「国際機関で働くためには、どんな資格が必要なのだろう?」
「国際公務員になるために、学生のうちにやっておくべきことは何だろう?」
こんな疑問にお答えします。
フリーランス国際協力師の原貫太です。国際機関やNGOなどの組織には属さず、個人で国際協力の仕事をしています。
一般企業に就職するのとは違い、国際機関に就職するため、つまり国際公務員になるためには何が必要なのか、具体的なステップを理解している人は少ないのではないでしょうか?
国際機関で働くことに興味ある人向けに、国際公務員になるための具体的な採用プロセスや必要な資格、大学生のうちにやっておくべきことを解説します。
国際機関で働くまでの具体的な採用プロセス
まず始めに、国際機関に就職するまでの具体的な採用プロセスを解説します。
公募に応募して国際公務員になる
国際機関の種類や職務内容によっても変わりますが、国際公務員の募集から採用までの一般的な流れは以下の通りです。
空席発生⇒公募⇒書類選考(⇒筆記試験)⇒面接⇒採用
書類選考の後に、筆記試験が行われる場合もあります。
空席発生というのは、あるポストについている職員が退職や転任をした際、そのポストに就いている人がいない状態を指します。
ポストの職務内容や応募者の条件を具体的に表示した空席公募は、各国際機関のホームページに掲載されるため、国際機関への就職に興味を持ったら、まずは空席情報を調べるのが最初にやることです。
ただ、欠員補充の公募に応募して国際公務員になるのは、かなり難しいと言われています。特に若い人の場合、国際公務員になれる可能性が比較的高いのは、外務省の国際機関人事センターが実施しているJPO派遣制度を利用する方法です。
JPO派遣制度を利用して国際公務員になる
日本人が国際公務員になろうとした場合、まずはJPO派遣制度の合格を目指す人が多いです。JPOはJunior Professional Officerの略称です。
JPOには35歳以下しか応募できませんが、年一回の選抜試験に合格すれば、実地研修を兼ねて国際機関に一定期間勤めることができます。
そして能力や業績次第では、そのまま国際公務員として正式採用となる可能性もあります。
JPO以外にもYPP(Young Professional Program)という一部の国際機関が実施しているプログラムやその他各国際機関が実施している若手採用のためのプログラムもありますが、今回は割愛します。
JPO派遣制度は国際公務員になれる可能性が最も高い方法の一つなので、気になる方は公式ページに目を通してみましょう。
国際機関で働くためには?必要な資格は3つ
国際機関の職員になるために最低限必要とされている資格は以下の3つです。
- 学位…応募するポストと関連する分野での修士号以上の学位があること
- 語学力…英語もしくはフランス語で職務を遂行できること
- 専門性…応募するポストと関連する分野での勤務経験があること
学位
応募するポストに関連する分野での修士号、または博士号を持っておくことが必要です。
そのため大学院を卒業することが、国際機関の職員になるための最低条件になります。学部卒では基本的に国際公務員になることはできません。
語学力
国際機関では英語、もしくはフランス語でコミュニケーションが行われます。
特に「英語は話せてあたりまえ」といわれる世界です。英語やフランス語で問題なくコミュニケーションが取れるようになりましょう。
専門性
応募するポストに関係する分野での仕事経験が必要です。基本的には新卒で国際公務員になることはできません。
「資格」という表現をしましたが、国際機関の場合は「資格」というよりも「条件」と表現したほうがいいかもしれませんね。
学位・語学力・専門性以外にも必要な条件が課せられる場合はありますが、基本的にはこの3つを満たすことが国際機関の職員になるための必要最低限の条件です。
この3つに加え、大学時代に国際機関やNGOでインターンシップをした経験もあると、選考時に有利になると言われています。
国際機関で働くために大学でやるべきこと
国際機関の職員になるために必要な資格は学位・語学力・専門性です。そのことを考慮し、将来的に国際公務員になりたい人は大学生の間に以下5つのことに取り組んでおきましょう。
大学院に進むため好成績をキープ
国際機関で働くためには開発学や国際政治学など、応募するポストに関連する分野で修士号以上を取る必要があります。
