アフリカ中・東部の紛争において、「ルワンダの虐殺」「ウガンダの子ども兵」「コンゴ民主共和国の性暴力」に関する記事は毎回大きな反響を貰います。
この3つに関して、ルワンダ・ウガンダに関しては「過去の紛争」、コンゴ民主共和国に関しては「現在の紛争」と捉えられるかもしれません。
ルワンダ・ウガンダは今でさえ「平和」かもしれませんが、もっと大きな視点で、例えば大湖地域(ビクトリア湖等周辺国)という視点で捉えれば、単にそれぞれの国の負の部分が他国(主にはコンゴ民主共和国東部)へ移されただけであるようにも考えられます。
例えば、ルワンダ虐殺を主導した民兵組織「インテラハムウェ」や、ウガンダで子どもを誘拐しまくって兵士に仕立てていた「神の抵抗軍」も、形は多少変わってはいるものの、未だにコンゴ民主共和国東部で活動していると言われます。
おまけに、ルワンダのカガメ大統領は1994年に事実上政権を掌握し、2000年に大統領に就任してから現在までその地位に留まっており、2015年には同国の憲法172条の改正によって、カガメ氏が国会議員である限りは2034年まで大統領を続けられるという法律が制定されています。
また、ウガンダのムセベニ大統領は1986年に反政府軍として権力を握って以来、今年2017年で31年間大統領を務めることになります。
いつの日か政治的なパワーバランスが崩れれば、具体的にはカガメ大統領やムセベニ大統領が倒れれば、この地域の安全保障環境も大きく変わり、新たな紛争の火種が生まれる可能性も決してゼロではありません。
photo by ITU/J.Ohle
ルワンダに限って言えば、以前の記事でも書いたように、最近の研究によるとルワンダ虐殺では殺害されたツチ人よりも、カガメ率いるツチ系の軍隊(ルワンダ愛国戦線/RPF)が殺したフツ人の方が多かったという報告もあります。
例えば、RPFがルワンダ国内に進行していった途中の村では、「もう外に出ても大丈夫だ、安心しろ」と言いながらRPFがフツとツチを外に出し、そのままフツの人々を虐殺したという話も現地関係者の方から聞いたことがあります。
また、ルワンダ愛国戦線は1994年7月にキガリを制圧して政権を掌握した後も、コンゴ東部に逃げていったフツ系民兵を追いかけて、虐殺を続けていたことが国連報告書で暴かれています。
現在のルワンダでは「フツ」「ツチ」といった言葉を使うこと自体が法律で禁止されており、また政権を担っているのがツチ系であることから、ルワンダ虐殺でツチ(特にルワンダ愛国戦線)が犯した戦争犯罪についてはルワンダ国内では公に明らかにされることはまずありません。
しかしながら、声には出せなくても、一部のフツがそのことに対して不満を抱えていることは間違いありません。2034年にポール・カガメが大統領を退いた時、ルワンダ国内の、もっと言えば大湖地域のパワーバランスはどのように変化するのか、はたまた崩壊してしまうのか。注目したいと思います。