昨日の講演会「途上国で働く~コンフロントワールド原貫太に訊く」でも話をした、
"プロの現場を体感しよう-あなたが学生団体でしているのは国際協力ではなく国際交流だ-」"
についてまとめました。
結論を先に書いておくと、国際協力を仕事にしたい大学生は、在学中に
①プロ意識を持って質の高い「事業」を行っている学生団体を選ぶ
②NPO法人格を持つ民間NGOでのインターン経験を積む
のどちらかを体験することをオススメします。
- 大学生による「国際協力」は「国際交流」
- 青年海外協力隊も「アマチュアの国際協力」
- 「国際協力のプロ」に関する3つの視点
- 法人格を持つNPO/NGOに求められる意識
- 大学生が国際協力を仕事にするために
- 国際協力を仕事にしたい大学生は「プロ」の現場を体感しよう
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大学生による「国際協力」は「国際交流」
「国際協力」が一大ブームとなってから久しい。最近では治安も良く、それでいて安く渡航できる東南アジアのカンボジアやフィリピンで活動する学生団体は、数え切れないほどたくさんありますね。
僕自身も、大学2年生の時に学生団体を自分で立ち上げ、約二年間バングラデシュのストリートチルドレン問題に取り組んでいました。今思い返しても、「0→1」で新しく組織を創り、紆余曲折しながらも足を動かしまくっていたあの時の経験があるからこそ、コンフロントワールドを起業できているのでしょう。
が、学生団体が行っているボランティアによる「国際協力」は、はっきり申し上げると「アマチュアの国際協力」であり、「プロの国際協力」とは一線を画します。もっと言えば、それは「国際協力」ではなく「国際交流」なのです。
青年海外協力隊も「アマチュアの国際協力」
学生によるボランティア活動のみならず、青年海外協力隊もまた「アマチュアの国際協力師」とみなされています。
元国境なき医師団の日本理事でもある山本敏晴さんは、
青年海外協力隊は、アマチュアの国際協力とみなされている。もっとはっきり言えば、国際協力ではなく、国際交流である。
仮に、国際協力を、きちんと、期間内に、数字で結果を出すもの、(しかも、経過を定期的にモニタリング(監視)されながら行うもの)と定義するのであれば、期間内に数字で結果を出すことを要求されず、しかも、定期的にモニタリングおよびフィードバックもされない青年海外協力隊、というシステムは、国際協力ではない。現地に行ったときに知り合った、周りの人々と仲良くしているだけ、すなわち、国際交流である、と考えたほうが、しっくりする。
繰り返し書いておくが、青年海外協力隊の活動は、通常の国際協力では設定されるはずの数値目標をもたず、それを達成する締め切りもなく、途中に監査されるシステムもない。(5回のレポート提出はあるが、感想文のレベルであり、かつそれに対して有効なフィードバックもない)
これでは、本人が考えた、自己満足の活動になってしまう可能性が高い。(「山本敏晴のブログ」より引用)
と述べています。
青年海外協力隊すらも「アマチュアの国際協力」、もっと言えば「国際交流」とみなされてしまうのです。学生の中には「将来は青年海外協力隊員になりたい」という人もいるかと思いますが、「プロとして国際協力を仕事にする」ためには、協力隊になるだけでは不十分だと言えるでしょう。
では、「プロとしての国際協力」を考える時には、何が大切になるのでしょうか。
「国際協力のプロ」に関する3つの視点
僕です
国際協力では、
1. 限られた期間(時間)の中で、
2. 限られたリソース(ヒト・モノ・カネ)を使い、
3. 数字で結果を出す
というのが、プロが行うプロジェクトです。
例えば、僕が南スーダン難民支援で関わっていた緊急支援では、
1. ニーズ調査から物資配布までの期間を2週間で
2. 日本の支援者などから集めた資金約30万円を使い(カネ)
3. 61世帯410人の最も支援を必要とする難民に物資を届けた
ということが言えます。
学生団体のほとんどでは、1と2を満たすことはできていても、「3. 数字で結果を出す」という部分がないがしろになってしまっているケースが非常に多い。これは、責任を追及したいわけではなく、「そもそも年に2回しか渡航ができない"ボランティア"の学生団体では、現地に信頼できるパートナーがいない限り、『数字で測る』のは難しい」という制約があるのも、一つの現実です。
上記で山本敏晴さんも言っていますが、青年海外協力隊は1と2は満たしているものの、3を満たすことができません。実際に青年海外協力隊OBの方も、
