「国際協力を仕事にしたい。国連やJICA以外には、どんな職業があるのだろう?」
「発展途上国で国際協力をするためには、どの職業に就くのがいいのだろう?」
こんな疑問にお答えします。
フリーランス国際協力師の原貫太です。どこの組織にも所属せず、個人でアフリカ支援を続けています。
国際協力にはボランティアではなく、生活するのに十分な収入を得ながら、仕事として携わることもできます。
ただ、国際協力に関わるすべての職業が、発展途上国に滞在して仕事をするわけではありません。
年に数回ある出張ベースで途上国に足を運んだり、日本国内の事務所で一年中働く職業もあります。
国際協力を仕事にする7種類の方法を紹介しつつ、特に発展途上国の現地に足を運んで仕事をするならどの職業がおすすめか、あわせて解説します。
「そもそも国際協力とは何か?」を体系的に説明することが難しい方は、まずは以下の記事を読んでください➡国際協力とは何か?定義から必要性、日本でできることまで世界一分かりやすく解説 - 原貫太のブログ
国際協力の仕事にはどんな種類がある?
国際協力とは、貧困や紛争、環境問題など、地球規模の様々な社会課題を解決することを目指して、国際機関や政府、民間、個人など、あらゆる立場の人々が様々な支援・開発に取り組むことを言います。
国際協力を仕事として持続的に行う場合、7種類の方法があります。
- 国際公務員
- JICA職員
- NGO職員
- 開発コンサルタント会社職員
- フリーランス国際協力師
- 社会的企業
- 企業のCSR担当
国際公務員
国際公務員とは、国際連合をはじめとした国際機関に勤める職員を指します。
例えばユニセフ(国連児童基金)やWFP(世界食糧計画)といった国連機関の名前を聞いたことがある人は多いと思いますが、それ以外にも世界銀行や国際通貨基金といった国際機関の職員も国際公務員です。
国際公務員を目指す場合、各国際機関のホームページに掲載される「空席公募」に書類を応募し、書類選考に通ったら面接審査が行われ、合格すると正式な職員として採用されます。
また35歳以下の人であれば、外務省の国際機関人事センターが実施する「JPO派遣制度」を利用して、国際機関に一定期間勤務することも可能です。
空席公募に応募して国際公務員になる場合も、JPO派遣制度を利用して国際公務員になる場合も、
- 応募するポストに関連する修士号
- 応募するポストに関連する分野での勤務経験
- 英語もしくはフランス語で仕事ができること
この3つが必要最低限の条件になります。国際公務員になりたい方は、こちらの記事もあわせてご覧ください。
➡国際機関で働くためには?必要な資格は3つ【大学でやるべきことも解説】 - 原貫太の国際協力ブログ
JICA職員
JICA(国際協力機構)以外にもJBIC(国際協力銀行)、JETRO(日本貿易振興機構)などの政府機関で職員となり、国際協力に関わる方法です。
政府機関の職員として国際協力に関わる場合、ODAに携わることになります。ODAはOfficial Development Assistanceの略称で、日本語では政府開発援助と呼びます。
日本のODAは基本的にJICAが担当しているため、ここではJICAを例に解説します。
JICAはJapan International Cooperation Agencyの頭文字を取った略称で、日本語では「国際協力機構」と呼びます。日本政府が主に発展途上国を対象に行う政府開発援助を担当しているのがJICAです。
ODAは日本の税金によって実施され、日本政府と途上国政府の間で取り決めが行われた上で、様々な国際協力が実施されます。
例えば東南アジアのインドネシアが、自分たちの国の経済発展のために道路や橋、ダムなどのインフラ設備を建設したいとします。
ただ、インドネシア政府は国の税金や自分たちの技術力だけでは、インフラを建設することができません。
このような場合に、インドネシア政府が日本政府に協力を仰ぎ、日本政府がその要請を受諾すると、日本⇔インドネシア間でのODAが始まります。
日本政府が途上国にODAを実施する場合、資金を無償・有償で援助する以外にも、お金は出さないけど専門家を派遣することで技術的なサポートをすることもあります。
その場合、JICA職員やインフラの専門家、さらにはJICAから委託された開発コンサルタントが現地に派遣され、国際協力が行われます。
JICA職員になるためには、一般企業と同じように採用試験や面接に合格する必要があります。
