原貫太の国際協力ブログ

フリーランス国際協力師原貫太のブログです。国際協力やNPO・NGO、アフリカ、社会問題などのテーマを中心に解説しています。

少年兵だけでない。強制結婚…アフリカで続く「少女兵問題」の実態

ある日突然誘拐され、兵士として戦場に駆り出される。初めての任務として、実の家族を殺すことが強要される。地雷原を歩かされ、人間地雷探知機(地雷除去装置)として使われる。

 

子ども兵問題の不条理すぎる実態については、このブログでも度々伝えてきた。僕が昨年1月に出会ったアイ―シャさん、その従軍中の体験はあまりにも壮絶で、多くの人たちから反響を寄せられた。

 

「少年兵」ではなく、「少女兵」 

一般的には、「子ども兵」というよりも「少年兵」という言葉の方が周知されているかもしれないが、子ども兵には男性(少年兵)のみならず、女性(少女兵)も含まれる。そして彼女たちの中には、強制結婚させられて搾取されるといった被害を受ける人たちもいる。

 

元子ども兵の中でも特に、反政府軍の兵士との間に出来た子どもを連れて帰還した元少女兵(チャイルドマザー)は経済的に自立が困難な上に、地域社会からの差別や偏見、暴力、 HIV/エイズなど様々な問題を抱えており、社会復帰が最も困難な状況にある。そのため、僕がインターン生として働く認定NPO法人テラ・ルネッサンスでは、元少女兵たちをウガンダ北部にある社会復帰施設へと優先的に受け入れている。

 

 

昨年1月に私がインタビューを行った元少女兵のアイ―シャさん(仮名)は、わずか12歳で誘拐され、26歳で脱出するまでの14年間を少女兵として過ごした。生まれたばかりの赤ん坊や重い荷物を持ちながら昼夜問わず森の中を歩き回ったり、脱走に失敗して捕まった後に鞭で200回叩かれたりしたという彼女の体験談は、日本に暮らす私たちの想像をもはや超えた苦しみと呼べるかもしれない。

 

インタビューの詳細は、私のルポタージュ「ウガンダ北部における子ども兵問題と元少女兵へのインタビュー-テラ=ルネッサンスを訪問して」をご覧頂きたい。

 

現在テラ・ルネッサンスでは、8期目となる元子ども兵の方々の社会復帰支援を行っている。その中から今回の記事では、わずか13歳の時に誘拐された元少女兵リンダさん(仮名)の体験談を紹介したい。

 

従軍中に子どもと生き別れる

リンダさんは2004年に誘拐され、2015年に保護されるまでの実に11年間、少女兵として反政府軍に拘束され続けた。

 

彼女は少女兵として過ごした過去を、このように振り返っている。

 

「拘束期間中は、とても重いものを持たされて長時間歩かないといけなかったことや、何か失敗した時にひどく叩かれたことが辛かったです。また、軍隊にいるとき、子どもが一人戦闘に巻き込まれて亡くなりました。軍隊から逃げるときには、もう一人の子どもとも離れ離れになってしまい、ウガンダに帰ってからもとても心が苦しく、悲しかったです。」

 

彼女には現在1歳になる子どもがいるが、もう一人の子どもとは逃走中にはぐれてしまい、現在でも行方不明のままだ。彼女の両親は既に死去している。

 

社会復帰訓練を通じて芽生えた希望 

「軍隊から脱出し保護されてからも、自分には何の技術や知識も無く、また自分と家族が生計を立てる手段も無かったので、これからの人生を生きていくのがとても難しいと思っていました。ですが、テラ・ルネッサンスで訓練を始めてから、最初は洋裁のミシンの使い方や手工芸のアクセサリーの作り方などを難しいとも感じましたが、少しずつ訓練の内容が身についてきて、前を向くことができるようになりました。」と、除隊後の生活について話している。

 

「離れ離れになった子どものことを、『いつかきっと、再会できるよ』と言ってくれる友人がいます。彼女は『今ある目の前のことを一生懸命にやれば、自分次第で明るい未来をつくることができる』という言葉もかけてくれました。」

 

「今は昨年生まれた赤ちゃんを育てています。行儀の良い子に育ってほしい。そして、教育も受けさせてあげたい。そう思っています。」

 

生まれた赤ちゃんの名前は、サトミ。2015年に女優石原さとみさんがテラ・ルネッサンスのウガンダ事務所を訪問した際、リンダさんと交流したことが命名のきっかけになった。

 

訓練終了までにもっと多くの洋服を作れるように技術を磨き、将来は洋服屋の仕事に就きたいと夢を語る彼女。今月19日には、彼女たち8期生がこれから本格的にビジネスを始めていくための、道具の供与式を行う予定だ。

 

心の底までむしり取られそうになる、元子ども兵たちの壮絶な過去。その過去を乗り越え、少しずつ自尊心を取り戻し始めた彼女たちの笑顔をこの目で見るのが、本当に楽しみだ。