原貫太の国際協力ブログ

フリーランス国際協力師原貫太のブログです。国際協力やNPO・NGO、アフリカ、社会問題などのテーマを中心に解説しています。

世界中の戦争をなくすには?方法は一つしかない【国連ではダメです】

「なぜ人間同士は争い続けるのだろう?」

「世界から戦争をなくすためには、どうすればいいのだろう?」

 

こんな疑問にお答えします。

 

フリーランス国際協力師の原貫太です。これまでアフリカの難民をはじめ、戦争によって傷ついた人たちの支援活動を続けてきました。

戦争をなくすには

難民の女性から話を聞く原貫太

 

戦争には資源争いや政治思想の衝突など様々な原因があるため、戦争をなくす方法を考えるのは決して簡単ではありません。

 

しかし、世界中のあらゆる戦争をなくす方法があるとしたら、イギリスの哲学者ホッブズが唱えた『社会契約説』が参考になります。

 

この社会契約説から考えると、世界中の戦争をなくすために必要なのは、国家権力をも凌駕する圧倒的な力を持った支配者の存在です。

 

なぜ人間は同じ人間同士で争ってしまうのか?世界中の戦争をなくすためにはどうすればいいのか?

 

人類の歴史を紐解きながら、世界から戦争をなくす方法を考えてみましょう。

 

 

YouTubeでも解説しました。動画のほうが分かりやすいかもしれません。

 

人類は戦争ばかりしてきた

私たち人類は、戦争ばかりしてきました。そのことは歴史が既に証明しています。

 

人類史上最悪の悲劇と言われる第二次世界大戦では、当時の世界人口の約2.5%にあたる8000万人以上が犠牲になったと言われています。

 

第二次世界大戦のような悲劇を二度と起こさないために「国連」が作られるなど、世界では戦争をなくすために様々な取り組みが行われてきました。

 

それにも関わらず、第二次世界大戦が終わった後も朝鮮戦争やベトナム戦争、湾岸戦争、イラク戦争など、国家と国家による戦争は何度も生じています。

 

直接的な武力衝突は起きなかったものの、アメリカとソ連の間では約50年にわたって冷戦が続き、世界中で様々な代理戦争も勃発しました。

 

冷戦終結後は国家間での武力衝突は減った一方、一つの国家内における戦争、つまり内戦の数が増加傾向にあります。

 

20世紀以降の歴史を振り返るだけでも、人類は同じ人間同士で、数え切れないほど戦争をしてきたのです。

 

なぜ人間は戦争を起こすのか?

戦争をなくすには

 

なぜ人間は戦争を起こしてしまうのか?戦争の根本的な原因を考えるため、イギリスの哲学者ホッブズが唱えた説を紹介します。

 

ホッブズが生きた17世紀という時代も、ヨーロッパは多くの戦争に見舞われました。

 

例えば1618年~1648年には「30年戦争」という、同じキリスト教を信仰する人間同士で争う戦争が勃発します。

 

30年戦争はヨーロッパを舞台にして起きた宗教戦争ですが、ドイツの人口の約20%を含む800万人以上の死者を出し、人類史上最も破壊的な戦争の一つとなりました。

 

ホッブズは戦争が起きる根本的な原因として、以下のような主張をしています。

 

人間とは本来自己中心的な生き物であり、極悪な生き物だ。ゆえに彼らを放置しておくと、自分の欲望のままに利益を求め、人間同士で争いを始めてしまう。

 

力を持った支配者のいない状況、自然状態では、人間という生き物はその自己中心性ゆえに、自らの利益のため戦争を始めてしまう。

 

つまり、「万人の万人に対する闘争」になるとホッブズは主張したのです。これが、人間という生き物が争い続ける根本的な原因だと彼は考えました。

 

戦争をなくすための社会契約説

国家や社会の存在しない自然状態では、人間は自らの利益のために戦争を始めてしまう。

 

だからこそ、その戦争を終わらせるためにホッブズが主張したのが、「社会契約説」でした。

 

端的に言えば社会契約説とは、「なぜ国家には支配者がいるのか?」を説明するための考え方です。

 

人間という生き物は自己中心的な生き物で、国家や社会が存在しない自然状態では戦争を始めてしまう。

 

だからこそ、人間たちはその争いに歯止めをかけ、互いに共存するために架空の支配者を創り出した。

 

その支配者こそが国家なのだと、ホッブズは主張しました。

 

国家という絶対的な権力者を作り出し、架空の支配者であるその国家に服従することで、人々は戦争をする権利を放棄する。

 

それによって人間が個人同士で争うことはなくなり、世の中から戦争が無くなるとホッブズは考えました。

 

人間は国家という強大な権力、いや恐ろしい怪物を作ることによって人々はそれにひれ伏し、他者と争う権利を放棄する。

 

圧倒的な力を持つ国家という怪物のおかげで、人々は安全に生活を送ることができる。世界から人間同士の戦争は無くなり、代わりに平和を手に入れることができる。

 

ホッブズは国家という絶対的な権力、絶対的な支配者を聖書に登場する怪物「リヴァイアサン」にたとえ、その著書『リヴァイアサン』で社会契約説を唱えました。

 

人間は国家という名の絶対的な力を持つ怪物「リヴァイアサン」を作り出し、その怪物に服従することで、安心して生活できる社会を築こうとしたのです。

 

なぜ現代の戦争はなくなっていない?