新卒採用も毎年行われており、JICAの公式ホームページで公募が行われます。エントリーシートの提出やWEBテストに合格すると面接や論文試験に進み、その後最終面接を経て内定が決まる流れです。
開発コンサルタント会社職員
開発コンサルタントとは、政府やJICA、日本企業から依頼を受けて、主に発展途上国での開発援助や貧困対策、インフラ整備などの仕事に携わるプロ集団を指します。
日本のODAを管理しているのはJICAですが、JICA単体ですべての開発プロジェクトを回すことはできません。そのため、JICAがプロジェクトの実施者を開発コンサルタントに委託している場合が多いです。
開発コンサルタント会社は大規模なものから小規模なものまで様々ですが、開発やプロジェクト管理、またそのプロジェクトに関連した分野の専門的な知識が必要になる仕事が多いため、新卒採用を行っている会社はあまり多くありません。
また、開発コンサルタント会社の最終面接まで行った友人は、担当官から「開発コンサルタントの一人前になるためには20年は必要だ」と言われたようです。
その友人は「変化の激しい時代にこんなことを言ってくるなんて、終わってる」と判断し、この後に紹介する社会的企業への就職を決めたそうです。笑
開発コンサルタントについて詳しく知りたい方は、こちらの記事もご覧ください。
➡開発コンサルタントとは?必要なスキルから年収、やりがいまで解説 - 原貫太のブログ
NGO職員
NGOとはNon Governmental Organizationの頭文字を取った略称で、日本語では非政府組織と呼びます。
「NGO=無償のボランティア」と考えている人もいますが、それは誤解です。給料をもらいながら有給職員として働くこともできます。
10年くらい前なら「NGOは安月給だから食べていけない」と考えられていましたが、近年はNGOの給料・待遇も確実に向上しており、NGO職員の平均年収は341万円となっています。
➡NGOの給料は341万円!どこから出る?待遇は?元NGO職員が全部教えます - 原貫太の国際協力ブログ
日本の場合、ほとんどのNGOは「NPO法人格」を持っているため、「NGO職員になる=NPO法人に就職する」と考えて問題ありません。
NGO職員の仕事は様々です。発展途上国で支援活動を進める海外駐在員だけではなく、国内の事務所に勤務し、寄付を集めたり、広報活動をしたりと、いわゆるバックオフィス業務を担当する職員もいます。
NGOは限られた資金で活動している団体が多いため、基本的には即戦力の人材しか採用していません。そのため新卒で就職できるNGOは非常に少なく、基本的には3~5年程度の社会人経験が必要です。
また、定期的に採用をしているNGOも少なく、事業拡大や欠員補充の際に公募をかけることが一般的です。NGO職員になることに興味ある方は、こちらの記事もご覧ください。
➡NGOに就職するには?新卒・中途で就職する具体的な方法や必要なスキルを解説 - 原貫太の国際協力ブログ
フリーランス国際協力師
組織に所属することなく、僕のようにフリーランスとして国際協力に関わることもできます。
フリーランスの場合は組織に所属しないで働くため、「給料」という概念はありません。その代わりYouTubeを運営したり、本を出したり、講演をしたりすることで収入を作りながら、アフリカでの国際協力活動に携わっています。
昔から個人で国際協力を行っている方は多数いるので、フリーランスで国際協力をすること自体に新しさはありません。
ただ、個人で国際協力やる上では、これまでは「いかにして収入を得るか」が大きな課題になっていました。
僕はインターネットをフル活用し、多様な働き方を実現することで安定した収入を生み出しているので、その点が「新しい国際協力」として評価してもらっているのだと考えています。
フリーランス国際協力師としての仕事はYouTubeチャンネルでも話しているので、ぜひこちらもチェックしてみてください。
社会的企業職員
社会的企業とは「ソーシャルビジネス」と言い換えることもできます。ビジネスを通じて社会問題の解決を目指している企業です。
社会的企業とNGOの違いは、NGOが主には寄付金を使って社会問題の解決を進める一方で、社会的企業は寄付金など外部からの資金に頼らず、事業で収益を作りながら社会課題の解決をする点にあります。
経済産業省のソーシャルビジネス研究会によると、ソーシャルビジネスの定義は以下の3点を満たすこととされています。
- 解決が求められる社会的課題に取り組むこと
- ビジネスとして、継続的に事業活動を進めていくこと
