ある日突然誘拐され、兵士として戦場に駆り出される。初めての任務として、実の家族を殺すことが強要される。少女兵の場合、性的な奴隷としても搾取される。
子ども時代に壮絶な経験をした「元子ども兵」たち。しかしながら、軍隊を脱出して保護されたとしても、「身体的・精神的トラウマ」「地域コミュニティからの偏見や差別」「基本的教育や仕事を得るための知識・スキルの欠如」など、帰還後の生活も決して楽観視できるものではない。
特に、反政府軍の兵士との間に出来た子どもを連れて帰還した元少女兵(チャイルドマザー)は経済的に自立が困難な上に、地域社会からの差別や偏見、暴力、 HIV/エイズなど様々な問題を抱えており、社会復帰が最も困難な状況にある。(関連記事:"13歳で誘拐された元少女兵"が語る壮絶な体験談 生き別れた子供との再会を夢見て)
その一方で、社会復帰を目指して日々訓練や授業に臨む元子ども兵たちの姿には、目を見張るものがある。先日の記事「家族を殺害、性奴隷としての搾取…壮絶な経験を克服する元子ども兵たち」では、1年半の訓練を終えた8期生である元子ども兵の方々が、無事に各分野の実技と筆記の最終試験に合格したことを伝えた。
そして昨年11月末には、最終試験に合格した8期生たちを表彰するための修了式が行われた。彼らは、社会復帰施設に来てすぐの頃は技術や知識もなく、読み書きもできず、またお互いのことも知らなかったが、1年以上協力し合いながら、訓練を乗り越えてきた。修了式は、そんなお互いの健闘を称え合う、とても感慨深い瞬間になった。
修了式を終えて、ウガンダ事務所のプロジェクトオフィサーであるオケロ・リチャードは、以下のように語っている。
このセンターでの訓練を終えて、8期生はさらに1年半、自立に向けてビジネスの実地訓練を行います。彼ら彼女たちにとって、新しいチャレンジになりますが、これまで卒業生が自立を果たしてきたように、8期生も、訓練後に自立するという覚悟で臨んできたので、全員が自立できると信じています。
ウガンダでは、この11年間で192名の元子ども兵を受け入れてきました。私たちが支援してきた人数は少ないかもしれません。ですが、彼らが社会復帰をしてきた姿を見ていると、一人ひとりが収入を得て自立し、家族を養い、住んでいる地域の住民とも協力し、地域の担い手になっています。
ウガンダでは、1980年代後半から20年にわたり内戦が続きましたが、このように、元子ども兵を含めて、紛争の影響を受けた人たちが自立し地域の自治を担うことにより、自分たちの力でも、地域の平和をつくっていけるのだと信じています。