原貫太の国際協力ブログ

フリーランス国際協力師原貫太のブログです。国際協力やNPO・NGO、アフリカ、社会問題などのテーマを中心に解説しています。

国際協力の失敗事例から考える、途上国支援をやる人が守るべき4つのコト

「国際協力の失敗事例には、どんなものがあるのだろう?」

「途上国支援をする際には、どんなことに気をつけるべきだろう?」

 

こんな疑問を持つ方向けに、国際協力業界で有名なプロジェクトの失敗事例と、その失敗事例から考える「国際協力をやる人が守るべき4つのコト」について解説します

 

フリーランス国際協力師の原貫太です。大学在学中から国際協力活動をはじめ、NGOスタッフとしてアフリカでの支援活動に取り組んできました。

 

2019年からはフリーランスに転向し、個人で国際協力に関わっています。

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NGO職員としてアフリカの難民支援から聞き取り調査を行っていた時の様子

 

途上国支援の経験だけではなく、国際協力に関する様々な書籍を読んで得た知識も踏まえながら解説します。

 

 

国際協力の失敗事例3選

まず始めに、国際協力業界でも有名な失敗事例を3つ紹介します。

 

一つ目と二つ目の失敗事例は、山本敏晴さん著作『国際協力をやってみませんか?』を参考にしています。こちらの書籍もあわせて読んでみてください。

 

 

カンボジアで井戸を掘ったらヒ素が混入、現地住民が亡くなる

国際協力の失敗事例

 

この事件は非常に有名なので、聞いたことある人も多いかもしれません。2000年代に大きな問題になった国際協力の失敗事例です。

 

場所はカンボジア。アジア最貧国の一つとして、多くの国際協力団体が支援プロジェクトで現地に入っています。

 

特に2000年代は日本の大学生やフリーターでも気軽に参加できる「お試し国際協力」が勃興し、多くのボランティアがカンボジアに渡って活動しました。

 

その中には、飲み水の足りない地域で井戸を建設し、現地の人たちに綺麗な水を届けようと活動する大学生ボランティアも数多くいました。

 

カンボジアのような貧しい国では、日本のように上水道が整備されておらず、現地の人たちは川や池まで水を汲みに行く必要があったり、汚れた水をろ過することなく飲んだりしていました。

 

そのため、外国からやってきたボランティアが村の中に井戸を掘り、飲み水を手に入れられない現地の人たちに綺麗な地下水を飲んでもらおうとするプロジェクトが行われていたのです。

 

一見すると、良い国際協力活動に思えるかもしれません。しかし、悲劇は起こってしまいました

 

井戸水から汲み上げた水を飲んだカンボジアの人たちが相次いで体調を壊し、中には亡くなってしまう人も出たのです。

 

その原因は、地下水に含まれていた「ヒ素」という有害な化学物質でした。ヒ素入りの地下水を飲んだ現地の人たちは相次いで神経障害や皮膚病になり、最悪のケースでは亡くなる人も出てしまいました。

 

被害を受けた現地の人たちの中には、まだ幼い子供も含まれていたと聞きます。その子供が大人になった今、健康に暮らしているかどうかはわかりません。

 

このような井戸を掘るプロジェクトをやる場合、本来であれば井戸から水が出た後に水質調査の専門家を派遣し、水の中にヒ素や水銀などの化学物質が含まれていないか調査する必要があります。

 

しかし、ただのボランティアでカンボジアに来ている大学生やフリーターには、そういった専門知識はありません。井戸を掘っただけで活動を終了し、現地を後にしてしまっていたのです。

 

この失敗事例は日本でも大きな話題になり、2008年にはNHKのクローズアップ現代でも特集されています。

善意の井戸で悲劇が起きた - NHK クローズアップ現代+

 

日本政府がインドネシアに水力発電ダムを建設し、環境問題と社会問題が発生

国際協力の失敗事例

 

二つ目は日本政府が行ったODA(政府開発援助)の失敗事例です。

 

ODAとは、政府と政府の間で行われる国際協力です。この場合、インドネシア政府と日本政府の間で取り決めが行われ、プロジェクトが実施されます。

 

こういったODAでは、まずインドネシア政府の役人から日本側に対して「自国の産業を発展させるために電気が必要だから、水力発電のダムを建設してほしい」と依頼が入ります。

 

日本側が承諾すると、ダム建設のためのプロジェクトが正式に始まります。

 

しかし、ダムを建設するためには、そこにある村をどけたり、森を切り拓いたりする必要があります。

 

このプロジェクトでは地元の人たちの強制退去、またダム建設に伴う環境破壊が大きな問題になりました。

 

