原貫太の国際協力ブログ

フリーランス国際協力師原貫太のブログです。国際協力やNPO・NGO、アフリカ、社会問題などのテーマを中心に解説しています。

国際機関で働く夢を持つ人は、この質問に答えられる?【どの組織で何をしたいの?】

国際機関で働く夢を持っている人は、この質問に答えられるだろうか?

 

「どの国際機関で、どんな仕事に携わりたいのですか?」

「あなたは国際機関の仕事で、どんな世界の実現に貢献したいのですか?」

 

僕の周りには「国際機関で働きたい」と夢を語る高校生や大学生がたくさんいるのだが、彼らにこの質問をぶつけると、大抵は答えに詰まっている印象だ。

 

 

国際機関に就職したいって、具体的にどの組織に?

国際機関で働く

ニューヨークの国連本部。筆者撮影

 

よくSNS経由で学生から「私は将来、国際機関で働きたいです」とメッセージを貰うのだが、先ほどの質問

 

「具体的にどの組織に就職したいのですか?」

「具体的にどんな仕事をやりたいのですか?」

 

と質問すると、うまく答えられる人が非常に少ない。「ユニセフで働きたい」「難民の支援がしたい」くらい、フワッとした回答しか返ってこないことがほとんどだ。

 

「国際機関で働きたい」という抽象的すぎる夢では、将来進むべき道を具体的に定めることはできない。ファーストキャリアで働くべき分野も決められなければ、大学院で専攻すべき内容も考えられない。

 

だから、「国際機関で働く」程度の薄っぺらい夢では、不十分なのだ。もっと具体的に考えてみよう。 

 

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国際機関と一言で表しても、様々な組織がある

国際機関で働く

 

大学生の中にも「国際機関=国連」と考えている人が時々いるが、もちろん違う。

 

国際機関と一言で表しても、分野は多岐にわたっている。国際機関の一つである国連だけでも、

 

  • 子どもの問題に取り組むUNICEF
  • 難民問題に取り組むUNHCR
  • 人道問題全般に取り組むUNOCHA

 

など、たくさんの組織がある。

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国際連合広報センター「国際連合機構図」より借用

 

国連以外にも、国際機関はたくさんある。例えば

 

  • 途上国に対する融資を行う世界銀行
  • 世界最大の人道支援機関である赤十字国際委員会
  • 世界的な人の移動の問題を専門に扱う国際移住機関
  • etc...

 

他にもオックスファムやセーブ・ザ・チルドレンといった大型国際NGOも、広く言えば国際機関に含まれるだろう。

 

国際機関に就職したいなら、興味関心だけではなく、自分が専門とする分野やそれまでの経験、世界のニーズ、自分自身の軸…あらゆる要素を考慮しながら、どの機関で働くのが一番相応しいかを考える必要がある

 

国境なき医師団で働く白川優子さんが書いた以下の記事も、あわせて読んでみてほしい。

これから人道支援の道を目指すあなたが今から取り組むべき5つの事(白川優子) - 原貫太のブログ

 

憧れだけで国際機関で働くことを夢にしないで

国際機関で働きたいあなた。自分の胸に手を当てて、正直に考えてみてほしい。憧れだけで国際機関を目指してしまってはいないだろうか?

 

国際協力に携わる時、手段と目的を取り違えないようにしよう。国連で働こうが、政府機関で働こうが、NGOで働こうが、そんなものは手段の一つに過ぎない。

 

いつも言っていることだが、手段と目的を履き違えてはならないのだ。

 

認定NPO法人テラ・ルネッサンスのカンボジア駐在員である延岡由規さんは、『国際協力師たちの部屋』の中で以下のように語っている。

 

「国際協力」をすることが目的になっている人がたま〜にいるんですよね。原さんの周りでもいませんか?

 

例えば、大学に入った新入生が国際協力サークルに入るパターン。入った当初は「途上国の人のために何かしたい」とか、熱い想いを抱いていても、時が経つにつれて次第にそれが薄れていく。

 

サークルに所属している=国際協力に携わっていること自体に満足感というか、ある種の優越感を覚えてしまって、現地の人たちへの想いがなくなりはせえへんけど、気付いたらどんどん冷めちゃってる人っていると思うんですよね。

 

他にも、青年海外協力隊や国連職員を目指している人なんかもね。それになること自体が目的化していて、その先にあるヴィジョンに雲がかかってしまっている状態の人がいたり。もちろん、憧れとか夢を持ってて素晴らしいと思うんやけど、そこで終わるのがもったいない気がして。

 

(中略)

 

繰り返しになるけど、「国際協力」は理想の世界を実現するために、数ある手段の中のひとつに過ぎないってこと。『国際協力師たちの部屋』より引用)

 

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国連(国際機関)だけではなくNGOも視野に入れてほしい

国際機関で働く

NGOの一員として、南スーダン難民支援に携わっていた

 

国際機関で働くことに関心ある人の多くが「国連」を目指すが、そんな人たちに一言だけアドバイスをするなら、国連だけではなくNGO(非政府組織)で働くことも視野に入れてほしい。

 

僕の周りには、国連、NGOの両方で働いた経験を持つ人もいるが、「NGOに就職した後の方が、自分が本当にやりたい国際協力を実践できている」と話す人が多い。

 

国連は組織や事業の規模が非常に大きく、広告費も莫大に使えるので、認知度が高くなる。だから、自ずと国連で働きたい人も多くなる。

 

でも、正義感が強く、それでいてパッションがある人なら、国連ではなく、NGOの立場から国際協力に携わることも勧めたい。どうしても”国際的な機関”に就職したいという人なら、大型国際NGOを視野に入れてみてほしい。

 

国連は、その政治性ゆえに、加盟国の国益や政治的パワーバランスに飲み込まれてしまい、その機能が度々麻痺しているのが現実だ。

 

例えばシリア内戦における安全保障理事会の機能不全を見たら、一目瞭然だろう。常任理事国五カ国(アメリカ・ロシア・中国・イギリス・フランス)に拒否権があり、要は第二次世界大戦に勝った国に都合のよい体制が敷かれている。

 

一方で非政府組織であるNGOは、目指すビジョンをベースに、「世界を良くしたい」という純粋な動機で活動を実施できる。朝日新聞元アフリカ特派員である三浦英之氏のツイートが、そのことを端的に表してくれている。

 

 

もちろん国連にも様々な役割があるため、すべての機関で機能がマヒしているわけでは当然ない。

 

しかし、国際協力は何も、国際機関に就職しないと携われないものではない。国際機関で働くことに関心を持っているのと同じように、NGOというセクターにも目を向けてもらえたら嬉しい。

 

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さいごに 国際機関で働く夢を、手段に変えよう。

国際機関で働くという夢自体を否定しているわけではない。国際的な視座を持ち、世界のために働く若い人が増えていくことは、僕も嬉しい。

 

でも、国際機関には様々な分野や立場が存在する。

 

大切なことは、自分が理想とする世界に近づくために、自分自身の使命を果たすために、国際機関で働くという手段が本当に相応しいのか考えること。

 

そして、もし国際機関で働くのであれば、どの機関で働くのが自分にとって相応しいのか、その先までしっかりと考えることだ。

 

国際機関で働くことに関心ある人に、参考にしてもらえたら嬉しい。

 

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