一般企業と比較すると、NPO法人で働くことには、どのようなメリット・デメリットがあるのだろう?
NPO法人への就職や転職を考えている人には、そのような疑問をお持ちの方もいるかもしれません。
近年、NPO法人に就職や転職する人も増えてきたとはいえ、実際にNPO法人で働いている人の「ナマの声」に触れる機会は少ないはずです。
この記事では、NPO法人を自ら設立した経験を持ち、フリーランス国際協力師として働く現在もNPOと働く機会の多い原貫太(@kantahara)が、NPO法人で働くことのメリットとデメリットを紹介します。
就職してから後悔しないためにも、ぜひ参考にしてください。
NPO法人で働くメリット
NPO法人で働くメリットを挙げるとすれば、以下の4つがあります。
- 社会に貢献している実感を得やすい
- 人脈を築きやすい
- 働き方に融通が利きやすい
- 企業のSDGs/CSR部門に転職しやすくなる(かもしれない)
メリット①社会に貢献している実感を得やすい
営利を追求することが第一の企業(営利組織)と比べて、「非営利組織」を意味するNPOの一番の存在意義は、社会問題を解決することにあります。
どんなNPO法人にも、団体の活動を通じて実現したビジョンや、団体が果たすべきミッションがあります。
もちろんNPO法人で働く人たちはボランティアではありませんし、NPOが利益を出すことも認められてはいます。
しかし、NPOで働く人たちの多くが団体のビジョンやミッションに共感し、社会問題の解決を目指して仕事をしています。
自分が問題意識を持っている社会問題の解決に向け、日々の仕事を通じて貢献できること。
受益者と呼ばれるエンドユーザーから「助けてくれてありがとう」と言ってもらえること。
社会問題を解決することがNPOの存在意義だからこそ、日々の仕事を通じて「社会に貢献している実感」を得やすいのが、NPOで働くメリットです。
メリット②人脈を築きやすい
人脈を築きやすいのも、NPO法人で働くメリットです。
一般企業においても、同業他社・同業者との人脈は築けます。しかし、企業は利益を追求する組織だからこそ、同業他社・同業者を「ライバル」として捉えている人たちも多いです。
その一方、NPO業界では、他団体で働く人との繋がりを大事にしたり、互いに情報共有をしたりと、同じNPO業界内での人脈を大切にする文化があります。
NPO業界が人脈を大事にする理由には、すべてのNPO法人の根底に「社会を良くしたい」「社会問題に苦しむ人を減らしたい」という共通項があるからではないかと思います。
私自身、様々なNPO法人で働く人と繋がりがありますが、互いにライバル視するのではなく、一緒に社会を良くしていく「仲間」と認識しているように感じます。
メリット③働き方に融通が利きやすい
働き方に融通が利きやすいのも、NPO法人で働くメリットです。
新公益連盟が2017年に実施した「ソーシャルセクター組織実態調査」によると、調査当時における一般企業のリモートワーク率は11%だったのに対して、NPO法人のリモートワーク率は64%となっていました。
また、フレックスタイム制など、一日の中で柔軟な労働時間を確保できるかどうかに関しても、一般企業が50%だったのに対して、NPO法人では52%となっていました。
新型コロナのパンデミックを経て、現在ではリモートワークやフレックスタイム制を導入する一般企業も増えてきましたが、NPO法人は数年前から柔軟な働き方を実現してきた組織といえるかもしれません。
また、特に大きな企業と比べると、NPO法人は少数精鋭で運営されている団体も多いです。職員同士での連携が取りやすいことも、柔軟な働き方をしやすい一つの理由かもしれません。
メリット④企業のSDGs/CSR部門に転職しやすくなる(かもしれない)
近年はSDGs(持続可能な開発目標)の理念が普及してきたことにより、SDGs経営を意識したり、CSR(企業の社会的責任)を見直したりする一般企業も増えてきました。
しかし、そういった企業の中には、自社の事業とSDGs/CSRを関連させることに苦労していたり、実態が伴っていなかったりすることもあります。
NPO法人で働いた経験のある人なら、企業のSDGs/CSR部門に転職し、企業の中から社会貢献活動に取り組める可能性もあるかもしれません。
NPO法人で働くデメリット
NPO法人で働くデメリットを挙げるとすれば、以下の3つがあります。
- 給料が低い
- 一般企業に転職しにくい(かもしれない)
- 研修が充実していない
デメリット①給料が低い
NPO法人で働くデメリットとして、やはり言及しなければならないのは給料の低さです。
内閣府が実施した「特定非営利活動法人に関する実態調査」によると、全国のNPO法人の常勤職員の給料は平均年収231万円となっています。
転職サイトのdodaによれば、2021年の年代別の平均年収は「20代」が341万円、「30代」が437万円、「40代」が502万円となっており、NPO法人の平均年収が低いことが分かります。
その一方で、NPO法人の中には副業やパラレルワークを許可する団体も多く、いくつかの仕事を掛け合わせることで、給料の低さをカバーしている方もいます。
NPO法人の給料事情に関して、詳しくはこちらの記事をご覧ください⇒NPO法人の給料は231万円!どこから出る?待遇は?元NPO職員が全部教えます - 原貫太の国際協力ブログ
デメリット②一般企業に転職しにくい(かもしれない)
一般的に、NPO法人から一般企業に転職することは難しいと考えられています。
その理由は、企業の人事担当者の中に「NPO=ボランティア」というイメージを持っている人がいたり、NPOの具体的な業務内容を理解していない人がいたりするからです。
しかし、この5年や10年でNPO法人も市民権を得ており、企業や自治体の中にはNPO法人と連携する組織も増えています。
また、先ほども述べたように、近年はSDGsやCSRの推進に力を入れている企業もあり、むしろNPO法人でのキャリアが転職時にメリットとして働く可能性もあります。
NPO法人のキャリアでどのような実績を残したか、どのような業務に従事していたかにもよりますが、NPO法人の実態を正しく認識している企業や人事担当者であれば、NPO法人から一般企業に転職する時のデメリットにはならないでしょう。
デメリット③研修が充実していない
NPO法人で働く3つ目のデメリットは、研修が充実していないこと。これは「NPO法人では即戦力を求められる」と言い換えることができます。
NPO法人には、一般企業のように、新卒一括採用をしている組織はほとんどありません。
多くのNPO法人では中途採用か、もしくは新卒採用だとしても、長期間インターンシップを経験した方などを優先的に採用します。
また、資金的にも人員的にも、新人研修に労力を避ける団体も多くはありません。属人的な業務も多く、就職後すぐに重要な仕事を割り振られることもあります。
NPO法人は即戦力として働ける人材を採用する傾向があり、就職後に一般企業のような一定期間の研修を設けている団体は少ないのが実状です。
一般企業と比較し、自主的に知識やスキルを身に着ける必要性があるという点は、NPO法人で働くデメリットと言えます。
さいごに
NPO法人で働くメリットとデメリットを紹介しました。
NPO法人の仕事に働き甲斐があることは間違いありません。しかし、憧れの気持ちだけで就職してしまうと、いざ働き始めた後に「想像していたのと違う」と感じてしまう可能性もあります。
NPO法人の中にはイベントやセミナーを定期開催している団体もありますし、中にはインターンやボランティアを募集している団体もあります。
まずは実際に働いている職員から話を聞いてみるなど、就職・転職前の情報収集も怠らないようにしてください。
こちらの記事もあわせてご覧ください⇒NPO法人の収入源は?資金規模は?NPOを設立した人が全部教えます - 原貫太の国際協力ブログ