戦争をなくすには

 

ホッブズの社会契約説は、戦争をなくすための理論としては理解できるものの、21世紀を生きる僕たちからすると、このように感じてしまうはずです。

 

「いやいや、国家なんてものがあるから戦争はなくならないんでしょ?」

 

1600万人以上の犠牲者を出した第一次世界大戦でも、8000万人以上の犠牲者を出した第二次世界大戦でも、戦争の主体者となったのは国家です。

 

ホッブズの社会契約説に基づき、現代でも戦争がなくなっていない理由を考えるなら、「国家よりも強い力を持つリヴァイアサンが存在しないから」と説明できます。

 

国家と国家による戦争というのは、要するにリヴァイアサン同士が争っている状態です。

 

国家という名のリヴァイアサンを支配する権力者が今の世界には存在しないからこそ、それぞれのリヴァイアサンは自分の利益、つまり自国の国益のため他国に侵攻し、他国の利益を侵害しようとする。

 

それぞれのリヴァイアサンは、いつ他のリヴァイアサンから攻撃されるかわからないからこそ、互いに身構え、武装していく。

 

これはつまり、自分たちの国がいつ他国から侵略されてしまうかわからないため、軍備を強化し、自分たちが軍備を強化したことでまた別の国が軍備を強化し、また別の国が…と、無限ループを繰り返す今の世界の状況を物語っています。

 

この状況は、国際政治の専門用語では「安全保障のジレンマ」と呼ばれます。A国が軍備を拡張すれば、それに恐れをなしたB国が軍備を拡張し、今度はそれに恐れをなしたA国が軍備を拡張する…という状況です。

 

国際政治における国家と国家が対立する今の状況は、17世紀にホッブズが唱えた「万人の万人に対する闘争」、つまり絶対的支配者がいない自然状態における人間の行動となんら変わりがありません。

 

国家間の戦争を無くすためには、国家というリヴァイアサンすらも恐れおののくような、さらなる最強のリヴァイアサンが必要。

 

国家権力も凌駕する最強の支配者が世界に現れれば、国家間の戦争はなくなる。ホッブズの唱えた社会契約説に基づいて世界から戦争をなくす方法を考えるなら、このように説明することができるのです。

 

国連では戦争はなくせない

戦争をなくすには

 

国連は第二次世界大戦の反省を踏まえて誕生した国際機関だから、国連が国家権力をも凌駕する最強の支配者になり、世界から戦争をなくす役割を担えないのか。

 

そう考えた人もいるかもしれません。

 

しかし、現時点では国連では戦争をなくすことはできません。なぜなら国連は、強制力を持っていないからです。

 

国連とは世界中にある193の国が集まり、解決しなくてはならない世界の問題について話し合いを行って、国連加盟国が守るべきガイドラインを作るのが主な仕事です。

 

国連の話し合いでは、法的拘束力のある条約や議定書が作られることもありますが、基本的には各国が参考にするべきガイドラインに過ぎないため、強制力がありません。

 

そのため、そのガイドラインを守らなくても特に罰則がないというのが、国連の限界です。

 

また、国際政治には「内政不干渉の原則」という考え方があります。

 

内政不干渉の原則とは、国家は国際法に反しない限り、自分たちの国のことは自分たちで決定することができる。

 

他国に干渉されることはないし、同じように他国の決定に干渉してはならないという原則です。

 

内政不干渉の原則があるからこそ、国連は加盟国に命令をすることはできません。これはつまり、国連は各国が従う絶対的な支配者にはなれないことを意味します。

 

さいごに

ホッブズの唱えた社会契約説をもとに、世界から戦争をなくす方法を考察しました。

 

世界から戦争を無くすためには、国家以上の権力を持つ支配者が必要。そのためのアイデアとして、例えば「世界連邦政府」があります。

 

しかし、現実的に世界連邦政府を作ろうとしても、アメリカやロシア、中国などの大国が賛同することは、まずないでしょう。

 

ホッブズの唱えた社会契約説では、世界から戦争をなくす理想的な方法はわかるものの、現実的には様々な制約があると言わざるを得ません。

 

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