「クロールを速く泳ぐためには、どうすればいいのだろう?」
「もっと楽に、効率よくクロールを泳げるようになりたい。」
こんな悩みを解決します。
50mクロールの生涯ベスト記録が24秒20の原貫太です。現役時代は全国中学とインターハイに出場しました。
いくらハードな水中練習をしたり、筋力トレーニングをしても、効率的な泳ぎ方を身に着けない限り、クロールを速く泳げるようにはなりません。
この記事で紹介するコツを意識して、クロールの練習に取り組んでみてください。
クロールを速く泳ぐ5つのコツ
クロールを速く泳ぐためには、何よりも「水の抵抗を減らす」ことが大切です。そのために、以下5つのコツを意識してみてください。
ボディポジションを高くする
ボディポジションを高くして、体が受ける水の抵抗を減らしましょう。
僕が高校生の時、身長が小さく、筋肉も少ない華奢な身体なのに、50mクロールを23秒で泳ぐジュニアのトップスイマーがいました。
どうしてそんなことが可能なのかコーチに聞くと、「彼のような小柄な選手が速く泳げるのは、ボディポジションがとても高いからだ」という答え。
ボディポジションが高くなれば、身体(特に腹部・背部)が受ける水の抵抗が大きく減りますからね。
ボディポジションを高い位置でキープしながら泳ぐには、陸上トレーニングで体幹を鍛えたり、呼吸時に息を吐き切らないようにすることなどが必要です。
S字ではなくI字プルで泳ぐ
近年の研究によると、クロールを速く泳ぐためにはS字プルよりもI字プルの方が望ましいと言われています。
S字プルとは、水に入水した手を胸とおなかの下を通すようにかくプルです。Sの字を書くようにして水を掻くため、S字プルと言われます。
多くの人は初めてクロールを習った時、S字プルで教わったかと思います。
一方のI字プルでは、体の軸と平行に、後ろに真っすぐ手を掻きます。「ストレートプル」と呼ばれることもありますね。
このS字プルとI字プルはどちらが効率的か長年議論がされていましたが、筑波大学や東京工業大学の研究チームによると、以下の結果が判明しています。
中長距離で効率(より少ない身体発揮パワーで推進力を得る)が求められる状況では、S字でかいた方が良く、短距離で効率より速度が重視される場合にはI字でかいた方が良いとする見解が得られました。(「S字ストロークか?I字ストロークか?―最適クロール泳法のメカニズムを解明―」より引用)
50mや100mのような短い距離をクロールで泳ぐ際には、スピードを出すために、S字プルではなくI字プルの方が望ましいと言われています。
体幹を鍛え、ストリームラインを崩さない
体幹(身体の頭部と四肢を除く胴体部分)が左右にぶれながら泳いでいると、水の抵抗が増えます。
腹筋や背筋を鍛えることで体幹がぶれなくなれば、ストリームラインが崩れにくくなり、水の抵抗を減らすことができます。
また、50mクロールや100mクロールのような短距離種目では、キックを安定して打つことが大切です。キックが安定すればボディポジションが高くなり、水の抵抗が減るからです。
安定したキックを打つためには、ブレない体幹を作ることが大事。陸上でのトレーニングにも力を入れましょう。
1軸ではなく2軸で泳ぐ
ローリングをする1軸ではなく、ローリングをしない2軸クロールで泳ぎましょう。
1軸クロールでは頭の頂点から体の中央を貫く1本の軸を基準にして、体をローリングしながら泳ぎます。
その一方、2軸クロールでは右肩・右股関節と左肩・左股関節にある2本の軸を基準にして泳ぐため、ローリングが入ることがありません。
近年の研究では、クロールを泳いでいる時はローリングをしない方が効率よく、速く泳げると言われています。
