原貫太の国際協力ブログ

フリーランス国際協力師原貫太のブログです。国際協力やNPO・NGO、アフリカ、社会問題などのテーマを中心に解説しています。

アフリカ支援は無駄なのか?99%の日本人が知らない国際支援の「闇」とは

「なぜアフリカは何十年も支援を受けているのに貧困問題は解決しないのか?」

「いったいアフリカは海外からどれだけの支援を受けてきたのだろう?」

 

こんな疑問にお答えします。

 

フリーランス国際協力師の原貫太です。ボランティアでアフリカ支援をしながら、ブログやYouTubeで生計を立てています。

アフリカ 支援 無駄

アフリカで難民支援に関わっていた時の原貫太

 

このブログやYouTubeチャンネルでアフリカに関する情報を発信していると、「アフリカをいくら支援しても無駄。どれだけお金を注いだところで貧困はなくならない」とコメントされることがあります。

 

アフリカへの支援は本当に無駄なのでしょうか?何も結果は出ていないのでしょうか?

アフリカが発展するために本当に必要な国際支援とは、どうあるべきでしょうか?

 

アフリカで国際協力活動に関わっている経験も踏まえ、詳しく解説をします。

 

 

YouTubeでも解説しています。動画のほうが分かりやすい方は、こちらをご覧ください。

 

アフリカ支援は無駄?99%の日本人が知らない国際支援の闇

これまで日本を含む西欧諸国は、アフリカにいくらの国際支援を行ってきたと思いますか?

 

その金額は、過去50年間で230兆円と言われています

 

金額があまりにも大きすぎて想像できないかもしれませんが、230兆円という金額は、6000年前の縄文時代から毎日一億円を使っても使いきれない金額です。

 

アフリカはそれだけの国際支援を受けてきたにもかかわらず、未だにアフリカの多くの国では貧困は根絶されていないし、紛争が続いている国もあります。

 

例えば僕が暮らしているウガンダの場合、首都のカンパラはかなり経済発展をしていますが、その一方で田舎に足を運ぶと貧困に苦しんでいる人たちがたくさんいます。

アフリカ 支援 無駄

ドロドロに濁った水をろ過せず、そのまま飲む子どもたち

 

この写真に映っている子どもたちのように、一日1.90ドル以下(日本円で約200円以下)で生活する人々を「絶対的貧困層」と呼びます。

 

世界全体では約7億人が絶対的貧困と言われていますが、その多くはサハラ砂漠より南のアフリカに集中しています。実に、5人に2人が一日200円以下で生活する絶対的貧困層です。

 

他にもアフリカの角と呼ばれるソマリアや、2011年に独立した最も若い国の南スーダン、さらにはアフリカ中央部に位置するコンゴ民主共和国の東部では、いまなお内戦が続いています。

 

2020年になってもアフリカは貧困・紛争・難民・疫病などの問題から抜け出せずにいます。これまでアフリカに注がれてきた海外支援は、そのすべてが無駄だったのでしょうか?

 

アフリカ支援のすべてが無駄になっているわけではない

アフリカ 支援 無駄

ウガンダの女の子たちと生理用ナプキンを作る原貫太

 

もちろん、アフリカへの支援すべてが無駄になっているわけではありません。この数十年でアフリカの貧困問題はどれだけ解決したのか、データを見てみましょう。

 

先ほども書いたように、サハラ砂漠より南のアフリカでは5人に2人、実に約40%の人々が極度の貧困生活を送っています。

 

しかし、世界銀行の報告によると、最も貧しい人たちの割合は1999年から2010年にかけて58%から48%に減少しています。

 

さらに2010年から2015年にかけては、48%から41パーセントに減少しています。

 

経済成長率に目を通してみても、2019年のサハラ砂漠より南の経済成長率は3.1%となっており、安定した経済成長を続けています。アフリカ諸国の中には経済成長率が6~7%の国もあります。

 

同じ時期のヨーロッパ圏の経済成長率が1.2~1.3%であることを考えると、アフリカが確実に発展していることがわかるはずです。

 

また、アメリカやヨーロッパなどの政府から支援されるお金、いわゆるODA「政府開発援助」は批判されることが多いですが、NGO「非政府組織」による地道な草の根活動は様々な成果を出しており、高い評価を受けています

 

例えば僕が働いていた認定NPO法人テラ・ルネッサンスは、東アフリカのウガンダで内戦中に兵士として戦わされてきた元子ども兵の支援に15年以上取り組んでおり、これまで200人以上を社会復帰させてきました。

 

その様子は、拙著『世界を無視しない大人になるために』でも紹介しています。

アフリカ 支援 無駄

職業訓練でミシンの使い方を覚えた女性

 

さらにフリーランスの僕自身は、ウガンダの女の子たちに生理用ナプキンを作る方法を教える活動をしており、彼女たちは知識を身に着け、自分たちの手でナプキンを作れるようになりました。

アフリカ 支援 無駄

ナプキンを製作している時の様子

 

今までは貧困からナプキンを購入できず、生理になると学校を休まなくてはなりませんでしたが、支援を受けた結果ナプキンを自作できるようになり、生理中も安心して登校できるようになったのです

 

もちろんアフリカの貧困問題が解決されているのは、そのすべてが海外からの支援によるものではありません。国の経済レベルが向上したからというのも、大きな要因です。

 

ただ、ODAのような大きな枠組みの支援、NGOのような地道な草の根の支援がどちらも功を奏して、貧困問題が改善されている傾向も確かに存在するのです。

 

アフリカを支援しているから貧困が無くならない…?

