「NGOに就職するには、具体的にどんな方法があるのだろうか?」
「NGO職員になるには、どんなスキルが必要なのだろうか?」
こんな疑問にお答えします。
フリーランス国際協力師の原貫太です。NGO職員として2年間働いた後、現在はフリーランスとして国際協力活動をしています。
発展途上国の貧困や紛争、環境問題などを解決するために活動する非政府組織NGO。
今回の記事ではNGO職員になりたい方向けに、NGOに就職する具体的な方法や必要なスキルを解説します。
NGOに就職するには?
国際協力に取り組むNGOは日本に400団体以上ありますが、新卒で就職できるNGOは非常に少ないです。ほとんどのNGOが中途採用しか行っていません。
NGO職員になるには基本的には3~5年の社会人経験を積み、中途で就職するのが一般的と考えてください。
NGOは限られた資金や人員で活動しているため、基本的には社会人経験のある即戦力しか採用しないからです。
ただ、新卒でNGOに就職する方法が全くないというわけではありません。新卒・中途でNGOに就職する方法をそれぞれ解説します。
新卒でNGOに就職する方法
新卒でNGO職員になるには、学生の間にNGOで長くインターン経験を積み、卒業後そのまま就職するという方法があります。
この方法でNGOに就職したのが『国際協力師たちの部屋』を僕と共同執筆した延岡由規さんです。彼は大学卒業後、そのままNGOに就職しています。
学生時代にインターン生として2~3年活動し、その間にコネと実績を作っておけば、新卒でNGO職員になることも不可能ではありません。
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または、大学卒業後に青年海外協力隊を経験し、帰国してからNGOに就職する方法もあります。
この場合も社会人経験を一度も経ることなく、実質的に新卒でNGO職員になることができます。
青年海外協力隊として発展途上国で2年間活動していれば、その経験を買われ、NGOの海外駐在員になれる可能性もゼロではありません。
しかし、新卒で青年海外協力隊になるのは簡単なことではありません。在学中に何らかの専門性や資格を得ていない人は、新卒枠だと「コミュニティ開発」や「青少年育成」くらいしか応募できないからです。
これらの職種は、倍率がめちゃくちゃ高いです。
以上をまとめると、新卒でNGO職員になるのはハードルが高いことがわかると思います。現実的には一度社会人経験を積まないと、NGOに就職するのは難しいです。
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中途でNGOに就職する方法
NGOの多くは新卒採用を行っておらず、社会人経験のある中途採用が中心です。NGOの求人には「社会人経験3~5年以上が必要」と書かれていることが多いですね。
以下の図を見てください。これは、国際協力NGOセンターとNPO法人Green Projectが共同実施した「NGOセンサス2017」の内容です。
多くのNGOは定期的に中途採用を行っているわけではありません。職員の欠員や事業拡大の際に、適宜人材の募集をかけます。
中途でNGOに就職したい場合、団体のホームページやSNS、またはJICAが運営する国際協力系人材サイトの「PARTNER」に求人が掲載されているか都度確認したり、直接団体に問い合わせたりする必要があります。
イレギュラーなケースではありますが、まずはアルバイトという形でNGOに雇用され、実績を残すことができれば正職員に昇格できる、という方法もありますね。気になるNGOがあれば、採用状況を一度問い合わせてみてください。
リクナビNEXTのような転職サイトでもNGOの国内事務所のスタッフが募集されることが時々あるので、「国際協力」や「NGO」といったキーワードで調べてみてください。
また、一般企業と比べるとNGOも組織規模の小さい団体がほとんどなので、既にNGOで働いている人からの紹介や口コミで採用が決まる場合もあります。
そのため、気になるNGOがあれば積極的にイベントに参加してみたり、働いている職員さんと仲良くなって、就職に興味がある話などをしてみましょう。
NGO職員になる前に一度社会人経験を積むべき理由
NGOに就職する方法を解説しましたが、これからNGO職員になりたい方には、一度社会人経験を積み、基本的な仕事能力や何らかの専門性を磨くことをおすすめします。
限られた資金と人員で活動するNGOは、新人研修にお金や時間を割く余裕はほとんどありません。そのため、就職後は即戦力として活躍することを期待されてしまいます。
社会人経験を積み、基本的な仕事の進め方や何らかの専門性を持っている方が選考が有利に進みますし、就職した後もスムーズに働きだすことができるでしょう。
また、NGOは少ないリソースで最大限のパフォーマンスを発揮してくれる人材、つまりは何らかの分野で高い専門性を持っている人材を優先して採用する傾向があります。
学生時代にインターンやボランティアでよほど知識や経験を積んでいない限り、より効果的な形で国際協力に関わるためにも、ある程度の職務経験を積んでからNGOに就職することをおすすめします。
ただ熱い想いがある人ではなく、経験とスキルがあり、社会課題の解決に貢献できる人材をNGOは採用するということを理解しておきましょう。
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NGOに就職するため必要なスキルは?
