フリーランス国際協力師の原貫太(@kantahara)です。
僕は大学在学中にNGOを立ち上げ、新卒でNGO職員になりました。2019年からはフリーランスに転向し、国際協力の仕事を続けています。
「NGOを設立したいけど、何から始めればいいのかわからない。」そんな疑問を持つ方向けに、この記事ではNGOを設立するための4つのステップを解説します。
実際に僕がNGOを起業した時の体験談も踏まえていますので、これからNGOを設立したい人は参考にしてください。
NGO設立の前に知っておきたい基礎知識
NGO設立の具体的なステップを解説する前に、NGOの基本的な知識を確認しておきましょう。
NGOとはNon Governmental Organizationの頭文字を取った略称で、日本語では「非政府組織」と呼びます。NPOとの違いを理解していない方は、以下の記事も読んでみてください。
NPOとNGOの違いを日本一わかりやすく解説【誤解してる人が多すぎる!】 - 原貫太のブログ
NGOは”政府”に”非”る”組織”、つまり政府ではない組織を表す言葉です。広い意味では市民団体から大学のサークルまで、政府の組織でなければどんな組織もNGOになります。
しかし、この記事ではあくまでもNGOを以下のように定義します。
政府や国際機関とは違う民間の立場から、利益を主要な活動目的にすることなく、貧困、紛争、環境、人権などの国際的な課題解決を目指して活動する団体(「NGOとは何か?元NGO職員が日本一わかりやすく、簡単に解説します!」より引用)
いわゆる国際協力活動を行う団体をNGOと定義し、話を進めていきます。
NGOを設立するための4つのステップ
新しくNGOを設立したい人は以下4つのステップを踏みましょう。
- 想いに共感してくれる立ち上げメンバーを5人集める
- ビジョンを徹底的に議論する
- NPO法人化の手続きを進める
- 寄付を集め始める
この4つのステップが終わってから、本格的な国際協力活動を始めてください。実際に僕がNGOを起業した時の話を絡めながら、ひとつ一つ詳しく解説します。
NGO設立のステップ① 想いに共感してくれる立ち上げメンバーを5人集める
NGOを設立しようと思ったら、まずは自分の想いに共感してくれる立ち上げメンバーを集めましょう。まずは5人程度で大丈夫です。
この後に説明するNPO法人化の手続きとは違って、NGOの設立には役所への申請や届け出は不要です。仲間が集まりさえすれば、任意団体としてのNGOを名乗ることができます。
たとえ大学のサークルだとしても、一緒に活動する仲間が集まり、国際協力をすることが主な活動であれば、自分たちをNGOとして名乗ることができるのです。
想いに共感してくれる仲間を集めるには、当然ですが「なぜNGOを設立したいのか?」「NGOを設立して何をやりたいのか?」を明確に伝える必要があります。僕が大学4年生で南スーダン難民支援のNGOを設立した際には、
- 自分が目の当たりにした南スーダン難民の窮状
- 就活をやめてでも、今すぐに行動を起こしたいという想い
- NGOを新たに設立し、挑戦することへのワクワク感
などをブログに書き、SNSでシェアすることで仲間を集めました。最初の頃はTwitter経由で協力してくれるメンバーが集まりましたね。
最初のうちは5人程度集まれば大丈夫です。何なら1人か2人でもOK。
NGOを設立するのは大変なため、すぐに人手が欲しくなるかもしれません。しかし、設立初期はステップ②の「ビジョンを議論する」時間などが必要なため、人数が増えると話し合いがまとまらなくなり、逆に大変になってしまいます。
まずは自分の想いに心から共感してくれる人を5人程度集めましょう。5人集まったら、本格的にNGOの設立スタートです。
NGO設立のステップ② ビジョンを徹底的に議論する
仲間が集まったら、ビジョンを徹底的に議論し、文章に落とし込みましょう。NGOを設立する最初のステップとして、このビジョンを決めるのが最も大事なプロセスです。
ビジョンとは、自分たちのNGOが最終的に実現したい世界を指します。いわゆるスーパーゴールですね。
「NGOの活動を通じてどんな世界を実現したいのか?」「どんな問題を解決し、どんな理想の社会を築きたいのか?」こういった抽象的な問いに向き合い、ビジョンを突き詰めてください。
ちなみに僕が設立したNGOコンフロントワールドのビジョンは「不条理のない世界の実現=生活と権利が保障され、誰もが自分で未来を決められる社会の実現」でした。このビジョンを決めるために数十時間、いや百時間以上は議論したと思います。
ビジョンというのはNGOが目指す最終ゴールだからこそ、心から納得し、共感し、熱狂できるものにならなければなりません。
NGOを立ち上げて間もない時期は、ほとんど全員が無給のボランティアで活動することになります。お金のために働くのではなく、ビジョンのために働く人が集まる。そんなNGOにするためにもビジョンが重要です。
