原貫太の国際協力ブログ

フリーランス国際協力師原貫太のブログです。国際協力やNPO・NGO、アフリカ、社会問題などのテーマを中心に解説しています。

元子ども兵を支える元子ども兵-「私はクリスマスイブに誘拐され、少年兵になった」

先日、「教師として元子ども兵を支える「元子ども兵」 アフリカから日本へメッセージ(動画)」で紹介したロナルド先生(仮名)。彼のライフストーリーを詳しく紹介したい。 

--

1990年代に入ったウガンダ北部では、神の抵抗軍(LRA/Lord's Resistance Army)と呼ばれる反政府軍が力を増し、民間人の虐殺や子どもの誘拐などを頻繁に繰り返していた。推定3万8千人の子どもが誘拐され、兵士として戦場に駆り出されてきた。

 

1995年のクリスマス・イブ、ロナルドが当時暮らしていた村もLRAによる襲撃に遭った。ロナルドは両親を失い、彼自身もLRAによって誘拐された。ロナルドは、その日のことは一生涯忘れないだろうと話す。わずか11歳の時だった。

 

誘拐されたロナルドは、他の子ども兵たちと同じように、森の中を何時間も歩かされ、戦闘や誘拐にも携わるようになった。8年間、彼は子ども兵として世界で最も残虐な反政府軍LRAに拘束されることになる。

 

19歳の時だ。ウガンダ北部ランゴ地区にて、LRAとウガンダ政府軍の間で激しい戦闘が起こる。ロナルドは右太ももに銃撃を受け、臀部に大けがを負うも、戦闘の最中にLRAから脱出し、政府軍に保護された。

 

保護後、現地NGOであるGUSCO(Gulu Support the Children Organization)運営の社会復帰センターで簡単なリハビリとサポートを受けたロナルドは、2006年にテラ・ルネッサンスの社会復帰施設にやって来た。

 

心に深い傷を負ったロナルド。しかし、社会復帰施設に来た彼は、トラウマを癒す心理社会支援と共に、洋裁、平和教育、小規模ビジネスの基礎知識を学び、そして未来の彼を形作っていく「リーダーシップ」をも身に付けていく。

 

そして2009年、晴れてテラ・ルネッサンスの社会復帰施設を卒業した彼は、他の卒業生たちと協力しながらグループでビジネスを始める。その後、彼はグループから独立し、一人で洋服店を構えるまでに成長していった。

 

「未だに、時々右足が痛む」と話す彼。私と歩くときも、彼はいつも足を引きずっている。銃撃を受けた時から14年が経つが、障害によって身体的に不自由な生活を今なお強いられているのだ。

 

しかし、彼の温かい笑顔は、テラ・ルネッサンスの職場を和ませる。元子ども兵として人生の8年間を失った彼は今、テラ・ルネッサンス社会復帰施設で洋裁の先生として、同じ境遇を強いられた元子ども兵たちをサポートする側に回っている。

 

--

 

テラ・ルネッサンスがこれまで受け入れた元子ども兵の数は192名。推定3万8千人もの子どもがLRAに誘拐されて兵士にさせられてきたことを考えると、私たちが支援した数は、わずかに過ぎないかもしれない。

 

しかし、その中には、家族のみならず、自身の所属するコミュニティの人々の生活をもサポートしている卒業生もいる。本来、帰還後の元子ども兵は、地域社会から差別や偏見を受け、孤立してしまうことが多いにも関わらず、だ。

 

 

そして、ロナルドのように、先生という立場から元子ども兵を支えている元子ども兵もいる。私は、その光景に勇気を貰うと共に、内戦で荒れ果てたウガンダ北部の人々が自尊心を取り戻し、自分たちの力で立ち上がろうとする「力」を感じる。

 

最後にもう一度、ロナルド先生から日本の支援者様へのメッセージを紹介する。

 

--

 

テラ・ルネッサンスの活動を通じて、元子ども兵という社会的に弱い立場にある人たちを支援して下さる日本の支援者様に、感謝しています。そしてまた、テラ・ルネッサンスに感謝しています。

 

私たちの兄弟や姉妹の中には、未だ反政府軍に拘束されている者もいます。帰還後には、彼らにもテラ・ルネッサンスの支援が必要になるかもしれない。だから、今の支援を、これからも続けてほしいです。

 

元子ども兵の人々を支える活動は、決して生易しいものではありません。ウガンダの現地スタッフたちは、彼ら彼女らの人生を変えることのできる、素晴らしい人々です。支援を受けた元子どもたちは、家族の、そしてコミュニティの生活を支えており、普通の生活を送れるようになっています。

 

テラ・ルネッサンスのすべてのスタッフに神のご加護がありますように。ありがとうございます。