ある日、インドネシアの軍隊がダム建設の予定地にやってきて、地元の人たちに移住承諾書にサインをするよう脅します。現地の人たちは殺されるのは嫌だし、移住した後の仕事は保証されていると聞いていたので、承諾書にサインしました。

 

しかし、実際に村人たちが移住をすると、そこに仕事はありませんでした。ダム建設は政府間で決まったことです。地元で暮らしていた市民の声は全く反映されていませんでした。

 

また、ダムを建設するためには山を拓いたり、森を破壊したりしなくてはなりません。日本政府がODAによってダム建設をしたことで、元々そこに生息していた多様な動植物を死滅に追いやるという環境問題も発生してしまったのです

 

ODAは日本国民が払った税金によって行われているため、間接的には私たち日本人もこの失敗に加担していたと言うこともできます。

 

大学生がカンボジアに小学校を建設するも、維持できずに廃校

国際協力の失敗事例

 

三つ目も、大学生がカンボジアで行った国際協力の失敗事例です。なお、ここで紹介する事例は一つの例ですが、同様の失敗事例は他の途上国でも多数起きていると聞きます。

 

今から約10年くらい前、日本の大学生の間で海外ボランティアが一大ブームになった時期があります。向井理さん主演の映画『僕たちは世界を変えることができない』がヒットしたことも一因のようです。

 

海外ボランティアの中で最も人気があったのが、カンボジアでの小学校建設です。国際協力に興味ある人なら、一度くらいは耳にしたことがあるかもしれません。

 

実は小学校を建設すること自体は、それほど難しいことではありません。お金にして300万円くらいを集め、現地の有力者とつながり、建設会社を見つけることができれば、小学校の建物という「ハコ」を建設することはできます。

 

そのため大学生だけではなく、多くの日本人がボランティアとしてカンボジアでの小学校建設に関わりました。

 

しかし、建物自体は建設することはできても、その後に小学校を運営し続けるのは簡単なことではありません。

 

そこで働くことになる学校の先生を教育したり、毎年子どもたちに配布する教科書や文房具を用意したり、老朽化していく建物を適宜メンテナンスしたりしなければ、学校の運営を維持することはできません。

 

それに、外国人のボランティアが現地にずっと居続けることは難しいですから、いずれは学校運営のバトンを現地の人たちに渡す必要もあります。

 

しかし、中には学校の建設をすることだけが目的で、その後の運営までは考えていなかったという大学生も多かったようです。

 

もちろん現地の人たちのためを思って国際協力を始めた人もいますが、中には「自分探しのために」「何となく面白そうだから」といった動機で活動を始めた人もいます。

 

結果として数年後には学校の運営が立ち往かなくなり、あえなくして廃校。通っていた子どもたちは学校から追い出され、生活リズムが損なわれる問題が起きました。

 

それまでは小学校に通い、将来の夢のために勉強を続けていたのに、ある日突然学校から放っぽり出される。明日から何をすればいいのか分からない。

 

現地の子どもたちからすれば、たまったものではありません。こういった失敗事例も、特にボランティアが始めた国際協力プロジェクトでは大きな問題になってきたのです。

 

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途上国支援をやる人が守るべき4つのコト

紹介した3つの失敗事例から、国際協力に取り組む僕たちはどんな学びを得られるか?外国人が発展途上国で支援活動に取り組む際、守るべき4つのコトを解説します。

 

現地の人たちの主体性を尊重する

外国人が国際協力を行うなら、まず第一に途上国に暮らす現地の人たちの主体性を尊重することが大切です。

 

「社会問題解決の主人公は、現地の人たち。」この一言に尽きます。

 

カンボジアの井戸掘りでのヒ素混入事件も、小学校建設の失敗プロジェクトも、いずれも「プロジェクトの主役は誰だったのか?」という視点に立って考えると、現地の人たちではなく外国人が主役になっていたケースが多いです。

 

「貧しい人たちのために何かしたい」という善意自体は素晴らしいものだと思います。

 

しかし、その裏側には「何か善い行いをして、自己満足に浸りたい」「自分探しのために海外ボランティアをやりたい」といった隠れた動機もあったのではないかと感じます。

 

現地の人たちを主役にして支援活動を計画・実行することができていれば、自分たちのプロジェクトをもっと客観視し、冷静に進めることができたはずです。

 

二つ目のODAによる水力発電ダムの建設も、インドネシア政府の国益ばかりに気が取られており、地元で暮らす現地の人たちのことは考えられていませんでした。

 