ローリングをしているため体幹がブレてしまいがちでキックは安定せず、力が伝わりにくい。無理に力を入れると腰の過剰不可がかかり怪我の元になる可能性がある。
(中略)
ローリングで体がブレてしまうと、呼吸の際に顔が上がってしまいがちで、呼吸がしにくく余計な抵抗が増えてしまう。
(「水泳ベストタイム更新プログラム ~2軸泳法で4泳法に革命を起こす~【日本体育大学 水泳部コーチ藤森善弘 監修】」より引用)
身体をローリングしながら泳ぐ1軸クロールでは、体幹がぶれやすくなり、水の抵抗が増えてしまいます。
また、ローリングすることによってストリームラインも崩れやすくなるため、安定したキックを打ち続けることも難しいです。
水の抵抗を減らすためにも、1軸クロールではなく2軸クロールを研究してみてください。
力み過ぎない
一生懸命に泳ごうとすればするほど、体が力んでしまい、結果的に水の抵抗が増えてしまいます。
そのため体力も消耗し、前半に比べて後半はガクッとスピードが落ちてしまうのです。心当たりある人もいるのではないでしょうか。
特に50mクロールや100mクロールのような短距離種目では、力の入れ具合も自然と大きくなるため、自ずと水の抵抗が大きくなります。
速く泳ぐためにやたら筋トレを頑張る人がいますが、筋力が付けば付くほど泳ぐ時に力が入りやすくなるため、水の抵抗が増えてしまうリスクがあります。
そのため、水の抵抗という”無駄”を減らしてから筋力を付けた方が、効率的かつ速く泳ぐことができるようになります。
2軸クロールで効率的かつ速く泳げる?
水の抵抗を減らし、効率的かつ速くクロール泳ぐためには、1軸ではなく2軸クロールがいいと言われています。
2軸泳法とは、以下のような泳ぎ方を言います。
2軸泳法は左右の肩関節と股関節を結んだ2つの軸を動きの基準にして体を安定させ、できるだけ推進力を犠牲にすることなく水の抵抗を減らしながら泳ぐ方法です。
(水泳ベストタイム更新プログラム ~2軸泳法で4泳法に革命を起こす~【日本体育大学 水泳部コーチ藤森善弘 監修】より引用)
身体をひねることなく、肩から骨盤にかけた左右二つの軸を中心として泳ぐため、体幹がぶれにくく、余計な水の抵抗が生じにくいのが2軸泳法の特徴です。
特に両手両足を交互に動かしながら泳ぐクロールと背泳ぎでは、タイムに顕著な結果が表れやすいと言われています。2軸クロールについて詳しく知りたい方は、こちらの記事もご覧ください。
➡2軸クロールとは何か?もっと楽に、速く泳ぎたい人は必見です
さいごに
クロールを速く泳ぐコツを解説しました。
プールで練習する時間も大切ですが、水泳はテクニックがものを言うスポーツだからこそ、自分の泳ぎ方を研究する時間も大切です。
理論と実践、どちらも大切にしながら、水泳を楽しんでくださいね。
【追記】効率的な泳ぎ方、ちゃんと勉強していますか?
「練習は頑張っているのに、レースでは思ったようなタイムが出ない…。」
「みんなと同じ練習をしているのに、自分だけベストタイムが伸びていない…。」
水泳は、闇雲にトレーニングをしていればタイムが伸びる競技ではありません。間違った泳ぎ方を続けていれば練習した時間が無駄になるだけではなく、ケガをするリスクもあります。
もし今のベストタイムに満足していないなら、この機会にトップスイマーがみんな導入し始めている「2軸泳法」を勉強してみてください。
アテネオリンピック出場の森隆弘さんをはじめ、元オリンピック代表選手や日本代表コーチの方も推薦しています。
今注目されている2軸泳法について知りたい方、こちらの記事もあわせてチェックしてみてください。
➡水泳ベストタイム更新プログラム ~2軸泳法で4泳法に革命を起こす~【日本体育大学 水泳部コーチ藤森善弘 監修】