ボランティアに取り組む際、自分の善意が誰かに迷惑や負担をかけることがあっては、とてももったいないです。

 

この記事を参考に、より良いボランティアや支援とは何かを考えてもらえたらと思います。

 

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