原貫太の国際協力ブログ

フリーランス国際協力師原貫太のブログです。国際協力やNPO・NGO、アフリカ、社会問題などのテーマを中心に解説しています。

カンボジアの貧困、何が問題?現地で活動する日本人がわかりやすく解説

フリーランス国際協力師の原貫太(@kantahara)です。今日はカンボジアの貧困について解説する記事を、カンボジア支援の学生団体に所属する上山友梨子さん(@YurikoKamiyama)に寄稿してもらいました。

 

カンボジアが抱える貧困問題の全体的な状況を理解したい人や、貧困によってどんな問題が起きているのか理解したい人におすすめの記事です。

 

 

---

カンボジアの農村部の小学校を支援するNGOを立ち上げ、現地で活動していた上山友梨子と申します!

カンボジア 貧困

 

皆さんはカンボジアと聞くと、どんなことを思い浮かべますか?やはり観光で有名なアンコールワットでしょうか?

 

カンボジアは首都プノンペンを中心に都市部では発展が著しい半面、農村部に足を運ぶと経済的に貧しい現状が広がっています。

 

今回はカンボジアの貧困について、その状況がリアルに理解できる内容をお伝えします。

 

 

カンボジアの貧困、統計的な状況

カンボジアの貧困率は2014年で13.5%で、数にすると約200万人が1日1.90ドル以下で暮らしています。貧困層の90%は農村在住です

 

貧困率や絶対的貧困の定義に関してはこちらの記事をご覧ください

www.kantahara.com

 

世界遺産のアンコールワット周辺を中心に、カンボジアは観光業で著しく経済成長しており、2007年の貧困率47.8%からは大きく改善しました。

 

しかし、人口の28%である約450万人が、経済状況によっては再び貧困に陥る可能性があるという厳しい現状があります。

 

カンボジアの都市部と農村部では貧困はどう違うのか?

カンボジア 貧困

 

カンボジアの都市部と農村部では、そこに存在する貧困にも違いがあります。農村部は医療、教育などの「環境自体」が整っていませんが、都市部では環境が整っているにもかかわらず「貧困層はアクセスできない」という問題があるのです。

 

例として、カンボジアの教育における貧困問題について見ていきましょう。

 

私たちの団体は、アンコールワットがあることでも知られるシェムリアップの中心部から、車で1時間の場所にある農村部の学校で活動していました。そこではサッカーや音楽教育、栄養・衛生教育などを行っています。

 

学校では音楽の授業がなく、子どもたちは楽器を見たことすらないということでした。そのため鍵盤ハーモニカを10台寄付し、弾き方を教えました。子どもたちは音が出るだけで興奮した様子でしたね。

カンボジア 貧困

 

一方、カンボジア都市部の学校に行ってみると、音楽室があり、鍵盤ハーモニカがあまるほどにありました。

カンボジア 貧困

 

カンボジア 貧困

 

このように、カンボジアの農村部では教育の教材が揃っていませんが、都市部では設備が十分に整っている学校もあります。

 

しかし、都市部に住んでいるからと言って、すべての子どもが十分な教育を受けられているわけではありません。例えば夜遅くになると、道端に置いてあるごみ袋をお母さんと一緒にあさる、ボロボロの衣服を来た子どもを見かけることもありました。そういった子どもの多くは学校に通っていません。

 

ストリートチルドレン問題の解説記事はこちらをご覧ください

www.kantahara.com

 

また、医療、衛生面での格差も大きく、都市部の貧困層下位20%の家庭に生まれた子どもは、都市部に住む富裕層上位20%の子どもよりも5歳未満死亡率が5倍以上というデータも存在します。

(参考:Save the Children Japan 母の日レポート 2015「都市部における保健格差」

 

カンボジアでは貧困によってどんな問題が起きているのか?

