人間を最も殺している生き物ランキング、第一位はライオンでもサメでもワニでもなく、夏になるとたくさん現れるあの生き物です。
人間の数百倍、いや数千倍は小さいあの生き物によって、世界全体で毎年725,000人もの人間が殺されています。サメが殺している人間の数の72,500倍です。
人間を最も殺している生物ランキングともに、第一位の生き物がいかに恐ろしいか、見ていきましょう。
人間を最も殺してる生物ランキングトップ15は?
2014年4月にビル&メリンダゲイツ財団が発表した報告書『World's Deadliest Animals』(世界で最も危険な動物たち)によると、人間を最も殺している生物ランキングのトップ15は以下のようになっています。
- 蚊 725,000人
- 人間 475,000人
- ヘビ 50,000人
- イヌ 25,000人
- ツエツエバエ 10,000人
- サシガメ 10,000人
- 巻き貝 10,000人
- カイチュウ 2,500人
- サナダムシ 2,000人
- ワニ 1,000人
- カバ 500人
- ゾウ 100人
- ライオン 100人
- オオカミ 10人
- サメ 10人
「The Deadliest Animal in the World」より引用
そう。人間を最も殺している生物ランキング第一位は、蚊なんです。
危険と考えられがちなサメやライオン、ワニといった生き物は、このランキング的には下の方になります。人数的にもサメが10人、ライオンが100人、ワニが1000人と、それほど多くありません。
こういった生き物が危険であるというイメージが根付いているのは、メディアの影響力が大きいですよね。サメやライオンが人間を襲ったという事件が起きれば、テレビや新聞がこぞって「恐ろしい惨劇が起きた」とニュースにしますからね。
もちろん危険な生き物であることに変わりはありませんが、データ的に見てみると、死亡者数という点ではもっと恐ろしい生き物が他にいるのです。
例えば5位のツエツエバエは、寄生性原虫トリパノソーマを媒介し、「アフリカ睡眠病」(Sleeping Sickness)を人間にもたらします。病状が進行すると髄膜脳炎を起こし、最終的には昏睡状態に陥って死に至ることもある病気です。
6位のサシガメは「クルーズトリパノソーマ」という寄生虫を媒介し、人間にシャーガス病をもたらします。このシャーガス病は、原虫の侵入した部位に腫れや炎症が生じ、発熱、肝脾腫に進行、一部の患者は急性心筋炎や髄膜脳炎で死亡することもあります。
こういった感染症を媒介する生き物の生息地は、主にはアフリカなどの熱帯地域です。ライオンやワニといった大型の生き物よりも、実は身近に潜む小さな虫の方が、よほど多くの人間を殺しています。
犬は年間25,000人の人間を殺している
ランキング第4位には、私たちにとっても馴染みのある犬が入っています。犬は毎年25,000人もの人間を殺しているのです。
幼い子どもが犬に襲われて亡くなるケースも少なからずあるとは思いますが、犬によって殺されている人のほとんどは、狂犬病によって命を落としています。
日本ではワクチンの普及によって狂犬病はほぼ根絶されましたが、世界全体では年間5万人以上が狂犬病に感染し、死亡しています。その90%以上は、インドやフィリピンなど、僕らが暮らすこのアジア地域で起きているのです。
ちなみに今年5月22日には、愛知県豊橋市でフィリピンから出稼ぎに来ていた人が狂犬病を発症したことが確認されました。国内では実に14年ぶりの狂犬病発症だったようです。
狂犬病は昔から存在する病気ですが、現代医療では治療法が確立されておらず、発症したら致死率はほぼ100%、回復した例はわずかしかありません。しかも、その回復例はすべて以前にワクチン接種を受けていたか、もしくは症状が出る前に暴露後のワクチン接種や免疫血清による予防処置を受けていたケースです。
そのため、狂犬病のリスクがある国に行く前には、ワクチンを打ってから行くことが推奨されています。
蚊は毎年72万人の人間を殺している
人間を最も殺している生物ランキング、ぶっちぎりの一位は蚊です。 毎年725,000人の人間を殺しています。
そのほとんどが、蚊が媒介する感染症によって命を奪われているのです。
蚊によって媒介される感染症として、最も有名なのはマラリアです。世界で年間約2億人が感染し、推計43万人が命を落としています。WHO(世界保健機関)によると、マラリア死亡者の90%はサハラ砂漠より南のアフリカに集中しています。
蚊によって殺される72万人のうち、270,000人が5歳未満の子どもと言われています。幼い子どもは免疫力や体力が少なく、貧困層の家庭は抗マラリア薬を購入したり、病院での治療を受けたりすることが難しいため、マラリアを発症すると助かる可能性が低いのです。
マラリア以外にも、蚊が媒介する恐ろしい感染症としてはデング熱や、脳炎などを引き起こすウエストナイルウイルスなども存在します。こういった感染症によって、毎年72万人もの人間が、あの小さな生き物によって殺されているのです。
これから日本でも蚊に殺される人が増えるかもしれない
日本では2014年に一時期デング熱が流行しましたが、基本的には蚊に刺されても痒くなるだけですよね。
でも、マラリアやデング熱が流行している国では、蚊に刺されることが命がけである場所もあるのです。僕もアフリカ・ウガンダ共和国にいる時は、マラリアを媒介する夜行性のハマダラカがたくさん飛ぶ夜は、蚊帳の中に入って仕事をしています。
ただ、これからは日本でも、一部の熱帯病、例えばデング熱が流行する危険性があると指摘されているのです。
「地球温暖化の影響によって、日本が東南アジア化してきている」そんな話を聞いたことがある人もいると思います。夏になると、東南アジアで見られるようなスコール、いわゆるゲリラ豪雨がたびたび起きていますよね。
この地球温暖化に伴って、日本でもデング熱が流行する危険性が高まっていると指摘されています。環境省が温暖化の影響をまとめた報告書『気候変動の観測・予測及び影響評価統合レポート 日本の気候変動とその影響2012年度版』によると、デング熱を媒介するヒトスジシマカの分布は「2035 年には本州の北端まで、2100 年には北海道まで拡大する」という予測が紹介されているのです。
そうなると、蚊によって殺される日本人が増える未来が来る、その可能性も決してゼロではありません。
人間を最も殺している生物ランキング、改訂版でも蚊が堂々の第一位
『World's Deadliest Animals』の改訂版が2016年に出されているのですが、ここでも人間を最も殺している生物ランキングの第一位は、ぶっちぎりで蚊となっています。
- 蚊 830,000人
- 人間 580,000人
- ヘビ 60,000人
- サシチョウバエ 24,200人
- 犬 17,400人
- サシガメ 8,000人
- 巻き貝 4,400人
- サソリ 3,600人
- ツエツエバエ 3,500人
- カイチュウ 2,700人
- サナダムシ 2,600人
- ワニ 1,000人
- カバ 500人
- ゾウ 100人
- ライオン 100人
- ハチ 60人
- トラ 50人
- クラゲ 40人
- オオカミ 10人
- サメ 6人
「Why I’d Rather Cuddle with a Shark than a Kissing Bug」より引用
人間を殺している生物ランキング、1位が蚊というのは意外な結果でしたか?YouTubeでは映像付きで解説しているので、ぜひこちらもチェックしてみてくださいね。