「世界の経済格差は、どれくらい深刻なのだろうか?」
「経済格差が広がるのはなぜか?その原因を知りたい。」
このような疑問にお答えします。
フリーランス国際協力師の原貫太です。個人でアフリカ支援に関わりながら、YouTubeやブログで世界の問題について発信しています。
一生で使いきれないほどのお金を持つ大富豪がいる一方、食べる物や着る物すらない貧しい人が並存する世界。
この記事では世界が抱える経済格差の実態を解説しつつ、「なぜ世界から格差はなくならないのか?」という壮大なテーマについて取り上げます。
なぜ世界には格差が存在するのだろう?
世界から格差をなくすためにはどうすればいいのだろう?
そんな疑問のある方は、ぜひ最後までご覧ください。
YouTubeでも解説しました。動画のほうが分かりやすいはずです。
世界で広がる経済格差の実態
まずは世界で広がる経済格差の実態について、簡単に把握しておきましょう。
2017年1月15日。イギリスに拠点を置き、世界の貧困や不正の問題に取り組む国際NGOオックスファムが発表した報告書の内容が、世界に大きな衝撃を与えました。
世界で最も裕福な大富豪8人が所有している資産の合計額は、世界で最も貧しい人たち36億人が所有している資産と、ほぼ同じ金額であることが判明したのです。
世界トップの大富豪8人が所有する資産の合計額は、4260億ドル。日本円にすると、約48兆7000億円もあることがわかりました。
2020年度の日本の社会保障予算が約36兆円なので、日本という国家における社会保障費の金額以上を、世界の大富豪8人が所有しているということです。
日本でも広がる経済格差
近年は日本における経済格差も深刻視されています。今回は子どもの経済状況における経済格差を取り上げます。
国連児童基金、いわゆる「ユニセフ」が2017年6月15日に発表した報告書によると、日本における子どもの貧困格差は調査対象の41カ国中32位。
経済格差が大きい方から数えて、ワースト10番目という結果になりました。
この問題を考えるためには、「相対的貧困」という概念について理解する必要があります。
近年の日本では子どもの「相対的貧困率」が問題となっており、およそ7人に1人の子どもが貧困状態にあると言われています。
また、満足に1日3食食べられない子どもたちやひとり親家庭のために、NPOやボランティアが「子ども食堂」を運営している…。
このような話を聞いたことがある人なら、日本にも貧困や格差が存在することはすぐに納得できるはずです。
日本の貧困や格差に関する発信をすると、「日本に貧困なんて存在しない。アフリカの餓死していく子どもたちを見ろよ」といったコメントが来ます。
数年前にもNHKが貧困家庭の女子校生の特集をした時、その子の部屋にアニメのグッズか何かがあったことで炎上したという出来事もありましたよね。
たしかに日本では、人間としての基本的なニーズである衣食住すら満たせない「絶対的貧困」はほぼ根絶されましたが、今の日本で深刻な問題になっているのは「相対的貧困」と呼ばれる貧困です。
つまり、日本の生活水準や文化水準と比べると、相対的に困窮した状態にあるのが相対的貧困です。まさに、経済格差に伴う貧困問題と呼ぶことができます。
例えば経済的な理由で高校に進学できなくても、生きていくこと自体は可能です。
ですが、日本の高校の進学率は99%以上と言われているため、周りの子どもたちと比べたら相対的に貧しい状態にあります。
貧困によって教育を受けられなければ、それは機会の格差に繋がります。これが、相対的貧困です。
世界で経済格差が広がる原因
世界で経済格差が広がる原因は様々ですが、この記事では3つの原因を解説します。
- 資本収益率は常に経済成長率より高いから
- タックスヘイブンが富の再分配を妨げているから
- 冷戦崩壊後、資本主義が勢いづいたから
資本収益率は経済成長率より高いから
世界で経済格差が広がる原因、一つ目は「資本収益率は常に経済成長率より高いから」です。
2014年に世界的なベストセラーになった『21世紀の資本』という本があります。
著者であるフランスの経済学者トマ・ピケティ氏は、膨大なデータを使い、世界で広がり続ける経済格差の実態を解説しました。
ピケティ氏は、『21世紀の資本』の中でこのような主張をしています。
資本収益率(r)は常に経済成長率(g)より大きいという不等式が成り立つ。
資本収益率(r)は常に経済成長率(g)より大きいとは、どういうことか?
