第二次世界大戦以降に起きた紛争で、最も多くの犠牲者を出している紛争は、どの国で起きているものかご存じだろうか。
シリア、イラク、アフガニスタン、パレスチナ、ウクライナ…。そんな答えが頭に浮かんだかもしれない。
正解は、コンゴ民主共和国。第二次世界大戦以降に起きた紛争、また今も戦争をしている国としては最多である、600万人以上の犠牲者を産み出している。
多くの人にとっては、意外な答えだったかもしれない。なぜなら、「数字」に繋がらないコンゴ紛争の惨状が日本で報じられることなど、ほとんど無いからだ。
コンゴの避難民は世界最多
コンゴ民主共和国では紛争や武装勢力の影響によって、昨年だけでも170万人が避難民となっている。ノルウェー難民評議会は先月6日、「これは巨大危機だ。人々が暴力から逃げるそのスケールはとてつもなく、シリアやイエメン、イラクを凌ぐペースだ」と発表している。コンゴでは昨年、平均して毎日5,000人が家を追われたことになる。
UNICEF(国連児童基金)は先月12日、コンゴ民主共和国南西部カサイで、5歳以下の子ども40万人以上が深刻な栄養失調状態にあり、緊急支援が行われなければ2018年の間にも亡くなる恐れがあると警告した。
ユニセフ・コンゴ民主共和国事務所のタジュディーン・オイウェイル(Tajudeen Oyewale)代表代理は、「何か月にもわたり多くの家族が厳しい避難生活を強いられていることによって、カサイ地方の深刻な栄養失調や不安定な食料供給がもたらされている」と述べている。
性暴力が横行するコンゴ東部
南西部カサイの治安が悪化する一方で、コンゴ東部は「女性にとって世界最悪の場所」と称されることもある。
コンゴ紛争では、深刻な数の「女性に対する性的暴力の被害」が報告されている。国連人口基金によれば「1998年以降、推定20万人の女性と少女が被害を受けた」と言われる。
成人女性だけでなく、中には幼い女の子までもが対象になることもある。
コンゴの人道危機は中東よりも深刻
2018年に入り、コンゴでは1300万人以上もの人が緊急支援を必要としており、昨年の同じ時期より約600万人も多くなっている。コンゴでは、2016年12月までに退陣する予定だったカビラ大統領に対する抗議活動が度々起きており、首都キンサシャから離れた地域でも武装勢力が跋扈する原因となっている。
先月6日にBBCが報じた「DR Congo displacement crisis 'worse than Middle East'」(コンゴ民主共和国の避難民危機は"中東よりもさらに悪い")は、この国の惨状がいかに厳しい状況にあるか、いかに世界から関心を向けられていないかを物語っている。
シリアやイラクで続く紛争がメディアを通じて私たちに届けられる一方、これほどの紛争が今なお続いているにもかかわらず、コンゴ紛争が取り上げることは少ない。日本においては、この紛争の存在すら知らない人がほとんどだろう。
もしかしたら、「コンゴ民主共和国」という国自体もそれほど知られていないかもしれない。
かつてノーベル平和賞受賞者のエリ・ヴィーゼル氏は、「愛の反対は憎しみではなく、無関心だ。」と言った。2018年、コンゴで今も起きている人道危機に目を向けてみてほしい。