原貫太の国際協力ブログ

フリーランス国際協力師原貫太のブログです。国際協力やNPO・NGO、アフリカ、社会問題などのテーマを中心に解説しています。

【子どもの目の前で…】南スーダン・コンゴで広がる女性へのレイプ被害

自衛隊の派遣先となっている南スーダン。2月20日には一部で飢饉の発生が宣言され、少なくとも10万人が死に直面しており、100万人以上が飢餓に苦しんでいる。また、人道支援を必要とする数は610万人にも上っている。

 

今月25日には南スーダンで援助関係者6人が何者かに待ち伏せされた上で襲われ、殺害されている。2013年12月に内戦が始まって以来、南スーダンではこれまでに少なくとも79人の援助関係者が殺害されている。

 

また、外国人援助関係者に対する労働許可証が100ドルから10,000ドルへ値上げされるなど、南スーダン政府による援助機関への「妨害」が指摘されている。

 

 

この南スーダンでは現在、女性へのレイプが深刻な問題となっている。隣国のコンゴ民主共和国の事例も上げながら、紛争下における「武器」としてのレイプを考えたい。

 

 

南スーダンで広がる女性への深刻なレイプ被害 

南スーダンでは、深刻な性暴力被害が数多く報告されている。

 

昨年7月に紛争が再燃してからは、南スーダンを脱出する難民の数が後を絶たない。その数は現在150万人を超えて、シリア、アフガニスタンに続き世界で3番目の「難民危機」となっている。多い時には、1日に2,000人~3,000人もの難民が隣国のウガンダへと流入している。現在ウガンダが抱えている南スーダン難民の8割以上が女性と子どもによって占められている。

 

故郷を離れてウガンダへ向かう途中、運悪く政府軍に見つかってしまうと、男性は殺され、女性はレイプされるといった声が難民から聞かれる。今年2月にウガンダ北部の難民居住区で出会った女性は、「逃げる途中で政府軍に見つかってしまい、夫はそのまま拉致された。今は生きているかさえも分からない」と語っていた。

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インタビューに答えてくれた南スーダンを逃れた女性。写真右手が筆者(photo by Kanta Hara)

 

子どもたちの目の前で母親がレイプされていることや、母娘が同時にレイプされていることも報告されている。また、南スーダンとウガンダの国境を超えるためには兵士に「レイプ税」を支払わなくてはならないと証言する女性もいるほどだ。

 

さらには、2016年7月には首都ジュバのホテルが武装勢力に襲撃され、欧米人の援助関係者までもがレイプの被害に遭っている。AP通信によれば、この女性は、兵士から「俺とセックスをするか、ここにいるすべての男にお前をレイプさせてから頭を撃ち抜くか、どちらかを選べ」と言われたと述べている。最終的に彼女は、15人の南スーダン人兵士からレイプをされた。

 

 

女性にとって世界最悪の場所-隣国コンゴで蔓延る武器としてのレイプ

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隣国のコンゴでも、レイプが「武器」として使われている。この国では、もしかしたら南スーダン以上の壮絶な現状が広がっているかもしれない。

 

アフリカ大陸中部に位置するコンゴ民主共和国。特に東部は、「女性にとって世界最悪の場所」と言われることもある。なぜなら、日々数十人~数百人もの規模でレイプが横行していることもあるからだ。

 

コンゴ紛争では、深刻な数の女性に対する性暴力の被害が報告されており、1998年以降の約20年間で、推定20万人もの女性と少女が被害を受けたと言われている。また2014年の国連レポートによれば、2010年から2013年までの4年間では、3,600人以上が性暴力の被害に遭っている。

 

レイプの対象となるのは成人女性ばかりではない。10歳にも満たない少女や、また男性も被害に逢うことがある。中には、2歳の女の子や80歳の女性までもがレイプされているほどだ。兵士が自身の性的欲求を満たすためにレイプが行われることもあるが、多くの場合、攻撃先の家族を「崩壊」させるために、レイプが一種の「武器」として使われている

 

コンゴ東部では、反政府軍だけでなく、政府軍側の兵士による女性への性暴力も行われており、その手法は、家族やコミュニュティーの前で行う集団強姦や性器を刃物で傷つけるなど、残忍なものが数多く報告されている。被害を受けた女性は、心身共に傷つき、社会的・経済的にも苦しい生活を強いられることになる。

 

上述した2010年からの4年間におけるコンゴの性暴力被害者は、70%以上が女性、25%が子どもだ。

 

 

紛争が起きれば犠牲になるのは女性や子どもたち

ひとたび紛争が起きてしまえば、一番の犠牲を被るのは女性や子どもたちだ。特に、家族の前で行われるような性暴力は、被害者に対する肉体的なダメージのみならず、被害者家族全体に大きな精神的ダメージを与え、紛争後もPTSD(心的外傷後ストレス障害)などに苦しむなど、長期的な悪影響が及ぼされることになる。

 

 

 

 

 

アフリカで起きる紛争の本質を知るための2冊

「アフリカの紛争に関心があります!」と言われたら、僕はまず『ぼくらのアフリカに戦争がなくならないのはなぜ?』をオススメしている。

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アフリカで紛争が無くならない原因は決してアフリカの中だけにあるのではなく、歴史的背景や先進国の利害と深い関わりがあることを、著者である小川真吾さんの現場経験などを踏まえながら、丁寧な筆致で解き明かしていく。きっと、多くの人にとって「目から鱗」であると共に、読了後にはアフリカの紛争をどこか遠くの世界の出来事で終わらすことができず、自分自身に課せられた責任や使命に気づかされるだろう。

 

何よりも、ウガンダ北部がまだ内戦中だった頃から現場に入り、元子ども兵士社会復帰プロジェクトをゼロから立ち上げた彼の言葉は、ひとつ一つの重みが他とは全く違う。私もかれこれ4回は読んだが、読めば読むほど深い納得感/満足感が得られる驚異の一冊。

 

 

 

そして、もう一つは拙著『世界を無視しない大人になるために 僕がアフリカで見た「本当の」国際支援』

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「脱走を試みましたが、捕まり鞭で200回叩かれました」。そう語る元少女兵アイ―シャさんとの出会いが、僕がアフリカで活動することに繋がる大きなきっかけとなった。

 

『世界を無視しない大人になるために』では、僕がアフリカでの活動を始めるまでの経緯やそこでの葛藤だけではなく、なぜアフリカで紛争が終わらないのか、そして本当に求められている支援とは一体何なのか、渾身の力を込めて書き切った。

 

第一章までをこちらのページで無料公開している。ぜひ読んでみてほしい。

 

 

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