原貫太のブログ

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国際連合の問題点を日本一わかりやすく解説【拒否権はなぜ使われる?】

「国際連合の問題点には、どんなものがあるのだろうか?」

「国連は批判されることが多いが、具体的にどんな問題点があるのだろう?」

 

こんな疑問にお答えします。

 

フリーランス国際協力師の原貫太です。ボランティアでアフリカ支援をしながら、国際協力や国際情勢に関する情報をブログやYouTubeで発信しています。

 

あなたは国連に対して、どんなイメージを持っていますか?

 

将来的に国連で働いてみたい方なら、国連に対してかっこいいイメージを持っていたり、中には憧れを抱いている人も多いかもしれません。

 

しかし、国連は決してプラスの側面だけの組織だけではありません。むしろ国連は、批判されることのほうが多い存在です。

 

国際連合にはどんな問題点があるのか、日本一わかりやすく解説します。

 

 

YouTubeでも解説しました。動画のほうが絶対に分かりやすいです。

 

 

国際連合が抱える最大の問題点は拒否権

国際連合 問題点

ニューヨークの国連本部。撮影:原貫太


国際連合が抱える最初にして最大の問題点は、安全保障理事会における拒否権の存在です。

 

国連の中枢組織である安全保障理事会では、常任理事国のアメリカ・ロシア・中国・イギリス・フランスのみが拒否権を持っており、自分たちにとって都合の悪い議案があれば、拒否権を使ってそれを無効にする力を持っています。

 

そのため、世界の平和と安定に貢献するのが本来の役割であるにもかかわらず、国連はその機能がたびたび麻痺し、むしろ世界から戦争がなくならない原因になっているのです。

 

国連は戦勝国に都合よく作られた組織

国連の最大の問題点である拒否権について考えるために、国連が誕生した歴史を少しだけ振り返りましょう。

 

1945年に第二次世界大戦が終わり、アメリカやイギリス、フランス、現在のロシアであるソ連、中国などの「連合国」が勝利を収め、日本やドイツ、イタリアなどの国が戦争に負けました。

 

当時戦争に勝った国々は「第二次世界大戦が終結した後は戦争に勝った私たちが世界を支配できるようにしよう」と考えていたのです。

 

この第二次世界大戦に勝利した国々であり、その後国連の仕組み作りを主導した「連合国」は、元々英語でUnited Nationsといいました。

 

日本語では連合国・国連と、第二次世界大戦の前後で呼び方が変わっていますが、英語では連合国も国連も、どちらもUnited Nationsと同じ呼び方です。

 

国連に興味のある人なら、国連は世界の警察のような存在で、世界が本当の意味で良い方向に向かっていくために機能していると考えている人もいるかもしれません。

 

しかし、国連が発足した当時の歴史を振り返ると、第二次世界大戦に勝利した国々が世界を支配するための仕組みとして作ったと考えることもできます。

 

国連安全保障理事会における拒否権の問題

国連安全保障理事会、略して国連安保理の常任理事国はアメリカ・ロシア・中国・イギリス・フランスの5つですが、この5ヶ国だけが自分たちにとって都合の悪い決定を一方的に拒否できる「拒否権」を持っています

 

冷静に考えてみてください。第二次世界大戦が終わって70年以上がたち、世界の勢力図は当時とまったくもって変わっています。

 

日本も世界のリーダーの仲間入りをしていますし、ドイツは世界中からたくさんの難民を受け入れたり、地球温暖化に対して積極的に取り組んだりと、ヨーロッパの中でリーダー的な存在として活躍しています。

 

また日本とドイツは、国連の運営に欠かせない国連分担金も多くを負担してきましたし、インドやアフリカ諸国など、これから経済成長していく国々もたくさんあります。

 

それにもかかわらず、国連安全保障理事会という国連の中心的な役割を担う組織では、第二次世界大戦に勝った5ヶ国にとってのみ都合のよい体制が敷かれているのです。

 

この体制を変えようとしても、拒否権がある限りは難しいでしょう。常任理事国の5ヶ国が一度手に入れた政治的な権益を手放すことは、まず無いからです。

 

