原貫太オフィシャルブログ

アフリカでの国際協力活動から新時代の働き方、情報発信術まで。※本ブログの内容は個人の見解によるものです。

アフリカへの支援・援助は無駄なのか?-民間NGOの活動から考える

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「誘拐された時から、茂みの中を歩き回る生活が始まりました。」

 

 

僕が生まれて初めてアフリカの元子ども兵に出逢ったのは2016年1月。認定NPO法人テラ・ルネッサンスがウガンダ北部で運営する元子ども兵社会復帰センターで、元少女兵であるアイ―シャさん(仮名)へインタビューを行った時でした。

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わずか12歳で反政府軍に誘拐され、26歳で脱退するまでの14年間を望まない「兵士」として過ごした彼女。これまで日本という恵まれた環境の中で育ってきた人間として、その体験談はあまりにも衝撃的でした。インタビュー終了後、彼女にどんな言葉をかけて良いのか分からず、ただ一言「話してくれてありがとう」と声をかけることしかできませんでした。

 

 

 

アフリカで起きている子ども兵の問題は、知れば知るほどその不条理さに圧倒されます。

 

 

殺すことに対する抵抗感を無くさせたり、帰る場所を失わせたりするために、最初の任務として家族の殺害を強要される。女の子の場合であれば、戦闘に駆り出されるだけではなく、兵士との強制結婚をさせられる。

 

運良く軍隊から逃げ出し、村への帰還することができたとしても、コミュニティからの憎悪、偏見、差別に苦しみ、経済的・社会的に苦しい生活を送ることを余儀なくされる。

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photo by テラ・ルネッサンス

 

僕にとって、かつては「どこか遠くの世界の出来事」に過ぎなかった子ども兵の問題。今この記事を読んでいるあなたも、かつての僕と同じように感じているかもしれません。

 

 

そんな僕が、アイ―シャさんと出会ったことをきっかけにアフリカでの支援活動を開始し、そして今年4月にはその体験を一冊の本にまとめました。それが、『世界を無視しない大人になるために 僕がアフリカで見た「本当の」国際支援』です。

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これまでのアフリカ支援は無駄だったのだろうか?

途上国、とりわけアフリカでの支援を考えるにあたり、僕たちのような援助関係者が真剣に考えなければならないのが、支援(援助)の在り方です。

 

 

欧米をはじめとする先進諸国(日本を含む)は、過去50年間で230兆円もの支援をアフリカに注いできました。この230兆円という金額は、6000年前の縄文時代から毎日1億円をドブに捨て続けても捨てきれないほどの量だと言われています。

 

 

それなのに、2017年になってもアフリカは貧困、紛争、病気、汚職、そして支援慣れという負の連鎖から抜け出せずにいる。これまでアフリカに注がれてきた支援・援助は、そのすべてが無駄だったのでしょうか?

(参照:『ぼくらのアフリカに戦争がなくならないのはなぜ?』

 

 

 

では、本当に意味がある国際支援とは何なのだろう?その答えを探しながら書いた本が、『世界を無視しない大人になるために』です。

www.kantahara.com

 

 

今回の記事では、本書を書く際にお世話になった認定NPO法人テラ・ルネッサンスの理事長である小川真吾氏と、同法人カンボジア駐在員である江角泰氏との対談を通じ、「本当の」国際支援を考えます。

 

 

自立と自治/オーダーメイド型の支援

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photo by Kanta Hara

 

認定NPO法人テラ・ルネッサンスではこれまでの15年間、「自立と自治」*を一つのテーマに掲げ、ひとり一人のニーズに寄り添った「オーダーメイド型」の支援を実施してきました。

 

 

テラ・ルネッサンスでは、その支援の哲学として、「ひとり一人にあった支援が存在する」という考え方を持っています。国際機関や大型国際NGO、政府機関によって行われることが多い「上から」の画一的な支援ではなく、個々人が持っているリソースや課題などにできる限り寄り添った形で、受益者たちの社会復帰や生活再建を促していくのです。

 