アフリカ 支援 無駄

ウガンダの女の子たちにナプキンの洗い方を教える原貫太

 

アフリカはこの数十年で確実に発展・経済成長しつつありますが、それでも行われてきた国際支援の量に比べると、十分な結果が出ているとは言えないのが現実です。

 

でも、逆にこうは考えられないでしょうか?「支援をされているのにアフリカの貧困問題はなくならない」のではなく「支援をされているからアフリカの貧困問題はなくならない」と

 

外国からの莫大な支援がある限り、アフリカ各国の政治家は国際支援に依存するようになります。

 

特に冷戦時代、アメリカとソ連が自国のイデオロギーを広げるための手段として使ってきた「国際援助」は、間違いなくアフリカの多くの国や政治家を先進国に依存させてきました。

 

国際支援に頼れば国の運営ができてしまうため、国民から税金を徴収する必要もなくなり、国の経済が発展しない原因になります。

 

例えばウガンダの場合、国家予算のうち約50%が海外からの援助によって占められています。つまり国家を運営するための資金の約半分は、海外からの援助に頼らなくてはならないということです。

 

そんな状況では、アフリカの国々は西欧諸国と対等な立場で外交することも、自国の政策を自分たちだけで決定することもできません。

 

これだけ国家財政を海外からの支援に依存していたら、アフリカの政治家は「国民の顔色」ではなく、「欧米諸国の顔色」を見ながら政治に取り組むことになります。

 

アフリカを支援する欧米諸国にとっても、自分たちの国益のためにはアフリカを依存させておくほうが都合がいいのです。

 

なぜなら、海外からの支援に依存させることで、アフリカに眠る資源の権益を手に入れたり、政治的な影響力の範囲内に取り込むことができるから。

 

アフリカの人たちに話を聞いてみると、「開発なんて言葉だけだ。いまだに植民地支配は終わっていない」と不満をこぼす人もいます。

 

事実として、開発という言葉は第二次世界大戦が終わった後、植民地主義という言葉に代わるために生まれた言葉とも言われますからね。

 

「アフリカの政治家は汚職ばかりだ」「アフリカでは賄賂がはびこっている」「アフリカの政治家は国民の声に耳を傾けない」といった批判がよくされています。

 

しかし、アフリカを批判する前に、アフリカへの支援が様々な問題を産み出している背景にも注目しなければならないのです。

 

アフリカが発展するために本当に必要な支援とは?

アフリカ 支援 無駄

認定NPO法人テラ・ルネッサンスによる職業訓練の様子

 

アフリカが発展するために本当に必要な支援とは、「アフリカの自立を促進するための支援」だと僕は考えています。

 

アフリカ支援を考える上で、知ってほしい言葉があります。中国春秋時代の哲学者、老子の言葉です。

 

「魚を与えるのではなく、魚の釣り方を教えるべきだ。」

 

困っている人に魚を与えてしまえば、それを食べてしまったら終わり。でも、魚の釣り方を教えれば、その釣り方を教えた人(=支援した人)がいなくなった後も、支援を受けた人は自分の力で生きることができます。

 

グローバル化が進展した今の時代、海外への依存を断ち切ってアフリカ諸国が自立を果たすのは難しいです。

 

でも、いくらなんでも今のアフリカは、海外からの支援に依存しすぎ、いや依存させられすぎです。それでは国民の生活を守る上でもリスクが大きすぎます。

 

2020年に入ってからは新型コロナの影響で海外からの支援が打ち切られたり、一時ストップしたりする中で、アフリカの多くの国民の生活が苦しくなっています。

 

だからこそアフリカにこれから必要なのは、アフリカの自立を推し進めていくこと。そのために、外部の人間がやるべきことは「自立のための支援をすること」です。

 

現地の社会問題を解決する主役は、あくまでも現地の人たち。これが僕の考える国際支援の哲学です。

 

今も昔もアフリカは、ずっと西欧諸国に従属させられたままです。誤解を恐れずに言えば「植民地主義」が「支援」に切り替わっただけと言えるかもしれません。

 

僕は今ボランティアでアフリカ支援を続けていますが、地元の若者と「一緒に」活動することを大事にしています。

 

なぜなら、アフリカ人である彼らの自立を推し進めたいから。アフリカに生きる彼らにも、未来を作る力があると信じているからです。

 

僕がウガンダの女の子たちに生理用ナプキンの作り方を教える支援をしているのも、魚ではなく、魚の作り方を教える活動です。

アフリカ 支援 無駄

自分で手作りした布ナプキンを見せてくれるウガンダの女の子

 

魚、この場合は使い捨てナプキンを与えてしまえば現地の人たちに依存を生み出してしまいますが、ナプキンの作り方を教えれば、支援者である僕が日本に帰った後も、彼女たちは自分たちの手でナプキンを作ることができます。

 

アフリカが本当の意味で発展するために必要な支援とは、アフリカの自立を推し進めていくこと。

 

そのために僕たちがやるべき支援は、魚ではなく、魚の釣り方を教えることです。

 

さいごに

アフリカで支援活動に関わっていると、何度も葛藤に直面します。「本当に必要な支援とは何なのだろうか」と。

 

でも、「現地の人たちが自立するためのサポートをする」という支援のあり方こそが、これからアフリカが本当の意味で発展するために欠かせないと僕は考えています。

 

これからもアフリカ支援に関わり続け、現地が本当に必要としていることをお伝えしていきます。

 

【本当に意味のある国際支援とは何か?書籍『世界を無視しない大人になるために』紹介】

アフリカ 支援 無駄

 

僕がアフリカで活動することになった原体験や、アフリカで活動する中で見つけた「本当の意味のある国際支援」について書きました。

 

アフリカ支援に興味のある方、ぜひお手に取ってご覧ください。

 

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第一章までをこちらのページで無料公開しています。