原貫太の国際協力ブログ

フリーランス国際協力師原貫太のブログです。国際協力やNPO・NGO、アフリカ、社会問題などのテーマを中心に解説しています。

内戦と紛争の違いは?アフリカで活動する日本人がわかりやすく解説します

「内戦とは何だろう?紛争とはどう違うのだろうか?」

 

こんな疑問にお答えします。

 

フリーランス国際協力師の原貫太です。内戦によって家を追われた難民の支援にアフリカで関わっていました。

内戦と紛争の違い

内戦が続く南スーダンの難民の子どもたちと

 

テレビや新聞を見ていると、内戦と紛争はほとんど同じ文脈で使われているのが現状です。両者の違いも曖昧にされています。

 

しかし、内戦と紛争の違いを理解していなければ、現在世界で起きている戦争に対して誤った認識を持つことにも繋がりかねません。

 

 

内戦と紛争の違いは?

内戦と紛争はどちらも武力紛争を表す言葉ですが、内戦と紛争の違いは、内戦はある国家の領域内で行われている武力紛争であるのに対して、紛争はその影響が国家の領域内だけにとどまらず、様々な国家・勢力が関わっている武力紛争を意味します

 

あくまでも内戦と紛争という言葉上の違いですが、基本的にはこの理解で問題ありません。

 

テレビや新聞では、一つの国家の領域内で行われている武力戦争に対して「紛争」という言葉が使われている場合もありますが、厳密に内戦と紛争の違いを考えるなら、この認識がより正しいです。

 

実際に内戦と紛争、それぞれの意味を調べてみると以下のように書いてあります。

 

内戦(ないせん、英語:civil war)とは、国家の領域内で対立した勢力によって起こる、政府と非政府の組織間の武力紛争を指す。(Wikipedia「内戦」より引用)

無政府状態である秩序の中において、さまざまな国家・勢力がその利害関係から対立する事態が発生した場合、上部の調停機関がないため、武力行使によって相手に自らの意思を強制しようとする場合がある。この武力行使によって双方の戦力が激しく争う事態を武力紛争と呼ぶ(Wikipedia「紛争」より引用)

 

※太字部分は原による強調

※紛争は、争いごとや対立を表す広い意味としても使われます。紛争は非常に意味の範疇が広い言葉であり、裁判における紛争や政治・経済的な対立も意味する言葉ですが、この記事ではあくまでも武力紛争としての紛争について述べています。

 

内戦と紛争は違いが曖昧な言葉

内戦 紛争 違い

 

内戦は一つの国家内における武力紛争を表す一方で、紛争はその影響する範囲が国家内にとどまらず、様々な国家や勢力が関わっている武力紛争を意味すると書きましたが、実際には内戦と紛争の違いや線引きは曖昧です。

 

例えばシリア内戦について考えてみましょう。

 

シリア内戦は、当初はアサド政権が率いる政府軍と、それに反発する反政府軍の間で武力紛争が勃発しました。この時点では、シリアという国家の領域内で対立した勢力同士による武力紛争なので、内戦という言葉を用いることができます。

 

しかし、時間が経つにつれて、アメリカやロシアといった諸外国が関わるようになったり、イスラム国といった国家ではない主体が武力紛争に関わったりするようになりました。

 

こうなると、シリアにおける戦争の影響は一つの国家内にとどまっていないので、上記の内戦と紛争の違いを考慮すると、内戦ではなく紛争という言葉を使う方がベターに思われます。

 

僕は意識的に内戦ではなく紛争を使う

内戦 紛争 違い

武力紛争で故郷を追われた難民の支援を現地で行っていた

 

僕は基本的に「内戦」という言葉は使わず、「紛争」という言葉を使っています。

 

その理由は、世界で今起きている武力紛争は、そのほとんどが一国の「内」で完結するのではなく、他国との関わりの中で起きているから。特にアフリカは酷いです。

 

例えば南スーダン。まだ南スーダンとして独立する前のスーダン時代に起きていた北部対南部の”内戦”時代には、アメリカをはじめとした欧米諸国が干渉しています。

 

また、独立後の南スーダン”内戦”は石油権益をめぐって争いが続いていますが、この石油を大量に輸入しているのは中国と言われています。

 

そして中国に輸入された石油は、例えば100円ショップなどの安価な商品を大量生産するために使われ、そして”Made in China”というラベルが貼られて日本に輸入されています。

 

最終的にそれらを購入し、日常生活で使っているのは日本の消費者です。僕たちも消費行動を通じて、間接的に南スーダンの”内戦”に関わっていると言うことができます。

 

だから南スーダンで起きている武力紛争は、「内戦」と表現するべきではないのです。内戦という言葉を使えば、それは自身に責任の一端があるにもかかわらず、ただ外から傍観している者になりかねないのです。

 

アフリカで起きている戦争が先進国の生活とどのように関係があるのか、拙著『世界を無視しない大人になるために』でも詳しく書きました。ぜひ、こちらの本も読んで頂きたいと思います。 

 

内戦と紛争の違い 総まとめ

内戦とは、ある国家の領域内で行われている武力紛争であるのに対して、紛争はその影響の範囲が国家の領域内だけにとどまらず、様々な国家や勢力が関わっている武力紛争を意味します。

 

その一方で、テレビや新聞などのメディアですらも内戦と紛争の違いを特に意識せず使っていることも多いです。

 

世界で起きている武力紛争が複雑化する今、言葉の違いを正しく認識しながら使っていきたいですね。

 

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