フリーランス国際協力師の原貫太です。
『発展途上国』という言葉を使うことに、あなたは違和感を覚えませんか?
発展途上国以外にも開発途上国、第三世界、後進国など様々な言い方がありますが、いずれにせよ僕は違和感を覚えてしまいます。
このブログでも、発展途上国という言葉はよく使っています。便宜上、経済的に豊かな国を先進国、国民の大半が貧しい生活を送る国を発展途上国といった感じで。
でも、冷静になって考えてみると、「発展途上国」という言い方では現在の世界を正しく捉えることはできません。あのビルゲイツも、今の時代に「発展途上国」という言葉を使うのは間違っていると主張しています。
今の世界を正しく捉えるためにも、
- なぜ発展途上国という言い方は間違っているのか?
- 代わりにどんな尺度で世界を捉えるべきか?
確認しておきましょう。
発展途上国という言い方は、実は間違っている
発展途上国という言葉で括れるほど世界はシンプルではない
例えば東南アジアのカンボジアと、アフリカの南スーダンという二つの国を例に考えてみましょう。
カンボジアと南スーダンは、一般的にはどちらも「発展途上国」として捉えられています。
しかし、カンボジアは内戦が終わってから25年以上経過していますし、基本的には国全体で治安が安定しています。首都のプノンペンは経済成長が著しく、日本人もたくさん生活しています。
農村部に足を運べば貧困もまだ存在しますが、それでも確実に経済成長している国であることには間違いありません。
一方の南スーダンは2011年7月に独立した世界で最も若い国ですが、2013年から内戦が続いており、飢餓や栄養不良で亡くなる子どもたちもたくさんいます。すでに400,000人以上の人々が内戦で亡くなりました。
一つの指標としてGDP成長率を比べてみると、カンボジアは+6.8% 、南スーダンは-13.8%です。
どう考えても、これだけの違いがある二つの国を「発展途上国」という一つの枠組みで捉えてしまうのは、おかしいですよね。
「世界の大半の国々は発展途上国だ」と言われますが、その大半の国々を発展途上国という一つのカテゴリーで捉えてしまうのは、やはり間違っています。
発展途上国の国内では絶望的な経済格差が存在する
発展途上国は国民全員が貧しい国ではありません。正確に表現するなら、富がごく一部の金持ちだけに集中し、先進国とは比べ物にならないほど貧富の格差が激しい国を、発展途上国といいます。
例えば僕が暮らすアフリカのウガンダは「発展途上国」として捉えられていますが、ウガンダの国内では凄まじい経済格差があります。
僕が国際協力活動で入っているウガンダ北東部の村では、1日100円以下で生活している人が大半です。また、下痢やマラリアなど、本来予防できる病気で亡くなってしまう子どももたくさんいます。
一方で首都のカンパラに行けば、高級カフェがたくさんあります。そういったカフェでは綺麗に"おめかし"した子どもたちが美味しそうにハンバーガーを食べていたり、ケーキを食べていたりします。
外国人や富裕層を対象にしたカフェだと、もちろん値段も高いです。日本と変わりません。
お腹いっぱいランチを食べたら、1食でも1000円以上はします。北東部で生活している人たちの、生活費約10日分ですね。
また、首都のカンパラの中でも大きな経済格差があります。
一部の富裕層は、洗濯機やテレビ付きの高級マンションに暮らしていますが、そこから車で15分も移動すると、路上で生活するストリートチルドレンがいたり、トタン屋根のスラム街で暮らす人のエリアがあります。
一つの国の中でも、都市部と農村部の間では大きな経済格差があるし、一つの都市の中でも、富裕層が暮らすエリアと貧困層が暮らすエリアの間には大きな経済格差がある。それが、発展途上国です。
にもかかわらず、ウガンダを「発展途上国」という一つの言葉で括ってしまうのは、その国がどういった状況にあるのか考えるのをやめてしまう思考停止になりかねません。
そのため、発展途上国という言葉は使わないほうがいいのではないかと思うのです。
先進国でも同じことが言えるよね
余談になりますが、これに関しては先進国でも同じことが言えます。
一般的に日本は「先進国」という呼ばれ方をしますが、世界で最も発展している都市の一つ・新宿でさえも、路上で暮らすホームレスがたくさんいます。
お洒落なカフェでパンケーキを食べているOLや大学生がいる一方で、 寒さに凍えながら生活しているホームレスの人がいます。
これだけの経済格差があるのだから、日本を「先進国」として括ってしまう見方にも、僕は違和感を感じますね。
地球環境を考えると、発展するのが前提なのはおかしい
発展途上国という言い方の対になるのが先進国ですが、言葉の論理から考えると「すべての国は経済成長するべき」と捉えられます。
なぜなら発展途上国とは「経済的に発展している途中の状態にある国」という意味だからです。
もっと言えば、かつて発展途上国は「後進国」という言い方をされていたことを考えると、理解しやすいはず。(経済的に)「後」ろを「進」んでいる「国」ですからね…。
でも、 世界に196ある国すべてが経済成長を続け、いつか先進国になる日が来たとすれば、その日にはもう、地球環境はダメになっていると思います。
現在人間が消費している自然資源の量は、地球1.7個分に相当すると言われています。もし地球上の全員がアメリカ人と同じ生活をしたら地球5.3個分、日本人と同じ生活をしたら地球2.9個分が必要になるらしいです。
それから、 GDP成長率2%の国がそのままのペースで1000年間経済成長を続けると、4億倍も経済成長することになります。こんなの、どう考えてもありえません。
アフリカや東南アジアの中には、GDP成長率が7%や8%の国ありますから、2%だと4億倍なので、7%だと…。考えただけでも恐ろしい。
近年は気候変動問題が世界中で取り上げられていますが、 今の発展途上国がこのまま経済成長を続け、いずれ先進国になった日には、地球上の資源は枯渇し、環境そのものが食いつぶされてしまうでしょう。
その意味で、そもそも「発展途上」という考え方から抜け出すことが大切です。
発展途上国に代わる新しい世界の見方は?
冒頭でも軽く紹介しましたが、ビルゲイツは世界を「発展途上国」「先進国」という言い方で捉えることは間違っていると指摘しています。
その代わり、世界を4つの所得グループで捉えるべきと語っています。
- 1日2ドル以下で暮らす人たち
- 1日2ドル〜8ドルの所得で暮らす人たち
- 1日8ドル〜32ドルの所得で暮らす人たち
- 1日32ドル以上の所得で暮らす人たち
僕が今ウガンダで支援している人たちは、そのほとんどが一つ目のグループです。一方、スマホやパソコンでこの記事を読んでいる人、つまり皆さんのほとんどは4つ目のグループになるはずです。
先進国と発展途上国という二分法を使わないことをビルゲイツに決意させたのは、昨年大きな話題になった『ファクトフルネス』という本を読んだことがきっかけらしいです。
僕もこの本は読みましたが、 世界の現状を正しく理解する上では素晴らしい一冊でした。まだ読んだことのない方は、ぜひチェックしてみてください。
こちらの記事もよく読まれています。あわせてご覧ください➡国際協力とは具体的に何か?まるで教科書のようにわかりやすく解説 - 原貫太のブログ