「テレビや新聞で目にするNGOとは何だろう?NGOとは何か、その歴史や活動内容について詳しく知りたい。」
こんな悩みを解決します。
フリーランス国際協力師の原貫太です。NGOのスタッフとして、アフリカで難民支援活動に取り組んでいました。
NGOについて全く知らないという方でも、この記事を読めばNGOの全貌が理解できるはずです。
NGOの定義や歴史、具体的な活動内容まで、NGOに関する基礎知識を解説します。
YouTubeでも解説しました。動画のほうが分かりやすい方はこちらをご覧ください。
NGOとは?
NGOとは、政府や国際機関とは異なる民間の立場から、貧困や紛争、環境問題など、国際的な課題の解決を目指して活動する非営利団体のことです。
NGOは利益を主な目的にせず、世界各地で国際協力活動に取り組んだり、国際機関や政府への政策提言活動に取り組んだりしています。
NGOは英語のNon Governmental Organizationの頭文字を取った略称で、日本語では非政府組織と呼びます。
NGOの条件は、大きく3つです。
①国際協力活動に取り組んでいること…貧困問題や格差、紛争、人権など、地球規模の課題解決を目指して国際協力活動に取り組んでいます。
➁民間の団体であること…国際協力に取り組む組織には国際機関や政府など様々な組織がありますが、NGOは政治的な利害に囚われず、民間の立場から活動をします。
➁利益を主な目的にしていないこと…利益を追求することが第一の企業とは違い、社会課題の解決がNGOの最も重要なミッションです。
NGOの歴史は?
NGOの歴史を、世界と日本にわけて簡単に解説しておきます。
世界のNGOの歴史を振り返ると、今から約150年以上前の19世紀中頃、1859年まで遡ります。
当時フランスとオーストリアの間で、ソルフェリーノの戦いという4万人以上の死傷者を出す戦争が勃発しました。
このソルフェリーノの戦いにおいて、スイス人のアンリー・デュナンという人が「敵味方に関係なく、戦争に傷ついた人たちを助けよう」という支援活動を始めます。
この活動こそが、世界最古にして最大のNGOの一つである『赤十字』(Red Cross)の元になりました。
日本ではそこから約100年後、1970年代後半から1980年代前半にかけて国際協力に取り組むNGOが数多く誕生します。
日本のNGO誕生の背景にあったのが、インドシナ難民危機です。
インドシナ難民危機とは、カンボジアやベトナム、ラオスなど東南アジア諸国が社会主義国家になった際、弾圧・迫害された人々がボートピープル、つまり船に乗った難民となって国外に流出した国際問題です。
ボートピープルは日本にも多数やってきましたが、その難民を救出・支援することを目的に、日本でも多数のNGOが設立されました。
また、日本では1998年に特定非営利活動促進法(通称NPO法)が制定されたことも、NGO活動を後押しする流れになりました。
それまで多くのNGOは任意団体として活動していましたが、NPO法が制定されたことによって、NGOは市民権を得たのです。
そして現在の日本には、400以上のNGOが存在すると言われています。
NGOとNPOの違いは?
NGOはNon Governmental Organizationの略称で「非政府組織」と訳すのに対し、NPOはNon Profits Organizationの略称で「非営利組織」と訳します。
NGOとNPOは似ている言葉同士ですが、明確な違いが現れる対立概念ではありません。
非政府組織を意味するNGOが対立する言葉は「政府組織」(Governmental Organization)で、非営利組織を意味するNPOが対立する言葉は「営利組織」(Profits Organization)だからです。
日本にはNGOの登録制度がありません。そのため、国際協力活動に取り組むNGOが日本で法人として活動する場合、NPO法人格を取得していることがほとんどです。
簡単に言えば、NGOでもあり、NPO(NPO法人)でもある団体が存在するということです。
NGOとNPOの違いをさらに詳しく理解したい方は、こちらの記事を読んでみてください➡NPOとNGOの違いを日本一わかりやすく解説【間違った説明が多すぎる!】 - 原貫太の国際協力ブログ
NGOの活動内容は?
NGOが活動する分野は多岐に渡っており、例えば
- 教育
- 環境保護
- 開発
- 人権
- 平和構築
- 紛争解決
などの分野で国際協力活動を実施しています。
具体的には、資金援助や物資供与、人材育成などを通じ、難民や貧困層、障碍者など、途上国の社会的弱者が抱えている様々な課題を解決することがNGOの役割です。
例えば僕が働いていたNGOテラ・ルネッサンスは、アジアやアフリカの途上国にて、職業訓練や物資供与を通じて地雷や紛争被害者の支援を行っています。
また、NGOは発展途上国での国際協力活動以外にも、アドボカシーと呼ばれる政府や国際機関への政策提言活動も行っています。
さらに国内では、教育機関などでの講演活動やイベントを通じて、国際問題に対する関心を喚起したり、国際協力に携わる人材育成を行ったりもしています。
代表的なNGOの例は?