貧困下にある子どもは、その日の生計を立てるため、まだ幼いうちから働かなくてはいけません。そのため学校に行くことができず、低学歴、読み書きができないなどの問題が生じ、大人になったときにも収入が良い仕事に就くことができないのです

 

そうすると、その子の子どももまた貧困に陥ってしまうという「貧困の連鎖」が起きてしまいます。貧困によってもたらされる負のスパイラルをどこかで断ち切らなければ、たくさんの子どもが苦しむことになるのです

 

★関連記事★

www.kantahara.com

 

現地に行ったからこそ分かる貧困のリアルな実情

カンボジア 貧困

 

カンボジアの村は時間がとてもゆっくりしていて、人も温かく、私の大好きな場所です。「一緒にごはん食べよう!」と、外から来た日本人を温かく迎え入れてくれます。

 

しかし、そこではカンボジアが抱える貧困問題の厳しい現実も目の当たりにしました。

 

下の写真のお母さんは、3人の娘を持つシングルマザーです。家の目の前にある小学校でWFPの給食プロブラムの給食員をしています。毎朝4時ごろから子どもたちのためにスープとごはんを用意する仕事です。

カンボジア 貧困

 

しかし、そこでもらえるのはわずか月収5ドル。

 

WFP給食員としての仕事以外にも、写真のように内職としてかごを編んでいます。どの家に行ってもお母さんたちが編んでいるのですが、1つのかごを編むのに30分はかかるにもかかわわず、20円にしかならないそうです。

 

また、農業の知識がなかったり、水不足であったりするために、主食である米の自給自足も成り立っていません。農村部には雇用がないため、男の子は13歳ごろから都市部やタイへ出稼ぎに行きます。

 

出稼ぎのために教育を辞めざるを得ない場合もあり、カンボジア全土の中学就学率はわずか4割程度です

 

カンボジアの貧困問題に対する私たちの取り組み

カンボジアの農村部の小学校では音楽、体育、行事などがありません。そこで子どもたちに「色々な体験機会を提供し、夢や可能性を広げてほしい」と思い、今年の8月にサッカー、音楽、栄養・衛生教育、文化祭を行いました。

 

カンボジア 貧困

 

これは文化祭で友だちが書道パフォーマンスを披露した後に、子どもたちが筆で「夢」と書いているところです。


この活動は今回が1回目なので、子どもたちに与えられるインパクトの大きさもまだまだ小さいですが、嬉しい成果もありました。両親が出稼ぎに行っていて、おばあちゃんと二人暮らしのため、学校を休みがちになっている女の子が、鍵盤ハーモニカの音に誘われて学校に来てくれたのです。

 

帰国後はMiraicleというNGOを立ち上げて活動しています。「世界中にMiracleを起こす。それをMiraiに繋いでいく。」というミッションを掲げている団体です。


NGO Miraicleでは2020年3月に、日本の大学生を対象とした3つのツアーを予定しています。

 

1.音楽でチャレンジツアー

農村部の小学校で合奏を教え、最後には発表会を開催し、子どもたちの親に見てもらいます。また、子どもたちを都市部のモールへ引率し、先生や警察といった職業しか知らない子どもたちに、色んな職業を知ってもらいたいと考えています。

 

2.サッカーでチャレンジツアー

農村部の小学校3校の子どもたちにサッカーを教え、最後にサッカー大会を開催し、子どもの保護者に観戦してもらいます。サッカー大会の最後には、カンボジアのプロサッカーチーム選手の方々と子どもたちが一緒にプレーをする予定です。

 

3.栄養×国際協力ツアー

栄養改善に取り組みたい日本の学生が将来的に問題に挑める力を養うツアーです。栄養改善に関わる病院などの事業地を訪問し、将来の方向性を定めると共に、農村で栄養教育のプロジェクトのPDCAを回します。

 

ツアーなどを通して子どもたちに夢やきっかけを提供すると同時に、子どもが児童労働に搾取されることなく、教育を続けられる環境をつくりたいです。詳細は私のTwitterでも発信する予定です。

 

 

さいごに

カンボジアは、アンコールワットをはじめ観光業で盛り上がっている反面、いまだに厳しい貧困の現状があります。情操教育が整っていなかったり、家計を支えるために児童労働を行い、子どもが教育を辞めざるを得なかったり、未来ある子どもを取り巻く問題が多いことがご理解いただけたかと思います。

 

国の発展に貢献できるような人材を育成するには、子どもが質の高い教育を受け続けることが必要です。そのため、教育と雇用の両側面からのアプローチが有効だと考えています。

 

私たちの周りに教育、医療、雇用などの環境が整っているのは、たまたま日本に生まれたからであり、カンボジアのような途上国に暮らす子どもが貧困下に置かれているのも、偶然その地に生まれたからだと思います。

 

国際協力は慈善として捉えられがちですが、私たちが住む世界全体の問題であるため、もっと多くの人が身近なものとして関われるようになってほしいです。

 

こちらの記事もあわせてご覧ください

www.kantahara.com