安保理の拒否権が紛争を長引かせてきた

国連の安全保障理事会は、本来なら国際紛争を解決するための役割を発揮するべき存在です。

 

しかし、これまでの歴史を振り返ると、この拒否権があることが原因で安全保障理事会は機能不全を起こし、むしろ世界の紛争が解決しないという状況が起きています。

 

少しデータが古いですが、2012年2月までに各国が拒否権を行使した回数は

 

  • ロシア127回
  • アメリカ79回
  • イギリス31回
  • フランス17回
  • 中国9回

 

となっています。

 

2015年までの10年間ではアメリカは拒否権を3回使っており、これらはすべて、イスラエルがパレスチナ自治区で行っている軍事行動に対する非難決議から、イスラエルを擁護するために使っています。

 

アメリカとイスラエルは政治的に仲がいいですからね。

 

また、シリア内戦に関する安全保障理事会の決議に対しては、ロシアが何度も拒否権を行使しています。

 

シリア内戦では、シリア政府のアサド政権が一般市民を殺戮していることが問題になっていますが、ロシアとアサド政権は政治的に仲がいいため、ロシアはアサド政権を擁護するために拒否権を何度も行使しているのです。

 

世界で起きている大きな問題に、アメリカ、ロシア、中国、イギリス、フランスが全く関わっていないということは、ほとんどないですよね。メインキャラクター並みに関わっている問題も多いです。

 

だからこそ、その国際問題によって何らかの利益を得ている国がこの5カ国の中にあれば、その問題を解決しようとしても、拒否権を発動される可能性が非常に高いです。

 

もちろん国連機関の中には、紛争で苦しんでる人たちを助けるために活躍している組織もあります。例えば冒頭でも紹介したWFP(世界食糧機関)やUNHCR(国連難民高等弁務官事務所)などです。

 

ただ、戦争によって傷ついた人たちを一時的に助ける支援ではなく、そもそも紛争を根本的に解決しようとしても、国連の中心的な存在であるこの5つの国が自分たちの国益を優先したいがために拒否権を行使することによって、紛争がなくならない現実があるのです。

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南スーダン難民の子どもたちと原貫太

 

僕自身もアフリカの難民支援の現場でUNHCRのスタッフと一緒に仕事をさせてもらったこともありましたが、国連の中心的な国々が自分たちの国益のために世界中で戦争を起こし、その火消し役というか、尻拭い的な役割をさせられているのが国連の難民支援機関…そんなイメージをどうしても持ってしまうんですよね。

 

国連のもう一つの問題点は法的拘束力がないこと

国際連合 問題点

国連本部内に飾られた国連事務総長の肖像画。撮影:原貫太

 

国連の問題点は拒否権以外にもあります。

 

それは、国連が決めることは結局はただのガイドライン、つまり国連に加盟している国々が参考にするべき意見にすぎないため、「別に守らなくてもいい」という限界があることです。

 

国連の役割についてザックリ説明すると、国連とは世界中にある193の国が集まり、解決しなくてはならない世界の問題について話し合いを行って、国連加盟国が守るべきガイドラインを作っているのが主な仕事です。

 

もしかしたら発展途上国の田舎に足を運んで、子供たちに教育支援を行ったり医療支援を行ったりとこういったイメージを国連に対して持っていた人もいるかもしれません。

 

もちろん一部の国連機関にはそういった活動を行っている組織もありますが、それはごくごく一部です。また、そういった現地での支援活動に携わるのは、基本的には現地で採用された現地人のスタッフがほとんどなんですよね。

 

ちなみに、草の根での支援活動に携わってみたい人なら、国連ではなくNGO職員になることをおすすめします。

NGOとは何か?元NGO職員が日本一わかりやすく、簡単に解説します! - 原貫太の国際協力ブログ

 

国連の話し合いでは、中には法的拘束力のある条約や議定書などが作られることもありますが、基本的には各国が参考にするべきガイドラインに過ぎないため、法的拘束力がありません

 

そのため、そのガイドラインを守らなくても特に罰則がないというのが、今の国連の限界であり、大きな問題点なのです。国連は世界政府のような存在ではありませんから、そのあたりは誤解をしないようにしましょう。

 

国連の課題を克服するための取り組みは?