小さいNGOから大きなNGOまで含めると、世界には数十万とも数百万とも言われる数のNGOがあります。
ここでは代表的なNGOとして、海外発のNGOと日本発のNGOを5つずつ紹介します。
国境なき医師団
世界で最も有名なNGOは国境なき医師団でしょう。
国境なき医師団は、1971年にフランスの医師やジャーナリストによって設立されたNGOです。紛争地での緊急支援・医療支援を主な活動としており、1999年にはノーベル平和賞も受賞しました。
国境なき医師団で看護師を務める白川優子さんが書いた記事も、ぜひ読んでみてください。
➡白川優子が語る、人道支援の道を目指す人が今から取り組むべき5つのこと - 原貫太の国際協力ブログ
赤十字国際委員会
世界最古にして最大のNGOが赤十字国際委員会です。赤十字国際委員会も国境なき医師団と同じように、紛争地での人道支援を主な活動としています。
僕も大学生の頃、赤十字国際委員会の駐日事務所でインターンをしていました。
オックスファム
貧困や格差の問題を無くすため、世界90ヶ国以上で活動を展開するNGOです。
第二次世界大戦下の1942年にイギリス・オックスフォード大学の教育関係者や社会活動家らが設立した団体で、当初は「オックスフォード飢餓救済委員会」と呼ばれていました。
1967年に名称をオックスファムに変更しています。
セーブザチルドレン
1919年にイギリスで設立されたNGOです。第一次世界大戦によって荒廃したヨーロッパにて、子どもたちの支援活動を行うためにイギリス人女性エグランタイン・ジェブによって創設されました。
戦争や貧困、自然災害などによって苦しむ子どもたちを支援するため、現在は約120ヶ国で国際協力活動を行っています。
ワールドビジョン
1950年にアメリカ人宣教師のボブ・ピアスによって設立された国際協力団体です。第二次世界大戦後、戦争によって荒廃した中国を訪れたボブ・ピアスが、一人の女の子の支援を始めたことから活動が始まりました。
緊急人道支援・開発援助・アドボカシーの3つを柱に、現在は世界約100ヶ国で活動をしています。
★関連記事★
ワールドビジョンとは?寄付して大丈夫?元NPO職員が日本一わかりやすく解説 - 原貫太の国際協力ブログ
難民を助ける会
1979年に日本で設立されたNGOです。日本のNGOの中では最も歴史あるNGOの一つ。緊急支援や地雷対策、感染症対策、国際理解教育の普及を中心に活動しています。
シャプラニール
1972年に日本で設立されたNGOで、バングラデシュ・ネパールの貧困問題に取り組むNGOです。シャプラニールとはバングラデシュの言葉・ベンガル語で「睡蓮の家」を意味します。
日本国際ボランティアセンター
1980年にインドシナ難民の支援をきっかけに日本で設立され、現在はアジア、アフリカ、中東、日本の震災被災地で活動する国際協力NGOです。
かものはしプロジェクト
子どもが売られない世界を作るため、インドやカンボジアなどで人身売買の問題に取り組むNGOです。2002年に設立されました。
テラ・ルネッサンス
平和教育・地雷・小型武器・子ども兵の問題に取り組むNGOです。2001年に当時立命館大学の学生だった鬼丸昌也氏によって設立されました。
NGOとODAの違いは?
NGOとODAは、よくセットで暗記させられます。
NGOとODAの違いを簡単に説明すると、NGOは市民と市民の間で国際協力活動が行われるのに対して、ODAは政府と政府の間で国際協力が行われます。
ODAはOfficial Development Assistanceの頭文字を取った略称で、日本語では政府開発援助と呼びます。
NGOは民間の資金によって国際協力活動が行われる一方、ODAでは政府の資金を使って、外務省やJICA(国際協力機構)が途上国への援助や国際協力を実施します。
NGOの収入源は?
NGOの収入源は多岐に渡りますが、主には以下の4つです。
- 会費…NGOの正会員から集める年会費・月会費など
- 寄付…マンスリーサポーターやクラウドファンディングを通じて集める寄付
- 事業収入…講演や物販などの事業を通じて得る収入
- 助成金…財団やJICAなどから得られる助成金
外務省とJANICが公開している「NGOデータブック2016」によると、多くのNGOの収入源は、約半分が寄付金からの収入になっています。
また、同じく「NGOデータブック2016」によると、調査した312団体のうち資金規模が1000万~2000万円未満のNGOが58団体、1000万円未満のNGOが103団体です。
つまり日本のNGOの半分以上は、年間の収入規模は2000万円以下なのです。
「NGOデータブック2016」より引用
NGOは給料出る?
NGOの活動はボランティアだと考えている人がいますが、正職員になれば給料はちゃんと支払われます。
日本のNGOは比較的安月給ではありますが、海外のNGOだと月収100万円以上もらえる団体もあります。
日本のNGOは、その多くが資金不足の問題に直面しています。そのため収入の観点から、結婚や子育てを機に一般企業に転職する人が多いという課題を抱えるNGOは多いです。
NGOの給料事情について知りたい方は、こちらの記事を読んでみてください。
➡NGOの給料は341万円。そのお金はどこから出るの?元NGO職員がぶっちゃける
まとめ
NGOについて、できる限り簡単に解説してみました。
国際協力をする組織には国連やJICAなど様々な組織がありますが、NGOの特徴は政治的利害に翻弄されることなく、自分たちのビジョンやミッションを軸に国際協力活動をできる点です。
僕のブログではNGOに関する記事を多数書いていますので、他の記事も読んでみてください。
こちらの記事もよく読まれています。あわせてご覧ください➡NGOってどんな仕事してるの?具体的な仕事内容を元NGO職員が教えます - 原貫太の国際協力ブログ
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