原貫太の国際協力ブログ

フリーランス国際協力師原貫太のブログです。国際協力やNPO・NGO、アフリカ、社会問題などのテーマを中心に解説しています。

カラシニコフ(小型武器)と子ども兵(少年兵)-自衛隊派遣(駆けつけ警護)の南スーダンにおける少年兵は?

ある日突然誘拐されて、軍事訓練を受けさせられた後は、最初の任務として家族を殺すことが強要される。男の子であれば戦闘の最前線に送られ、女の子であれば男性兵士と強制結婚をさせられる。仮に軍隊を脱退して地元へと帰還した後も、家族や近隣住民から受ける差別や偏見に苦しめられる。そしてまた、軍隊へと戻ってしまう人たちがいる。

 

あまりにも理不尽で壮絶な実態から、子ども兵問題は多くの人々の心を揺さぶる。先日の記事「"初めての任務として母親の腕を切り落とす"子ども兵の問題は、大学生の私にとって目の前の解決したい問題になった。」も、多くの反響をもらった。

 

そもそも子ども兵とは、「正規、非正規を問わず、あらゆる軍隊に所属する18歳未満の子どものこと」と定義されている。つまり、子ども兵には戦闘に直接関わるもの以外の兵士(非戦闘員)も含まれ、荷物運びや食事の準備といった雑用に使わる子どもたちもいる。そこには少年兵だけではなく、性的奴隷として搾取されたり、また男性兵士と強制結婚させられ、子どもを産む少女兵もいるのだ。私が2016年1月にインタビュー取材をした元少女兵アイ―シャさん(仮名)も、その一人だ(→「ウガンダ北部における子ども兵問題と元少女兵へのインタビュー-テラ・ルネッサンス訪問」)。

 

歴史的に見ると、子ども兵という存在は決して古いものではない。古くは中世から、騎士になることを望む子どもが従士になり、上官の身の回りの世話や荷物運びといった雑務に従事していた。

しかし近年、特に第二次世界大戦後は子どもが武器を持って、最前線の戦闘に従事することが急増した。その大きな要因として、カラシニコフ(AK-47)をはじめとする小型武器の登場と流通がある。

 

子どもでも簡単に扱える小型武器

世界には、未だに25万人以上の子ども兵が存在すると言われているが、それほど多くの子ども兵が生まれてしまう決定的な要因として、軽くて小さく、子どもでも簡単に扱える小型武器の登場と流通が挙げられる。

 
 
兵器には大きく分けて「大量破壊兵器」と「通常兵器」が存在するが、通常兵器はさらに大きい兵器である「重火器」と、比較的小型な「小型武器」(小火器)に分類できる。子ども兵が戦場で手にする小型兵器には、拳銃や自動小銃、地雷などが含まれる。

 

近年、約100カ国の計1000以上の企業が小型武器を製造していると言われており、毎年の国際貿易の額は約85億米ドル(1ドル120円換算で約1兆円)と推計されている

 

そして、この小型武器を使った暴力によって命を落とす人は、毎年約(30万人~)50万人にのぼるとみられている(2006年データ)。これは、約1分に1人、1日に1440人の命が地球から消えていく計算になる。1990年代に起こった49の武力紛争のうち、46は小型武器が主要兵器として使われていた。武力紛争がなくても、アメリカ、メキシコ、南アフリカをはじめとする多くの国では、小型武器は日々の犯罪に使用されている。

 

特に、カラシニコフ(AK-47)のような軽量で丈夫な銃の登場は、子ども兵の戦闘への参加を安易にした。10歳にもなれば、カラシニコフを肩に担ぐことが可能になり、わずかな力で引き金を引けば、1分間に30発の弾を撃つことが出来る。銃の手入れも容易だ。


小型武器が大量に出回り、紛争地から紛争地へと移転されるような場合、その値段は安価になり、入手しやすくなる。ケニアでは、1967年には銃1丁が牛約60頭と同じ値段だったのに比べ、2001年には牛5頭と同じになっていた



このような状況をみて、コフィ・アナン国連事務総長(当時)は「小型武器は事実上の大量破壊兵器である」と述べている
 

 

自衛隊が派遣された南スーダンでは1万6千人の「子ども兵」が存在

今月12日、国連平和維持活動(PKO)に参加するため南スーダンに派遣されている自衛隊の部隊は、安全保障関連法に基づいた新たな任務「駆けつけ警護」を行えるようになった。

 

その内戦が続いている南スーダン。7月に首都ジュバで戦闘がおこり、紛争が再燃してからは、大量の難民が周辺諸国に流入している。また、今年10月のBBCニュースによれば、未だに1万6千人もの子どもが「武装勢力」に所属しており、また15日には、今年だけでも約1300人の子どもが武装勢力に徴用・徴兵されたとユニセフが発表した。

 

南スーダンでは反政府組織のみならず、政府軍でも子ども兵士を徴用・徴兵していることがヒューマン・ライツ・ウォッチによって報告されている。わずか13歳の子どもまでもが、「兵士」へと仕立て上げられている。

 

ニュースを見ている限り、国会で議論されているのは「駆けつけ警護」のことばかり。私は疑問に思ってしまう。それは本当に、南スーダンの現状を見つめた上で行われているのだろうか。それは本当に、南スーダンの「平和」へと貢献することに繋がるのだろうか。それは本当に、私たち日本人だからこそ果たせる役割なのだろうか。

 

私は認定NPO法人テラ・ルネッサンスが行う元子ども兵社会復帰支援プロジェクトに携わるため、2017年1月~3月ウガンダ北部に派遣される。「子ども兵問題」は深刻で根深く、そして複雑だ。ウガンダ北部では、20年以上続いた紛争のさなか、反政府組織「神の抵抗軍」によって推定3万8千人の子どもが誘拐されて子ども兵士となってきたが、現在では同地域の治安は安定し、社会復帰を必要とする元子ども兵の数も残り1,000人ほどだと聞いた。一方で、隣国の中央アフリカ共和国やコンゴ民主共和国、また南スーダンの一部では、未だに「神の抵抗軍」に拘束され続けている子ども兵士がいる。

 

今この瞬間も現在進行形で続いているこの問題真正面から向き合い、"私だから出来る「平和」への貢献の仕方"を考え続けたい。