簡単に解説すると、資本収益率とは株式投資や不動産投資など投資をすることで得られる収入の増加率を指し、経済成長率とは、労働から得られる収入の増加率を指します。
ピケティ氏の主張によれば、資本収益率は年間平均4%から5%で増え続け、経済成長率は年間平均で1%から2%と言われています。
どれだけ頑張って労働をして収入を増やそうとしても、資産家の人たちが今持っている資産を投資に回すことで得られる収入の増加率の方が、常に高い。
そのため、労働することで収入を増やそうとする貧しい人たちと、既にたくさんの資産を持っていて、その資産を投資に回すことで収入を得ている人との間の経済格差は、これからも広がり続けるということです。
労働でお金を稼ぐより、投資でお金を稼ぐほうが長期的には多くの収入を得られるといった話は、ベストセラーにもなった『金持ち父さん貧乏父さん』を読んだことがある人なら、すぐ理解できるのではないでしょうか。
資本主義というシステムにおいては、資産を持っていれば「勝ち組」で、資産を持っていなければ「負け組」ということが、システムのルール上、最初から決まってしまっているとも言えるかもしれません。
タックスヘイブンが富の再分配を妨げているから
世界から経済格差がなくならない原因として、タックスヘイブンの問題も挙げられます。
大富豪の中には、自分の資産をタックスヘイブン、つまり税金が皆無に等しい租税回避地にお金を移動させることで、税金逃れをしているケースがあります。
本来ならお金持ちの富裕層が自分の国に税金を払い、その税金によって貧しい人たちが社会保障を受けることで富が再分配されるべきです。
ですが、タックスヘイブンを利用することで大富豪が税金逃れをしているため、富裕層の恩恵を貧困層の人たちが受けることができません。
つまり、富の再分配が行われず、世界から経済格差がなくならない大きな原因になっています。
2016年4月には、世界の政治家や著名人、大富豪がタックスヘイブンを利用することで税金逃れをしていたことが、パナマにある法律事務所から流出した機密文書によって暴かれました。
いわゆる「パナマ文書」の問題です。
タックスヘイブンの中には、所得税や法人税、相続税がすべて0%、つまりは税金が全くかからない国もあります。
世界中の大富豪が形だけのペーパーカンパニーをタックスヘイブンに設立し、そこに自分の資産を移動させることで、税金逃れをしていたことがパナマ文書からわかったのです。
パナマ文書の中では、例えばアイスランドのグンロイグソン元首相が、イギリス領ヴァージン諸島にペーパーカンパニーを所有することで税金逃れしていたことが判明し、辞任に追い込まれました。
国民は日々の大変な労働を通じて税金を国に納めている一方、政治家が税金から逃れていたとして、世界中から大バッシングを受けたのです。
資本主義は元々、経済格差が広がることが前提になっているため、所得税や相続税などによって調整をしなければ、格差は広がり続けていきます。
ですが、世界に存在するタックスヘイブンのせいで税を通じた富の再分配が行われにくくなっているため、経済格差が広がっていくのです。
冷戦崩壊後、資本主義が勢いづいたから
世界で経済格差が広がるのには、歴史的な原因も関係しています。冷戦崩壊後、社会主義の脅威がなくなったことによって、資本主義が勢いづいたからです。
1990年代前半に東西冷戦が終結したことによって、経済格差が深刻化するスピードが速くなったと言われています。
格差が生まれる原因が私有財産制にあると考え、私有財産制の廃止と、生産手段をみんなで共有することによって平等な社会を実現しようとした考え方が社会主義です。
社会主義は、貧富の格差を生み出す仕組みの資本主義を否定し、平等な社会を目指そうとしました。
冷戦時代には、現在のロシアであるソ連がこの社会主義を世界に広めようとし、アメリカをはじめとした資本主義陣営と対立します。
直接的な武力衝突は起きませんでしたが、資本主義陣営対社会主義陣営の対立が続いたため、この時代は冷たい戦争、つまり冷戦時代と呼ばれました。
冷戦時代には、資本主義の国の中でも社会主義を目指そうとする運動や反体制派の動きがたびたび起きていました。
このような時に、資本主義社会のなかで経済格差が広がってしまうと、国民の間には不満が溜まります。
そして、平等な社会を作ろうとする社会主義を推し進めようとする動きに支持が集まってしまう可能性があります。
そのため資本主義の国々では、社会主義の支持者がさらに多くの支持者を集めないようにするため、言い換えると経済格差に不満を覚えた民衆が社会主義に流れてしまわないようにするため、社会保障を充実させることを通じて、富の再分配に努める国が多かったのです。
ですが、1991年にソ連邦が解体し、社会主義の勢いが弱くなったことによって、たとえ資本主義社会の中で経済格差が生まれたとしても、それが社会主義運動にまで発展する心配がなくなりました。
このため、資本主義社会の中で経済格差が生まれたとしても、それを是正しようとするのではなく、「とにかく経済成長を推し進めればいいじゃないか」という考えが強くなってしまったのです。
日本の経済格差が広がり始めた時期も、たしかに冷戦の終結後から貧富の格差が広がっているというデータもあるので、この指摘はたしかにその通りだと感じますね。
さいごに
世界で広がり続ける経済格差の実態や、格差がなくならない原因を解説しました。
格差を是正するためには、ピケティ氏が主張したように「グローバルな累進課税を導入する」など、グローバルなスキームでの富の再分配が必要です。
YouTubeのコメント欄には格差を無くすための様々なアイデアが書き込まれていますので、ぜひ合わせてチェックしてみてください。