青年海外協力隊は以下の1と2は該当するけど、3は求められない。そこがプロではない理由。 https://t.co/LM0d22zpPk
— ジェイ@🇧🇩に魅了された男 (@JisinBangladesh) 2017年11月5日
と言っています。「支援者からの寄付」「財団からの助成金」で事業が行われるNPO/NGOとは違って、使われているのが「国民からの税金」という大きな枠組みのため、どうしても(後に紹介する)「説明責任」(Accountability)が曖昧になってしまう(ならざるを得ない)のでしょう。
法人格を持つNPO/NGOに求められる意識
また、「2. 限られたリソース(ヒト・モノ・カネ)を使い」に関しても、ボランティア形式で活動している組織と、法人格*を取得して活動しているNPO/NGOでは、そこに求められる意識も大きく変わります。
*ここでの「法人格」は多くの場合は「特定非営利活動法人格(NPO法人格)」を指す
というのも、学生団体による海外でのボランティア活動は、その多くが「持ち出し」によって行われます。つまり、ポケットマネーで渡航するのです。アルバイトをして稼いでおいてお金を使って、航空券を買ったり、ホテルを予約したりします。
一方で、特に法人格を持つNPO/NGOの「カネ」は、日本の市民社会からの寄付や会費、また財団等からの助成金によって支えられています。そうなるとどうなるか。
ドナーへの説明責任(Accountability)が発生するのです。
そこでは、お金を出してくれた人たちに
・どれだけの支援を
・どれだけの受益者に届け
・どのようなインパクトが生まれたのか
を説明する責任があります。また、堅苦しい言葉にはなりますが、報告書などを通じて「会計報告」「寄付の使途」をする必要があるのです。
その意味で、NPO/NGOには「プロ意識」が求められるのです。認定NPO法人ロシナンテスに勤める田才諒哉さんは
(中略)NGO職員として働き始めた今、強く感じていることがあります。
それは、僕たちNGO/NPO職員が働くことでいただく給料は、多くの場合、皆様方からの寄付金から出ているということです。
つまり、支援者の方々が、一生懸命働いて稼いだお金を僕たちはいただきながら、NGO/NPOの事業を行っています。
これは民間企業で会社員として働いていたときとは大きく異なることで、NGO/NPOで働いていると、常に自分の時間を無駄にせず、最大限活かせる使い方をしよう、という思考が特に働きます。強調しますが、なぜなら前述の通り、僕らの時間は寄付者の方々からいただいたお金で成り立っているからです。その責任は、日々ズシンと感じています。(「NGO/NPO職員はボランティアではなく、真にプロフェッショナルであるべき」より引用)
と語っています。お給料ではないにせよ、支援者からのお金を渡航費や滞在費に充てる場合も一緒。そこには「説明責任」が求められるのです。
大学生が国際協力を仕事にするために
photo by European Commission DG ECHO
以上の背景から、「国際協力を仕事にしたい」と考えている大学生は、
①プロ意識を持って質の高い「事業」を行っている学生団体を選ぶ
②NPO法人格を持つ民間NGOでのインターン経験を積む
の、どちらかを在学中に経験しておくことをオススメします。
(関連記事:「学生(国際協力)団体の「ボランティア志向から事業志向への進化」に関する考察」)
僕自身、認定NPO法人テラ・ルネッサンスでのインターン経験、さらには起業したコンフロントワールドのスタッフとして「数字」としっかり向き合い始めてから、プロ意識が一段と芽生えました。
国際協力を仕事にしたい大学生は「プロ」の現場を体感しよう
・大学生による活動の多くは「アマチュアの国際協力」もしくは「国際交流」
・国際協力のプロジェクトには3つの視点がある
・支援者がいればその分「説明責任」が求められる
・国際協力を仕事にしたい大学生は「プロ」の現場を体感しておこう
「仕事としての国際協力」をやってみたい人たちに参考になればと思います。
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「国際協力を仕事にしたい!」と思い立ったら、『国際協力師になるために』は必ず読んでおきましょう。少しデータなどは古いものの、国際協力を体系的にまとめていつ本としては一番の良書です。著者は国際協力のレジェンド的存在である、元国境なき医師団日本理事の山本敏晴さん。
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