例えばダム建設予定地に暮らす地元の人たちに聞き取り調査をしたり、ダム建設に向けた会合に地元住民の代表を呼んだりしていれば、将来的にどういった問題が起きるリスクがあるのか、事前にある程度は予測できたはずです。

 

国際協力をやろうとしている外国人ではなく、その国の政府でもなく、あくまでも現地に暮らしている人たちの主体性や意思を尊重することが大切です。

 

国際協力の専門知識を身に着け、必要であれば専門家に頼る

善意だけで社会を良くすることはできません。社会問題を解決するためには専門的な知識も必要になります。

 

カンボジアの井戸掘りプロジェクトも、小学校建設のプロジェクトも、どちらも善意によって行われた活動であることは間違いありません。

 

しかし、そういった善意が現地の人たちを苦しめることに繋がっては、非常にもったいないです。良かれと思って国際協力を行っていると、そこから生まれる負の結果にも気づきにくく、盲目的な活動になってしまいます。

 

国際協力は、熱い心だけで関わることはできません。時には冷たい頭で冷静に活動を客観視し、必要であれば専門的な知識を身に着けたり、専門家から話を聞いたりする姿勢も必要です。

 

僕自身はアフリカで一人で支援活動に関わっていますが、何か新しくプロジェクトを始める際には経験豊富なNGO職員に相談をしたり、同様のプロジェクトを行ってきた人に話を聞いたり、時には大学教授に会いに行くようにもしています。

 

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長く現地に関わっていくだけの覚悟を持つ

正直に告白すると、僕も大学生の時に学校建設のような「ハコモノ・プロジェクト」をやろうとしていた時期がありました。

 

場所はバングラデシュ。路上で生活するストリートチルドレンが生活できる施設を建設しようと考えていたのです。

 

しかし、現地に20年以上暮らす日本人の方から掛けられた言葉で、冷静になることができました。

 

「あなたは大学を卒業した後も、一生かけてその施設の運営に関わっていくだけの覚悟がある?」

 

国際協力のプロジェクトは「施設や学校が建設できたら、それで終わり」ではありません。そこに通う子供たちが教育を受け、自立し、社会の中で問題なく生活できるようになって初めて、そのプロジェクトは成功したということができます。

 

当時の僕は、大学卒業後もその活動を続けていくだけの覚悟がありませんでした。結果的に、ストリートチルドレンのための施設を建設する計画は白紙に戻したのです。

 

現在僕は東アフリカのウガンダ共和国で、現地の子どもたちに手洗いの方法を教えたり、地元で手に入る素材を使って製作できる布ナプキンの作り方を教える活動をしています。

 

これまでウガンダには7回足を運んできました。この記事を書いている2020年11月現在はコロナの影響で日本にいますが、状況が落ち着いた後、また現地に戻るつもりです。

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国際協力の活動は、一朝一夕に結果が出るものではありません。一時的に自分たちが気持ち良くなって終わるのではなく、細く、長く関わり続けていくことが大切です。

 

その覚悟がないのであれば、中途半端な気持ちで国際協力に携わるべきではありません。時には「やらない」ことの方が、最終的には現地の人たちにとってプラスになることもあるのです。

 

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現地の文化や宗教、生活を深く理解する

先進国と途上国では、文化や宗教、生活習慣が大きく違うことがあります。日本人が善かれと思って始めた活動でも、現地の人にとっては「ありがた迷惑」になってしまう場合もあります。

 

その意味でも、何かしらの国際協力活動を始めるのであれば、まずは最低でも3ヶ月くらいは現地で生活するべきだと僕は考えています。

 

現地の生活に溶け込む努力をして、現地の友人を作り、現地の文化や宗教、生活スタイルを理解する。その上で国際協力のプロジェクトを始めた方が現地の課題にも気づきやすくなりますし、失敗するリスクも減らせます。

 

さいごに

国際協力の失敗事例をもとに、国際協力をやる外国人が気をつけるべきことを整理しました。

 

こういった知識や考え方は、本や教科書を読むだけではなかなか身に着きません。僕は大学在学中にNGOでインターンさせてもらう中で学ぶことができました。

 

国際協力をやりたいと考えている人は、過去の失敗事例からの学びも得ながら、実際に現地に足を運び、まずは現地で生活してみること、そしてプロとして働く人たちの下で学ばせてもらうことから始めましょう。

 

また、本や教科書では手に入らない「ナマ」の情報に触れるためにも、積極的にイベントや活動報告会に参加し、実際に活動する人たちから話を聞く機会を作ってください。

 

僕が運営しているオンラインサロンでも月4回勉強会を行っているので、一つの選択肢として検討してくれたら嬉しいです。

 

 

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