原貫太オフィシャルブログ

フリーランス国際協力師原貫太のブログです。

ホテルルワンダ感想 知られざるルワンダ虐殺の"事実"とともに

来週18日から3週間ほど、4回目のアフリカに行ってきます。

 

 

年末年始はルワンダで過ごす予定です。もうルワンダは3回行ったので(ほぼ)観光し尽ましたが、久しぶりに虐殺の跡地を訪問しようと思っています。

 

さておき、一緒にアフリカに行く彼女の初鑑賞に付き合う形で、昨日『ホテルルワンダ』を観ました。ルワンダに行ったことある人は、大体みんな観たことがある作品だと思います。

 

「ルワンダ虐殺の原因とか歴史とか詳しい話は分からんけど、『ホテルルワンダ』なら何となく聞いたことあるぞ」という人も多いのではないでしょうか。

 

僕がこの映画を観たのは今回が3回目だったのですが、初めて鑑賞した大学2年生の時よりも東アフリカの政治や歴史に詳しくなったからか、抱く感想も少し変わりましたね。

 

今回は『ホテルルワンダ』の感想を、ルワンダ虐殺の知られざる"真実"とともにまとめます。

 

『ホテルルワンダ』の簡単なあらすじ

 

はじめに、ざっくりとした『ホテルルワンダ』のあらすじを載せておきます。多少のネタバレを含みますが、ご了承ください。

 

 

舞台は1994年のルワンダ共和国。虐殺が始まったのが4月7日ですから、恐らくその一か月くらい前の1994年3月頃から、映画のストーリーが始まっているかと思われます。

 

 

一時は和平調停も結ばれ、落ち着きを取り戻すかのように思われた首都キガリ。しかし、4月6日に起きたフツ族系大統領の暗殺をきっかけに、国民の大多数を占めるフツ族系の民兵によって、少数派のツチ族ならびに穏健派フツ族の虐殺が始まります。

 

 

そんな内戦の中、主人公ポール・ルセサバギナは、1200名以上の避難民を自身が支配人を務める高級ホテル「オテル・デ・ミル・コリン」に匿いました。

 

虐殺を主導するフツ系民兵にとっては、ツチを庇うフツは「裏切り者」と攻撃の対象にしていたため、ポールは何度か危険な目にも遭っています。

 

 

結局、ラストは……と、ここからのストーリーはまだ観ていない方のために書かないでおきますね。

 

 

初見の人にとっては非常にショッキングな内容ですが、基本的にはすべて実話に基づいた話です。

 

 

『ホテルルワンダ』から感じてしまう単純な民族対立の構図

ホテルルワンダ 感想

ルワンダ虐殺時に10,000人が犠牲になった教会の跡地


主人公ポールの奥さんは(虐殺の標的になる)ツチ族だったこともあり、『ホテルルワンダ』の中では、家族全員で何とか生き延びようと必死に奮闘する姿が描かれています。こういったシーンには、内戦のリアルを感じますね。

 

その他にも、

 

  • 外国人(白人)だけがルワンダから避難
  • ルワンダ虐殺の報道を見ても世界は何も動いてくれない。むしろ国連軍も撤退
  • 大国が介入するか介入しないかは国益に基づく恣意的な判断による

 

といった内容は、ルワンダ虐殺から20年以上が経った今でもアフリカや中東で紛争が続いている状況を見ると、私たちに考えさせるものがあります

 

 

しかし、少なくとも『ホテルルワンダ』の映画を観ただけでは、ほとんどの人はこんな感想を持つのではないでしょうか。

 

 

”フツは酷い人たち。ツチは可哀想な人たち。”

 

 

実際、今回が初めて『ホテルルワンダ』鑑賞だった彼女は、

 

「少なくともこの映画からは、虐殺を主導したフツが酷い人たちで、ツチは可哀想な人たちという印象を抱いた。ラストのシーンで少しだけ映ったツチの反乱軍は、内戦を終わらせた”英雄”のようにすら見えた。」

 

こんな感想を抱いたと話しています。

 

 

『ホテルルワンダ』では描かれなかった”事実”

ホテルルワンダ感想

キガリ首都にあるジェノサイド・メモリアル


ルワンダ虐殺では、過激派フツ系民兵によって、少数派ツチ族(と穏健派フツ族)約80万人が殺害されたとされています。

 

しかし、一方で『ホテルルワンダ』の中では描かれなかった歴史的”事実”も存在するのです。いくつかご紹介します。

 

 

亡くなった人の数はツチ<フツ??