例えば、「元子ども兵」と一言で表しても、性別、誘拐された時期や拘束期間、帰還地域の状況、宗教や価値観も異なれば、個々人の能力や興味関心も様々です。机上の勉強ではなかなか理解することができませんが、現場で元子ども兵たちひとり一人と接していれば、「受益者たちは、僕たちと同じ一人の人間である」という当たり前のことに改めて気づかされます。

 

 

そのため、全ての元子ども兵に対して、「この支援を受ければ大丈夫」というわけでは決してなく、ひとり一人に寄り添った支援を実行していく姿勢が求められるのです。国際機関や大型国際NGOは概して、画一的な手法で上からの支援を行うことが多いですが、この「オーダーメイド」型支援は、テラ・ルネッサンスのような草の根型NGOであるからこそ、可能になるのでしょう。

 

 

*テラ・ルネッサンスの考える「自立と自治」
自立...自立という言葉を辞書で引くと、「他への従属から離れて独り立ちすること」とあるが、テラ・ルネッサンスの考えている自立とは、周りから自分を切り離して、独りで立つ(独立)とは同義だと思っていない。むしろ、周囲との関係性の中で、自らの力で自分らしく生きることだと捉えている。例えると、植物が周囲の環境との関係性(バランス)の中で、それぞれが多様に成長して生きているような状態。

自治...テラ・ルネッサンスの考える自治とは、「自分の将来や、地域の課題、国の未来について主体的に取り組む『責任と権限』を持つ」こと。自らが変革の主体者として、社会の課題に関心を持つことが、自治への第一歩だと考えている。国全体にとって本当に望ましい決定(社会的選択)をするためには、選挙をして代表者に任せるだけでは不十分であり、市民が主体的に関わっていく事が重要だと考えている。

 

 

小川真吾(おがわ しんご)

大学卒業後、青年海外協力隊員としてハンガリーに派遣され、旧ユーゴスラビア諸国とのスポーツを通した平和親善活動などに取り組む。帰国後、カナダ留学などを経て2005年より、テラ・ルネッサンス、ウガンダ駐在代表。ウガンダ及びコンゴ民主共和国における元子ども兵の社会復帰支援事業などに従事し、2011年より、テラ・ルネッサンスの理事長に就任。

江角泰(えずみ たい)
大学在学中、テラ・ルネッサンスのカンボジア・スタディツアーに参加。京都で大学院に通いながら、2 年間テラ・ルネッサンスでインターンを経験。2006年に職員となり、2008年よりカンボジアに駐在。カンボジア及びラオス事業の運営に携わる。カンボジア駐在代表。

 

 

お金のために地雷原で働く人たち 

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対談した江角氏(左)と小川氏(右)(photo by 認定NPO法人テラ・ルネッサンス)

 

小川)テラ・ルネッサンスにとって、初めての海外事業はカンボジアから始まったわけですが、この 15 年を振り返って、現地ではどんな変化がありましたか?

江角)元々、地雷除去の支援から始めたのですが、それだけでは現地のニーズを満たせないということがわかり、地雷被害者を減らすための取り組みを始めるようになりました。つまり、地雷があることを知っていても、地雷原に入って、そこで被害にあってしまう人がいたのです。ですので、まずは、地雷被害者ゼロを目指す方針を政府も出していて、私たちも住民たちが被害にあわないために、地雷埋設地域での村落開発に力を入れてきました。

小川)そもそも、なぜ、住民たちは危険を侵してまで地雷原に入っていたのでしょう?私は以前、日々の食べ物さえままならず、地雷原に入ってでも畑を耕して食料を生産しなければならない状況があると聞きましたが...。

江角)そういう側面もあります。しかし、実際には、自給食料を生産するためではなくて、換金作物を栽培するために、貧しい人たちは、命を落とすリスクを負いながら、地雷原に入って耕作していました。

小川)なるほど。現金収入が必要だったということですか。今は地雷除去も進んで、安全な土地も増えたので、貧困層の生活は昔に比べて良くなっているのですか?

江角)たしかに、この 15 年で新たな土地が開墾されましたが、貧しい人たちの生活が良くなったとは言えません。むしろ、広大な土地を持つ裕福層と、そうでない貧困層との経済格差が広がり、底辺の人々の生活は、さらに厳しい状況になっています。

小川)どうしてですか?