国際機関で働く日本人の学歴を見ると、やっぱり高学歴の人が多いです。特にイギリスやアメリカなどの有名大学院の出身者が圧倒的に多いと言われています。
海外の大学院は、選考時に大学時代の成績を厳しくチェックしています。また、海外の大学院は学費が高額な場所も多いですが、奨学金を得るためにも大学時代に優秀な成績を残しておくことが必要です。
大学時代のGPAは最低でも3.0以上、できれば3.5は持っておきましょう。
★関連記事★
国際協力に学歴は必要?大学院まで行くべき?高卒はまず無理?解説します! - 原貫太の国際協力ブログ
大学在学中または卒業後に青年海外協力隊にトライ
国際機関で仕事をするためには、応募するポストと関連する勤務経験が必要です。海外、特に発展途上国で仕事した経験を持っていると強いと言われています。
これを満たしてくれやすいのが、JICAが実施している海外ボランティア制度の「青年海外協力隊」です。2020年からは名前が「JICA海外協力隊」に変わっています。
前提として、大学在学中、または大学を卒業してすぐに青年海外協力隊に合格することは非常に難しいです。
「コミュニティ開発」や「青少年育成」といった分野を除くと、何の資格も社会人経験もない大学生が申し込みできる職種は限られています。
でも、もし大学在学中や卒業後すぐに青年海外協力隊に進めると、その後のキャリアの選択肢が大きく広がります。
さらに言うと、青年海外協力隊では2年間のうちに約180万円を受け取ることができるので、これを原資に大学院に進むこともできます。
また、2年間の間に英語をはじめ語学力を鍛えることもできるので、二つ目の条件「語学力」も満たしやすくなります。
国際協力を仕事にしたい人に僕が青年海外協力隊をおすすめする理由は、こちらの記事で解説しています。あわせてご覧ください。
➡国際ボランティアを仕事にしたい人はまず青年海外協力隊を目指すべき3つの理由 - 原貫太の国際協力ブログ
英語とフランス語を勉強する
国際機関では、基本的には英語もしくはフランス語で仕事をすることになります。そのため、まずは高い英語力を身に着けることが必須です。
最低でも大学在学中にTOEFL80点以上、TOEIC800点以上、できるならTOEFL100点以上、TOEIC900点以上を取得できることが望ましいです。
テストのスコアはあくまでも目安なので、それよりも英語で他人とコミュニケーションをとれること、英語で自分の意見を伝えられるようになることを目標にしてください。
「英語力を伸ばすためにどうすればいいですか」とよく質問されますが、僕自身はアメリカに一年間留学したのは良い経験だったと思っています。
アフリカの人たちと今一緒に仕事ができているのは、やはりアメリカに留学していた経験は大きいです。
★関連記事★
国際協力師になるには英語が必要である3つの理由【英語力の伸ばし方を解説】 - 原貫太の国際協力ブログ
ただ、留学するなら英語を学ぶための語学留学ではなく、英語で勉強をする交換留学をおすすめします。僕はカリフォルニアの大学に一年間留学して、現地で国際関係論を専攻しました。
ただ英語を学ぶためだけなら、今の時代はオンライン英会話でも十分に勉強できますからね。
国際機関で働くためには英語での高いコミュニケーション力が必要になります。まずは大学生の間に、自分の意見を英語で伝えられるようになることを目指しましょう。
また、国際機関は「英語は話せてあたりまえ」と言われる世界なので、英語が使えることは強みになりません。語学力を自分の強みにしたい人なら、英語以外にもう一つの言語、できればフランス語が使えるといいです。
大学に入学すると1年生の時も第二外国語を勉強することになりますが、迷ったらフランス語を選ぶことをおすすめします。
プレゼン力を鍛える
国際公務員になりたい方は、プレゼン力を鍛えておきましょう。国際協力のプロフェッショナルである瀬谷ルミ子さんは、自身の書籍『職業は武装解除』の中でこう書いています。
日本人は、書類選考はいつも高評価なのに、電話面接が苦手な人が多い──。
これは、国連の応募者に限ってだが、よく言われていることだ。ちなみに、この評価は語学力というより、コミュニケーション能力の問題なのだと思う。(『職業は武装解除』より引用)
瀬谷さんも指摘しているように、これは語学力の問題だけではなく、元々のコミュニケーション能力やプレゼン力も関係しているはずです。
