原貫太オフィシャルブログ

アフリカでの国際協力活動から新時代の働き方、情報発信術まで。※本ブログの内容は個人の見解によるものです。

南スーダン難民と働いて考えた人間の"自尊心"-本当に意味のある国際支援とは

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僕はウガンダ北部の難民居住区で、何人かの南スーダン難民たちと一緒に働いている。

 

彼ら自身、紛争で故郷を追われ、ウガンダへと避難してきた人たちだ。けど、南スーダンにいた頃にエンジニアや教師を務めていたり、高校・大学まで修了していたりする彼らは、英語も話すことができるため、難民居住区では日当をもらいながら働くスタッフを務めている。

 

居住区での厳しい生活を強いられながらも、僕たちが支援対象としているシングルマザーや孤児といった緊急的な支援を必要とする難民たちに比べると、彼らの表情はとても活き活きしているのだ。

 

一緒に働くグレイスは、この半年で見違えるほど表情が変わった。今年2月に出逢った時、彼女は暗い顔で、紛争によって夫と生き別れたこと、現在は仕事も無く焚木拾いで小銭を稼いでいることを、私に語ってくれた。寂しそうな眼差しで、まだ幼い子どもの将来を心配している様子が印象的だった。

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今年2月に撮影

 

ただ、仕事を手にして、僕と一緒に働く今の彼女は、表情も明るく、日本人スタッフたちとも時々冗談を言い合っているくらいだ。正直に、最初に出逢った時と比べると、まるで別人のようだ。

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今年9月に撮影

 

一緒に働く難民のスタッフたちと、脆弱な立場に置かれている難民たちとの間では、なぜこんなにも表情に違いがあるのだろうか。考えた結果、「自尊心」という言葉が一つ頭に浮かんだ。

 

 

自尊心とは、自分の人格を大切にする気持ちを表す。そして自尊心は、自分が他者に対して何か力になれているとき、価値を提供できているとき、心の中に芽生えてくるものだと思う。

 

 

テラ・ルネッサンスの小川真吾氏は、ウガンダの紛争で戦わされてきた子ども兵の社会復帰には、職業技術や小規模ビジネスの運用能力よりも、自尊心が最も影響を与えていることをその論文で示している。

 

例えば、元子ども兵たちが初めての給料を得た時、貯金に回すのではなく、自分の子どもに服を買うのにお金を使ってしまう。一見、日本人の僕たちの目から見たら、その行為は社会復帰するためには、マイナス行為であるように思える。

 

しかし、短期的にはその行為がマイナスだとしても、長期的に考えた時、「誰かに何かをしてあげられている」という状態は、彼らの自尊心を満たし、そして社会復帰に良い影響をもたらすのだ。

 

 

南スーダン難民たちを見ていても、同じことが言える。仕事を通じて誰かの力になれることは、彼らにとってそれが一つの生きがいになり、そして自尊心を引き出す。

 

紛争によって何もかも失い、着の身着のまま隣国まで逃げてきた難民たち。厳しい生活環境の中で、大した仕事にも就けず、援助機関に頼らなくてはならない生活では、彼らが自尊心を持つことが難しいのは当然かもしれない。

 

 

欧米をはじめとする先進諸国(日本を含む)は、過去50年間で230兆円もの支援をアフリカに注いできた。この230兆円という額は、6000年前の縄文時代から毎日1億円をドブに捨て続けても、捨てきれないほどの量なのだ。それなのに、2017年になっても、アフリカは貧困、紛争、病気、汚職、そして支援慣れという負の連鎖から抜け出せずにいる。

 

植民地時代や冷戦期をはじめ、アフリカ諸国は欧米先進国の政治的・経済的利害によって翻弄され、その地に生きる人々の「自立」と「自治」は阻害され、「従属」せざるを得ない状況に長らく置かれてきた。

 

だからこそ、いつまでも僕たちが一方的に「与える」のではなく、彼らが生きがいを見つけ、そして自尊心を持てるような「支援」を実施していくこと。様々な外部要因によって妨げられている彼らの能力が、十分に引き出される環境を作ってあげること。

 

 

僕たち援助関係者に課されている一つのミッションが、そこにあるかもしれない。

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グレイスと働く原。支援対象者である難民の方の家で撮影。

 

 

*個人情報保護の観点から、スタッフの名前は仮名を使用しています。