ある研究によれば、「ルワンダ虐殺では、フツが殺したツチよりも、ツチが殺したフツの方が多かった」という指摘もあります。

 

実際、現大統領のポール・カガメ率いるルワンダ愛国戦線、通称「RPF」(『ホテルルワンダ』のラストシーンで民兵に襲われるポールたちの窮地を救ってくれた反乱軍)は、ルワンダの政権を掌握した後も、コンゴ東部で虐殺を続けていたことが国連報告書で暴かれています。

 

また、ルワンダ国際戦犯法廷の分析では、「虐殺におけるフツ人の犠牲者はツチの2倍であった」とも言われています*。フツ族を根絶やしにしなければ、ツチ族によるルワンダの支配は難しいと考えたのかもしれません。

 

※小川真吾『ぼくらのアフリカに戦争がなくならないのはなぜ?』P134を参照

 

 

虐殺の引き金になったフツ系大統領暗殺はツチ系RPFによるもの?

虐殺の引き金になった当時のフツ系大統領の暗殺は、一般的には多数派のフツによるものだったとされています。

 

しかし、最近の研究によれば、この暗殺はツチ系のRPFによるものだったという見方が強くなっています。フランス政府は、大統領襲撃を指示したのは、当時RPFの司令官を務めていたポール・カガメ現ルワンダ大統領であったと正式に表明しています*。

 

※小川真吾『ぼくらのアフリカに戦争がなくならないのはなぜ?』P134を参照

 

フツのリーダーを殺害しない限り、ツチ系がルワンダの政権を奪取することは難しいとカガメは考えていたのでしょう。

 

『ホテルルワンダ』の中では、ラストのRPFが侵攻してくるシーンでは、まるでRPFが主人公たちを助けてくれた存在のような描かれ方をしていますが、そもそも内戦のきっかけとなった大統領暗殺は、RPFが主導したという見方が強いのです。

 

 

『ホテルルワンダ』の感想とルワンダ短期旅行者の感想は似ている

ホテルルワンダ 感想

 

もちろん、『ホテルルワンダ』の製作者には政治的な意図はないでしょう。ルワンダ虐殺の悲劇を伝える映画としては素晴らしい作品なので、僕も疑いたくありません。

 

しかし、ルワンダ内戦や現ルワンダ政権について深く勉強すると、『ホテルルワンダ』のみならずルワンダ虐殺に関する映画には、どうしてもプロパガンダに近い匂いも感じてしまうのが正直な感想です。

 

『ホテルルワンダ』を観た人には、「酷いフツ、可哀想なツチ」といった感想を持つ人が多いと書きましたが、これは、ルワンダを短期旅行した人の感想にも近いものを見て取ることができます。

 

上述してきた「知られざる事実」は、現在ツチ系政権の監視下にあるルワンダ虐殺の跡地では、まず触れられることはありません。「加害者のフツ、被害者のツチ」という構図がそこには映し出されています。

 

そのため、ただ旅行でルワンダ虐殺の跡地を訪れた人は、ここで紹介した『ホテルルワンダ』を観た人と似た感想を抱いてしまうのでしょう。

 

 

さいごに

少しひねくれた感想になってしまいましたが、東アフリカ一帯の政治や歴史を勉強した上で『ホテルルワンダ』を鑑賞すると、どうしてもこのような感想を持ってしまいます。

 

ルワンダは治安も良く、人も優しいため、僕も大好きな国の一つです。また、国際社会からの援助もあったとはいえ、内戦でボロボロになった国を復興させ、現在の状態までに国を統治するポール・カガメ大統領の手腕には、目を見張るものがあります。

 

しかし、こと大局的な視点から政治に目を向けると、恐ろしい一面もまた備えている国、それがルワンダです。ルワンダは「アフリカのシンガポール」と評価されることもありますが、手放しに称賛することはできない。

 

それが、僕の正直な感想です。

 

 

なお、元ルワンダ青年海外協力隊のタケダノリヒロさんが執筆した記事「映画『ホテル・ルワンダ』は嘘だった?〜ルワンダ虐殺追悼週間〜」も非常に興味深いので、こちらのあわせてお読みください。

xn--rck1ae0dua7lwa.com

 

 

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www.kantahara.com