- 新しい仕組みを開発・活用し、新しい社会的価値を創出すること
日本で有名な社会的企業と言えば、例えば「途上国から世界に通用するバッグを作る」をミッションとする株式会社マザーハウスや、「ソーシャルビジネスで世界を変える」ことを目指し、社会起業家が集まるプラットフォームカンパニーのボーダレスジャパンが挙げられます。
企業のCSR担当
企業の中に入って国際協力に関わる方法もあります。その場合、企業のCSR担当になることを目指しましょう。
CSRとはCorporate Social Responsibilityの頭文字を取った略称で、日本語では「企業の社会的責任」と訳します。
CSRとは、企業が自分たちの利益だけを追求して事業をするのではなく、従業員や消費者、投資家、環境などあらゆるステークホルダーに配慮したり、寄付や環境保全活動、さらには国際協力活動にも取り組むことを指します。
CSR部署という専門の部署を設けている企業もあるので、自分の働いている会社、もしくは就職・転職予定の会社にCSR部署があるかをチェックしてみてください。
中には国際機関やNGOと連携しながら、東南アジアやアフリカをはじめとした地域で貧困問題の解決に取り組んでいる企業もあります。
そういった企業のCSR担当になり、海外駐在員になることができれば、現地で支援活動に携わることもできるでしょう。
その一方で、自社のイメージ向上のためだけに形だけCSRを掲げていたりする企業も多いですし、企業の第一目的は営利追求なので、発展途上国で支援活動まで行っている企業は非常に限られます。
CSRについて詳しく知りたい方は、こちらの記事も読んでみてください。
➡仕事を通じて社会貢献する3つの方法【CSR・CSV・プロボノとは?】 - 原貫太の国際協力ブログ
途上国で国際協力をするなら、おすすめの職業は?
発展途上国に足を運んで、現地で教育支援や開発援助、緊急援助に関わりたい場合、NGO職員、またはフリーランス国際協力師を目指すことをおすすめします。
NGO職員とフリーランス国際協力師は、草の根で地道な支援活動を行っている場合が多く、現地で直接的に受益者と関わる可能性の高い職業です。
職種にもよりますが、国際公務員や政府機関職員の場合、発展途上国に派遣されたとしても首都のオフィスで調整役の仕事が中心だったり、会議に出席したりする仕事が多いと聞きます。
また、社会的企業職員も企業のCSR担当も、発展途上国に駐在して仕事をする人はごくごく少数です。多くの場合、日本国内での仕事を担当することになります。
そのため、もしあなたが発展途上国で現地の人たちと直接的に関わる仕事がしたい場合、最も可能性の高いのはNGO職員かフリーランス国際協力師です。
ただ、NGO職員も全員が発展途上国に駐在するわけではありません。日本国内で広報やファンドレイジング、啓発の仕事をする人が8割以上です。
NGO職員に興味のある人は、以下の記事も読んでみてください。
➡世界平和に仕事で貢献したい人はNGO職員を目指そう【国連やJICAより勧める理由】 - 原貫太の国際協力ブログ
国際協力を仕事にすると給料はどれくらい?
国際協力を仕事にするといっても職種は様々であり、また経験年数やポジションによって給料の金額はバラバラです。
そのため、国際協力を仕事にした場合の給料を知りたければ、個別の団体・機関・会社の給料情報を調べるのが確実な情報源になります。
各職業の概ねの給料はこんな感じです。
- 国際公務員…500万円~1000万円
- 政府機関職員…300万円~1000万円
- 開発コンサルタント会社職員…300万円~1000万円
- NGO職員…200万円~400万円
- フリーランス国際協力師…100万円~1000万円
- 社会的企業...300万円~600万円
- 企業のCSR担当...300万円~1000万円
さいごに
国際協力を仕事にする7種類の方法を解説しました。
国際協力を仕事にするのは簡単なことではありませんが、近年はインターネットの普及や働き方の多様化に伴って、国際協力に関わる方法も様々にあります。
この記事を読んだ一人でも多くの方が、国際協力を仕事にしてくれたら嬉しいです。いつか世界のどこかでお会いしましょう!
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こちらの記事もよく読まれています。あわせてご覧ください➡国際協力おすすめ本32選 入門書から常識をブチ破る本、洋書までドドンと紹介 - 原貫太のブログ