普段こういった話はあまり出してないのですが、活動の裏側も知ってもらった上で応援してもらえたら嬉しいので、記録もかねてブログに書きたいと思います。
この記事を書いている今、僕はウガンダ北東部の小さな町「カタクウィ」という場所に滞在しています。目的は小学校の女子生徒に対し、布ナプキン製作のトレーニングを実施することです。
詳細はここでは省きますが、先日このプロジェクトについて書いた記事「生理をよく知らないフリーランスの日本人男、アフリカで布ナプキンを作る」は大きな反響があったので、まだ読まれてない方はぜひチェックしてみてください。
このプロジェクトを行うにあたっては、カタクウィに住んでいる現地女性のサポートが欠かせません。グラディスという女性です。NGOで働いていた経験もある彼女は、ソーシャルワークに対する高い志を持っており、信頼できる数少ないパートナーの一人です。
そんな彼女が先日、こんなことを言い出しました。
「活動を手伝ってくれている学校の先生に1万シリングずつ払おう」
今僕が進めている布ナプキン製作のトレーニングは放課後の時間を使ってやっています。イメージ的にはクラブ活動に近いですね。実際に「Sanitary Pad Club」というクラブを立ち上げ、布ナプキン製作の中心的な役割を担ってもらっています。
このクラブには二人の顧問的な先生が付いています。男性と女性の先生、一人ずつです。
ぶっちゃけ言うと、男性の先生はほぼ何もしていません。教室の中に座っているだけです(笑)ただ、女性の先生は生徒の選定をしてくれたり、ナプキンの製作中には適宜生徒に指示を出してくれたりと、とても協力的。
活動に付きっ切りというわけではありませんが、少なからずサポートしてくれているので、グラディスは「謝礼として二人に1万シリングずつ払おう」と言い出したのです。
彼女の理由はこうです。「アフリカでこういった活動を継続していくためには、協力してくれる現地の人たちにも感謝されている必要がある。気持ち程度でもいいから謝礼を渡しておけば、次回来た時もスムーズに活動を始められる。」
理解できなくもありません。これまでの活動中も、時間をとって詳しく話を聞かせてくれた人やフィールドでの通訳を担ってくれた人には、気持ち程度の謝礼を渡してきました。一回で渡す金額は多くても300円程度です。
そしてまた、スタッフとして給料を払いながら雇用しているわけではないので、一緒に活動してくれるグラディスにも謝礼を渡しています。もしこの活動に関わっていなければ、彼女はその時間を自分のビジネスに充てることができますからね。
ただ、僕としては布ナプキン製作のトレーニングに関わってくれている学校の先生には、お金を払う必要はないと考えていました。
理由は大きく二つあります。まず第一に、一部の先生にだけお金を渡してしまうと、他の先生が嫉妬してしまうかもしれないから。外国人の僕が介入することによって、現地の人間関係に歪みを生み出してしまうことにもなりかねません。
二つ目に、プロジェクトにかかわる先生のモチベーションは、お金ではなく純粋な熱意であってほしいから。女の子たちが生理用品を手に入れ、十分な教育を受けられるようになれば、学校全体の教育レベルが上がり、ひいては先生たちも裨益することになります。
しかし、仮に先生にお金を渡してしまえば、少なからず彼らのモチベーションは「純粋な熱意」から「お金」に動いてしまいかねません。
そのため、こちら側の「女の子が十分な教育機会を得られるようにしたい」という熱意を先生たちにも理解してもらい、サポートしてくれる彼らのモチベーションもボランタリー精神であってほしいのです。
この理由を伝えたところ、グラディスはあまり納得できていない様子でした。「(原の現地パートナーである)サイラスも同じことを言うはずだ」と。
結局僕らの間では意見がまとまらず、首都カンパラにいるサイラスに電話をすることになりました。
そして、サイラスからもらった返答はこうです。
「先生にはお金を払わなくていい。」
理由はほとんど僕と同じでしたが、「一部の先生にだけ謝礼を渡せば他の先生が怒る」「プロジェクトが上手くいけば先生らもメリットを享受できる」に加えて、「学校の先生はすでに給料をもらっているし、生活に困っているわけでもないのだから、カンタが追加で支払う必要はない」とも言ってましたね。
結局学校の先生にお金は支払っていませんし、今後も払うつもりはありません。
ただ、つい昨日プロジェクトをやっている時、男性の先生から「私たちに何かお礼はないのか…?」と小声でささやかれました。積極的に手伝ってくれている女性の先生ならまだしも、ほぼ何もしていない男性の先生から…。心の中で「いやいやお前特に何もしてないやーん!」と呟きました(笑)
正直少しショックではありましたが、その先生にはサイラスと話し合った内容を伝え、やんわり断りました。
たしかに公立の学校では、先生に対する給料の未払いや遅滞といった問題も起きています。そのため、彼らからすれば圧倒的にお金を持っている肌の白い外国人がやってきたら、「お金」に目が行くのはある種仕方のないことかもしれません。
賄賂とは違いますが、学校という教育現場であったとしても、今回のような出来事が起こり得ます。どれだけ人道的な思いを持ちながら活動していても、こちらの思惑通りに進むことはまずありえませんし、日本人の感覚からすれば想像し難いところでお金が必要になることもあるのです。
「この人めっちゃ協力的で良い人だなぁ」と思っていた現地の人から、去り際に「お礼のお金はくれないのか?」と聞かれたことは数え切れません。もう慣れましたが、最初は人間不信にもなりかけましたね(笑)
草の根の国際協力は、決して華やかなものではありません。数え切れないほど泥臭さに溢れています。
こういった活動の裏話や一筋縄では進まない現場の難しさも知ってもらい、その上でアフリカでの活動を応援してもらえたら嬉しい。その想いでこの記事を書いてみました。
最後に宣伝で恐縮ですが、マンスリーサポーター向けのメールマガジンではこういった話も書いていくつもりです。
「現場の活動って色々と大変なんだな」「頑張ってるみたいだし、応援してあげるか」「今日の話を興味深かったし、もっと知りたいな」
そんな気持ちに少しでもなってくれた方は、ぜひサポーターとして活動を応援してください。無理はせず、生活に負担のかからない範囲でのご寄付で大丈夫です。ご協力をお願い致します。