国際連合 問題点

国連本部内に飾られたモニュメント。撮影:原貫太

 

ここまで国連が抱える問題点や国連ができることの限界について解説してきました。

 

国連の問題点を解決していくために、どんな取り組みが行われているのか、もしくは何をしていかなければいけないのかについて、最後に説明します。

 

拒否権を抑止しようという働きかけ

安全保障理事会の中でも拒否権を持つ五大国。この中でも、国連改革をしようと比較的頑張っているのがフランスです。

 

例えばフランスは2001年に、"ジェノサイドなどの大量残虐行為に対して歯止めを掛ける議案に関しては、安保理常任理事国は自発的、そして集団的に拒否権の発動を控えるべきだ"という提案を持ち出しています。

 

また、五つの国だけが拒否権を持っているのはあまりにも不公平だからと、国連に加盟しているいくつかの国々が、この5か国から拒否権を取り上げようという動きも見せています。

 

でも、こんな事は誰でも考えればわかると思いますが、今拒否権を持っている国々が自ら拒否権は手放そうとすることなんて絶対にありえませんよね

 

先ほど紹介した、フランスがジェノサイドなど集団残虐行為に関しては拒否権は控えるべきだというのも、あくまでも提案でしかありません。

 

例えば中国はチベット関係で問題を抱えていますし、ロシアはシリア内戦で何度も拒否権を使ってきましたから、特に中国・ロシアの二か国がフランスの提案に乗るかといったら、正直疑問です。

 

また、常任理事国を現在の5カ国だけではなく、日本やドイツ、またインドなども加えるべきだという意見もありますが、日本が常任理事国に入ろうとしても、政治的に対立している中国が拒否権を行使してそれを防ごうとします。

 

同じくインドも中国と国境関係で問題を抱えているので、これも中国が嫌うはずです。

 

なので、国連を改革しようとしても、にっちもさっちも行かないデッドロック状態なのが今の現実です。国際政治学者の中には、国連を改革しようとしても時間とお金が無駄になるだけだからやめたほうがいいと批判している人もいます。

 

NGO主導の国際的な枠組み作り

もう一つの解決策は、国連とは全く別の大きな枠組みを作ることです。ここで注目されているのが、NGOの存在。

 

非政府組織であるNGOも近年は影響力が強くなってきていますし、政治的利害にとらわれることなく、本当の意味で良い社会を作ろうと、自分たちのビジョンをベースに活動している団体が多いです。

 

そのため、世界の複雑に絡まりあった問題を解決する糸口はNGOが持っているのではないかと考えられています。

 

世界中のNGOが連携して大きなネットワークを作り、国際的な世論を生み出すことができれば、国連に加盟する国々にプレッシャーをかけることができる。そういった意見もあるんですね。

 

国際協力に関わる組織には国連や政府、NGOなど色んな組織があって、もちろんそれぞれの組織に長所と短所がありますが、これから国際協力の道に進もうと思っている人たちには、個人的にはNGOという選択肢をおすすめしています

 

政治的な利害にとらわれることなく、自分たちのビジョンをベースに活動できる。国連がにっちもさっちもいかないデッドロック状態だからこそ、もっと多くの人たちがNGOの世界に入って、大きな流れを作っていく必要があると思っているからです。

 

ただ、国連という存在も、特に安全保障理事会のような存在は言ってしまえば既得権益の塊なので、たとえ国連以外の枠組みが何か別にできたとしても、そう簡単に世界が良くなっていくとは思えませんけどね。

 

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国連の問題点を知った上で、どう国際協力に関わるか?

国際連合 問題点

ウガンダ共和国で国際協力活動中の原貫太

 

国連が抱える問題点と、それを克服するための取り組みを説明してきました。

 

国連は国際社会において大きな影響力を持っている一方、批判されることも多い存在。国連で働くことに興味のある方は、国連のプラスの側面だけではなく、マイナスの側面にも目を向けましょう。

 

また、国際協力に関わる方法は、国連以外にもNGOやフリーランスなど様々な方法があります。多様なキャリアの選択肢を持つようにしてください。

 

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