「NPO法人が反社会的勢力や犯罪組織の隠れ蓑になっていると聞いた。どういうことだろうか?」
「なぜNPO法人は隠れ蓑として使われてしまうのだろうか?」
こんな疑問にお答えします。
フリーランス国際協力師の原貫太です。大学在学中にNPO法人を設立し、新卒でNPO職員になりました。
2019年からはフリーランスに転向していますが、このブログではNPOに関する様々な解説記事を書いています。
日本には「NPO法人=なんか胡散臭い」と感じてしまう人が多いと言われますが、その理由の一つが、過去にNPO法人が反社会的勢力や犯罪組織の隠れ蓑として使われたことがあるからです。
NPO法人が隠れ蓑になっているとは、一体どういうことか?なぜNPO法人格は反社会的勢力の隠れ蓑として悪用されやすいのか?
その理由をNPO業界で働いてきた立場からわかりやすく解説します。
NPO法人が隠れ蓑になっているとは?
Googleで「NPO法人」と入力すると、「NPO法人 隠れ蓑」「NPO法人 怪しい」といった検索候補が表示されます。
その理由は、過去にNPO法人(特定非営利活動法人)という法人格が、反社会的勢力や犯罪組織の隠れ蓑として悪用されたことがあるからです。
例えば2015年には茨城県下妻市にて、風俗店経営者が売春防止法違反の容疑で逮捕されましたが、この経営者はNPO法人「茨城人権擁護支援会」の代表でした。
下妻市はこのNPO法人の設立を認証し、市のホームページでも紹介していたため、同市に多数の批判が寄せられたことで大きなニュースになりました。
他にも、「NPO法人○○」というのはあくまでも外面(そとづら)であり、実態としては犯罪組織が立ち上げた詐欺会社だったという事件も過去に起きています。
つまり、非営利性という社会的に好感を持たれやすいNPO法人格を隠れ蓑に法人を立ち上げ、やっていることの実態としては営利目的の事業や犯罪だったという事件が起きているということです。
なぜNPO法人が隠れ蓑として悪用されるのか?
NPO法人が反社会的勢力や犯罪組織の隠れ蓑として使われてきた理由として、NPO法人の設立は認証制度に基づいているからというものが挙げられます。
つまり、基本的には法律によって定められた書類を所轄庁に提出さえすれば、誰でもNPO法人を設立することができてしまう、ということです。
僕自身もNPO法人を設立したことがあるのでわかりますが、すべての書類を用意することは大変ではあるものの、時間をかければ誰にでも作成することはできます。
また、最初の資本金も必要ないため、株式会社と比べても設立のハードルが低いのがNPO法人です。
ネットで探せば書類の雛形もいくらでも見つけられるため、NPO法人の知識が全くない人でも、書類を用意することは決して不可能ではありません。
また、NPO法人を認証する作業も基本的には役所仕事のため、必要な書類がちゃんと用意されていれば却下されることも少ないです。
実際にNPO法人の認証率は平成30年では97.2%となっており、この数値からも「書類さえ用意できたらNPO法人として認証してもらえる」ということがわかるかと思います。
悪いのはNPO法人を悪用する反社会的勢力
NPO法人が隠れ蓑として使われた事件がニュースになると「NPO法人ってなんか怪しい」と感想を抱く人もいるかもしれませんが、悪いのはNPO業界ではなく、NPO法人を悪用する犯罪組織の連中です。
さらには実態を調査することなく、簡単にNPO法人格を認証してしまった役所の人間に責任があります。
大半のNPO法人は貧困や格差、人権、環境問題など、社会問題を解決することを目指して真摯に活動に取り組んでいます。
また、特に2000年代から2010年代前半にかけてNPO法人が隠れ蓑として悪用された事件が多発したことから、近年はNPO法人の認証制度も厳しくなっていると聞きます。
NPO法人による事件が何か一つ起きたとしても、その一つのニュースでNPO業界全体に対する印象を決めてしまうのではなく、背景にある原因に目を向けたり、一つひとつのNPO法人が信頼できるのかどうかをチェックしてください。
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それでも心配な人は認定NPO法人を応援しよう
「社会問題に取り組むNPO法人に寄付したいが、自分のお金が反社会的勢力に流れることだけは絶対に避けたい。」
そんな方は、NPO法人の中でも「認定NPO法人」に寄付することをおすすめします。認定NPO法人とは、簡単に説明するとNPO法人のレベルアップしたバージョンです。
認定NPO法人になるためには、例えば毎年安定して3000円以上の寄付を100人以上から受け取っているなど、以下8つの厳しい要件が課されています。
- パブリック・サポート・テスト(PST)に適合すること(特例認定は除きます。)
- 事業活動において、共益的な活動の占める割合が、50%未満であること
- 運営組織及び経理が適切であること
- 事業活動の内容が適切であること
- 情報公開を適切に行っていること
- 事業報告書等を所轄庁に提出していること
- 法令違反、不正の行為、公益に反する事実がないこと
- 設立の日から1年を超える期間が経過していること(「内閣府NPOホームページ」より引用)
日本にはNPO法人は5万団体以上ありますが、認定NPO法人の資格を持っている団体は実にたったの2%です。
認定NPO法人は税制上も優遇されており、認定NPO法人への寄付は寄付控除として認められるため、寄付する側にもメリットがあるのが特徴です。
NPO側からすれば「自団体への寄付は控除になります」と宣伝できるため、多くのNPO法人は認定資格を取ることを目標にしています。
ですが、先ほども述べたとおり認定NPO法人として活動している団体は全体の2%しかありません。それだけ認定NPO法人になるのは難しいのです。
そのため、寄付先として候補にしているNPO法人が「認定NPO法人格」まで持っていたら、その団体は社会的に信用されていると考えてもらって差し支えありません。
さいごに
NPO法人が隠れ蓑として使われているとはどういうことか、詳しく解説をしました。
反社会的勢力がNPO法人を悪用したり、NPO法人が不祥事を起こした時にはメディアがこぞって叩きますが、ニュースの見出しが「NPO法人 不祥事」となっているのを見ると悲しくなります。
だって、どこかの会社が不祥事や犯罪を起こしても、「株式会社 不祥事」なんて報道はされませんよね。
一つの事件でNPO業界に対する印象を決めてしまうのではなく、正しい情報に目を向けるようにしてください。
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