アメリカやヨーロッパと比べて、日本の学校教育ではプレゼンをする機会が少ないです。海外出身の国連職員に比べて、日本人はプレゼンを苦手とする人が多く、採用の時にもそれがネックになる人が多いと聞きます。
そのため学生の間に人前で堂々と意見を発信できるようなプレゼン力を磨いておくことは、国際機関の職員になるためにやっておくべきことだと思います。
インターンシップをする
大学在学中に国際機関やNGOでインターンをしてみましょう。できれば国際協力に関係ない一般企業でもインターンすることおすすめします。
インターンをすれば国際機関に就職する際の選考で有利になる可能性もありますが、メリットはそれだけではありません。実際にインターンを通じて仕事をする経験を積むことで、本当にそこで働きたいか考えられることです。
僕は元々国際機関で働きたいと思っていましたが、大学生の間に国際機関とNGOの両方でインターンした結果、NGOで働く方が面白いと感じることができました。
国際協力に関わる方法は一つではありません。色々な立場から国際協力をやる方法を模索するためにも、大学生の間にインターンをしてみましょう。
★関連記事★
NGOでインターンするなら、どう団体を選ぶべき?4つの判断基準を紹介します - 原貫太の国際協力ブログ
国際機関で働きたい人に僕がどうしても伝えたいこと
さいごに、今までの話をぶち壊すようなことを言います。
将来的に国際機関で働くことに興味ある方、そもそもの前提として、この質問に答えられますか?
「あなたは何のために、どの組織で、何をしたいですか?」
この質問に答えられない人は、いったん国際機関で働くという夢を考え直してください。
国際機関で働くことに興味がある学生にこの質問をすると、「ユニセフで働きたい」「難民の支援がしたい」くらい、フワッとした回答しか返ってこないことが多いです。
国際機関で働くことに興味がある方、自分の胸に手を当てて正直に考えてみてください。憧れだけで国際機関を目指していませんか?
国際機関で働くというのは、あくまでも一つの手段に過ぎません。大事なことは国際機関での仕事を通じて、どんな目的を実現したいのか?どんな社会問題を解決したいのか?です。
それに「国際機関」と一言で表しても、色んな組織があります。国際機関の一つである国際連合だけでも、
- 子どもの問題に取り組むUNICEF
- 難民問題に取り組むUNHCR
- 人道問題全般に取り組むUNOCHA
など、たくさんの組織があります。
自分はどんな問題に関心があるのか?何のために国際機関で仕事をしたいのか?そういった本質的な目標も考えなければ、ただの夢で終わってしまいかねません。
「国際機関で働きたい」という夢を持つだけでは、あまりにも抽象的すぎます。それでは大学や大学院で勉強する内容も、最初のキャリアで就く仕事も決めることはできません。
夢を叶えるための一つの方法は、その夢を手段に変えてしまうことです。
国際機関で働きたいという夢を持っている人と、国際機関で働くという手段を通じて貧困のない世界を実現したいと考えている人を比べたら、後者の方が人生は遥かに豊かになります。
なぜなら、たとえ国際機関で働くことができなくても、貧困のない世界を実現するための手段は他にもたくさんあるからです。
夢を実現するための手段が他にもたくさん存在するからです。
国際機関で働くという夢ではなく、国際機関で働くという手段を通じてどんな目的を達成したいのか、もっと具体的に考えてみてください。そして、もっと具体的に情報収集してください。
そうすれば、あなたの進路の選択肢はもっと多様になり、夢を叶えるための方法は決して一つではないことに気が付けるはずです。
自分の目の前には一つの道だけではなく、色々な道があることに気が付けるはずです。心から応援しています。
【国際協力を仕事にするための方法、一緒に考えてみませんか?】
「国際的な仕事に就きたいが、具体的な関わり方がわからない…」
「国際協力に興味があるけど、周りにロールモデルがいない…」
こんな悩みを解決するために、国際協力やNPO活動に特化した原貫太のオンラインサロンSynergyを運営しています。
新メンバーを募集中です。国際協力をもっと深く勉強したい方、少しでも興味がありましたら公式ホームページをご覧ください。
こちらの記事もよく読まれています。あわせてご覧ください➡国際連合の問題点を日本一わかりやすく解説【拒否権はなぜ使われる?】 - 原貫太の国際協力ブログ