江角)例えばカンボジアでは、エタノールの原料となるカッサバ(芋)を換金作物として栽培して、中国企業などが買い取っているのですが、多くの貧困層は農機レンタルや、種子購入などのために借金をしています。それでうまく収入が得られればいいのですが、実際には収支バランスが合わず、思うような収入を得ることができていません。それで、借金が返せず、担保にしている土地を取り上げられることも、しばしば起こっています。

小川)それで、結局、裕福層の畑を耕すか、タイに出稼ぎに行きながら、最低限の暮らしに戻らざるを得ないと?

江角)そうです。ある意味、地雷の脅威(リスク)からは逃れることができたかもしれないけれど、経済のグローバリズムという新たなリスクに直面しているということです。これがこの 15 年の大きな変化の一つだと思います。

 

 

対象地域の人々の自立と自治を促進する

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テラ・ルネッサンスがカンボジアで支援する地雷被害者のスー・マウさん(photo by 認定NPO法人テラ・ルネッサンス)

 

小川)なるほど。地雷は紛争により発生した問題ですが、今、直面している問題は、むしろ紛争後の復興・開発の文脈で発生している問題ですから、私たち援助する側が真剣に考えないといけないことですよね。
江角さん自身、約 10 年、現地で主に地雷被害者への援助活動を行なってきて、その現場から学んだことはありますか?

江角)対象地域の人々の「自立と自治」を促進していくことが最も大切だという学びです。地雷被害者や貧困層に対して対処療法的な支援ではなくて、自立するまできめ細かく支援すること、そして、コミュニティの人々が自分の頭で考えて、自らが抱える課題に取り組めるような環境を作っていくということが、いかに大事だったかということです。

小川)なるほど。国づくりも、まずは地域やコミュニティの人々の自立や自治が重要になってくるということですね。 

江角)そうです。それが草の根で活動する私たちの役割だと思っています。小川さんはアフリカでの 15 年を振り返って、どんな変化を感じますか?昨今、よく「成長するアフリカ」などという言葉を聞きますが、実際どうなんでしょう?

 

 

主体性を維持しながら、周囲の国々との関係性を築いていくこと

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photo by Kanta Hara 

 

小川)たしかに2000年代以降、アフリカの産油国は著しい経済成長を遂げましたが、一方国の経済は成長しても、国内の貧しい人々の生活水準は上がっていないという事実もあります。ある意味、カンボジアと同じように、グローバル経済との繋がりが大きくなるにつれ、その負の側面がアフリカでも浮き彫りになっていることは実感します。

江角)特にアフリカは植民地支配の影響も重なり、独立後、半世紀以上資源と原料の輸出に依存する経済構造から脱却することができずにいますよね。根が深いように思います。

小川)アフリカの場合、極端に欧米諸国の援助に依存してきたので、国の自治(自分たちの国のことを自分たちで決めること)すら難しい状況がありました。結果、今のような経済構造が続いているという側面もあります。昨今は、中国のアフリカ進出に伴って、アフリカの政治家たちもうまくバランスをとりながら外交努力を進めているようにも見えます。ただ、いずれにしても国としての主体的な意思決定が阻害されない程度に、大国や周辺国との関係性を築いていくことが重要なんだと思います。

江角)なるほど。そんな変容するアフリカ社会で10 年以上実際に活動を行なってきて、逆に小川さん自身が、アフリカの人たちから学んだ素晴らしい点などはありますか?

 

 

アフリカの人々の適応能力の高さ

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ウガンダの元子ども兵社会復帰支援センターにて、洋裁の訓練に取り組む女性たち。紛争に巻き込まれた過去を少しずつ乗り越えていく力強い姿に、ひとり一人に内在する「未来をつくる力」を感じる。(photo by 認定NPO法人テラ・ルネッサンス)

 

小川)一つは、「様々なリスクに対する、しなやかな適応能力の高さ、素晴らしさ」です。アフリカの人々は、紛争や、貧困、犯罪、失業、政治不安、クーデター、感染症、難民の流入、自然災害などなど、数え切れないほど様々なリスクに囲まれて生活しています。
しかし、それらのリスクに晒されながらも、どうにかして日々を生き抜いているアフリカ人のダイナミックで、柔軟性に富んだ適応能力の高さには、何度も驚かされましたから。