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ビジョンは最終的に実現するゴールだからこそ、そう簡単に変わるべきものではありません。その意味でも初期のメンバーが何度も議論を重ね、文章に落とし込んでいく必要があります。
ビジョンを言語化するプロセスは非常に時間がかかり、大変な作業ではありますが、最終的に目指す世界が定まると、自然と活動内容や活動方針も決まるようになります。
文章化が難しければ、すでに活動しているNGOのビジョン・ステートメントを参考にして、心の底から誇れる唯一無二のビジョン・ステートメントを考えましょう。
ビジョンを文章化することで明確にし、メンバーひとり一人が頭の中にイメージできるようになることが、NGO設立のステップとして非常に重要です。
NGO設立のステップ③ NPO法人化の手続きを進める
日本のNGOは、その多くがNPO法人格を持っています。NGOの活動で食べていくことを考えているなら任意団体で終わるのではなく、NPO法人化の手続きまで完了させましょう。
NGOのような公益団体が法人格を持つ場合、一般社団法人や一般財団法人などの選択肢もありますが、長期的に寄付や会費を広く集めていくことを考えれば、NPO法人格をおすすめします。
NPO法人格には「認定NPO法人格」というワンランク上の法人格があるのですが、認定NPO法人になることが出来れば、寄付をしてくれる人たちが「寄付控除」を受けられるようになり、寄付を集めやすくなります。
ちなみにNPO法人は日本に約5万団体ありますが、そのうち所轄庁から認定を受けた認定NPO法人はわずか全体の2%、1,095団体しかありません(平成30年11月時点)。
国際協力に取り組むNGOで、認定NPO法人として活動する団体の数はさらに少ないです。団体としてのブランディングの観点からも、最終的には認定NPO法人を目指すことをおすすめします。
この記事ではNPO法人格を取得するための具体的な手続きまでは解説しませんが、昨今はNPO法人設立に関する解説本や、NPO法人設立をサポートしてくれる中間団体も多いため1年あれば十分に設立可能です。
僕がNPO法人化の手続きをするために参考にした本を紹介しておきます。他のスタッフたちにも協力してもらいながら、約10カ月で手続きを終えることができました。
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NGO設立のステップ④ 寄付を集める
法人化の完了していないNGOといえども、メンバーのポケットマネーで活動し続けることは現実的ではありません。早いうちから寄付を集め始めましょう。
NGOが活動を継続するための収入源は、大きくわけると以下の4つがあります。
- 会費…NGOの正会員から集める年会費・月会費など
- 寄付…マンスリーサポーターやクラウドファンディングを通じて集める寄付
- 事業収入…講演や物販などの事業を通じて得る収入
- 助成金…財団やJICAなどから得られる助成金
安定した収入源かつ自由に使える資金を確保するには3つ目の事業収入を増やすことが一番ですが、設立して間もないNGOは事業もほとんどないはずです。
また、財団やJICAから得られる助成金も、多くの場合は応募条件として「法人格を取得してから2年以上経過していること」などが設けられています。
そのためNGOを設立して間もない時期は、まずは寄付を集めることに注力しましょう。長期的に安定して寄付を集めるためにも、できれば月額制の寄付者である「マンスリーサポーター」を集めるようにしてください。
すでに何らかの支援活動や事業を行っているNGO、またはしっかりとした計画のあるNGOなら、クラウドファンディングを行ってもいいかもしれません。僕はNGOを設立して2ヶ月が経った頃、南スーダン難民支援を行うためにクラウドファンディングを実施しました。
ただ、クラウドファンディングは一時的に多額の寄付を集めるための資金調達方法に過ぎないため、マンスリーサポーターを集めることを優先してください。
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NGO設立のステップ まとめ
実際にNGOを立ち上げた経験から、NGOを設立するためのステップをお伝えしました。
今回紹介した4つのステップは、あくまでもNGO設立の初期段階における話です。スタッフを雇い始めたり、海外に駐在員を置いたりし始めると、他にも大変な仕事が多数出てきます。
しかし、その多くはNPO法人の設立に関する本を読んだり、すでにNGOとして活動する団体の人に話を聞いたりすれば解決できるはずです。
このブログでもNGOに関する知識を多数書いているので、他の記事もあわせて読んでみてくださいね。
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