江角)特に、社会復帰を果たしていった元子ども兵たちの変化には、私も驚きました。

小川)10 年前に受け入れた元子ども兵の中には、今は家族だけでなく、コミュニティの貧困層を支援したり、コニュニティのリーダーを務めたりしている者もいるくらいですからね。子ども時代に10 年もの期間兵士として駆り出されていたことを考えると、彼ら彼女らの社会に適応していくチカラは相当なものです。

江角)もし、日本だったら、アフリカ人が抱えるリスクの一つでもあれば、パニックになって社会が混乱してしまいそうですよね。

小川)アフリカの人たちは無数の複合的なリスクに直面していますが、それに対して、「あれがダメなら、とりあえず、こうしてみよう」というふうに、一つの対応策が有効でなければ、瞬時に別のやり方をトライするということを繰り返しているので、日本人から見れば適当に対応しているように見えるかもしれません。しかし、実はその方が結果的に合理的だったりすることもあるわけです。 

江角)なるほど。ある場所(人)がダメになっても、それを他の場所(人)がカバーして、全体として危機やリスクに適応するシステムのようなものが有機的に機能しているのかもしれませんね。

 

レジリエンスは、システムの特性を含んだ概念

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インタビューを行った一年後に撮影したアイ―シャさん(photo by Kanta Hara)

 

小川)レジリエンスとは、まさに、そのようなシステムの特性を含んだ概念ですからね。有機的なつながりを考慮しながら、ホリスティックな視点を持つことがレジリエンスを高める上で大事な視点だと思います。

江角)今のグローバル社会で、リスクゼロはあり得ませんから、私たち日本人もこれからは、回避すべきリスクと、向き合うべきリスクを見定めながら、レジリエンスを向上していくことが必要なのでしょうね。アフリカの現場からの大きな学びですね。

小川)そうですね。同時に、レジリエンスの概念は、日本的な価値観と親和性を持っていますから、私たちも日本のNGOとして果たせる役割は大きいと思っています。

江角)カンボジアにおいても、レジリエンスの概念はとても大切だと思います。グローバル化のリスクに晒されながらも、対象地域に内在する様々な資源を活かしながら、一人ひとりのレジリエンスを向上していきたいと思います。

小川)これまで 15 年間、私たちが現場で学んだことを活かしながら、これからも、対象地域の人々の自立と自治を目指して現場活動を続けていきましょう。

江角)今後、日本的な国際協力のあり方や援助手法が、世界にとっても重要だと私は考えています。

小川)同感です。ぜひ、テラ・ルネッサンスとしてもその一翼を担えるように、できることを続けていきましょう!

 

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 『世界を無視しない大人になるために 僕がアフリカで見た「本当の」国際支援』

 

「脱走を試みましたが捕まり、鞭で200回叩かれました。」

 

14年間を反政府軍で過ごした元少女兵との出会い。アフリカでの「原体験」を書いた『世界を無視しない大人になるために 僕がアフリカで見た「本当の」国際支援』。ただ僕たちが「与える」「教える」だけが国際支援のあるべき姿ではない。絶望的な状況に置かれながらも、自分たちの力で困難を乗り越えていく彼らの姿から、僕たちが学ぶべきことはたくさん存在する-。 

 

この本は、僕の処女作にして、渾身の力で書いた一冊。一人でも多くの人たちに届き、「世界を無視しない大人」がもっと増えてほしい。 

 

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『ぼくらのアフリカに戦争がなくならないのはなぜ?』

「アフリカの紛争に関心があります!」という人に、まずオススメしている一冊がこれ。

 

本記事に登場したテラ・ルネッサンス理事長小川真吾氏の著作。アフリカで紛争が無くならない原因は決してアフリカだけにあるのではなく、歴史的背景や先進国の利害と深い関わりがあることを、小川氏の現場での経験などを踏まえながら、丁寧な筆致で解き明かしていく。きっと、多くの人にとって「目から鱗」であると共に、読了後にはアフリカの紛争をどこか遠くの世界の出来事で終わらすことができず、自分自身に課せられた責任や使命に気づかされるだろう。