NGOは決まった時期に人材採用を行っているわけではなく、欠員が出た際や事業拡大の際にスタッフの求人情報を出しています。
そのため、各々のNGOがその時にどんな人材を求めているかに左右されるため、NGO職員になるために必要なスキルや能力を一概に伝えることは難しいです。
上記のことも理解してもらった上で、NGOで働いた経験のある立場から、NGO職員になるために必要なスキルを6つ挙げます。
SNS運用とWebライティング
近年のNGOはインターネットを使った資金調達(ファンドレイジング)に力を入れている団体が多いです。
そのため、SNS運用やWebライティングなどのスキルがある人なら、NGOの広報スタッフとして採用される可能性が高いです。
また、NGO職員になると自団体のホームページやSNSを更新したり、報告書やプレスリリースを書いたりと、文章力を求められる場面も多くなります。
学生のうちからTwitterやInstagram、ブログを使った情報発信に力を入れて、SNS運用やWebライティングのスキルを身に着けておきましょう。
動画編集
これからはNGOでも、動画編集のスキルが求められる場面が増えます。
僕は2020年から本格的にYouTubeでの情報発信にも力を入れていますが、国際協力NGOで動画での情報発信に力を入れている団体はほとんどありません。言ってしまえば、競合がほとんどいないブルーオーシャン状態です。
その一方、「これからは動画の時代が来る」と言われていますし、特に発展途上国の問題をわかりやすく伝える必要があるNGOは、今後動画での情報発信に力を入れていく可能性が大きいです。
実際に、チャイルドスポンサーシップで有名なワールドビジョンといった大きなNGOは、この数年で動画広告に一気に力を入れ始めました。
SNS運用やWebライティングに加えて動画編集のスキルがある人は、NGOの広報スタッフとして採用される可能性が高くなるはずです。
デザインスキル
どれだけ素晴らしいビジョンやミッションを持っているNGOだとしても、それを伝える方法がかっこ悪ければ、社会に注目してもらうことはできません。
「スゴく良い活動をしているにもかかわらず、ホームページや報告書のデザインがダサい…」という課題に直面しているNGOは、実はかなり多いです。
そのため、デザイナーとしてのスキルが高い人は、NGOで活躍できる可能性に溢れています。
例えば僕がかつて働いていたNGO「認定NPO法人テラ・ルネッサンス」では、プロのデザイナーの方が広報部門のリーダーをやっています。
そのデザイナーの方が年次報告書のデザインを担当しているのですが、他のNGOと比べてもデザインのセンスが抜群に高いです。
報告書がイケているNGOとダサいNGOなら、前者の方が応援してくなりますよね。
大きなNGOだとデザインを外注している団体も多いですが、一緒に働く職員にデザイナーを抱えているほうが、ビジョンやミッションを上手に社会に伝えられるはずです。
そういった観点からも、デザインのスキルがある人はNGOに求められています。というか、NGOはデザインのスキルを持っている人を積極的に採用するべきです。
プロジェクト管理能力
NGOの海外駐在員になりたい場合は、プロジェクトの管理能力や経験が求められます。
発展途上国に駐在する日本人のNGO職員は、基本的にはマネージャーという立場になります。現地人スタッフが行っているプロジェクトを管理するのが主な役割です。
そのため、例えばPCM(Project Cycle Management)やPDM(Project Design Matrix)といったプロジェクト管理の経験・スキルがある人がNGOの海外駐在員には求められます。
英語力
NGOの海外駐在員になりたい場合、やはり高い英語力は必要です。僕はNGO職員としてアフリカで仕事をしていた時、基本的にはすべての仕事を英語で行っていました。
もちろん現地語が話せるのがベストですが、特にアフリカのような様々な民族が暮らす地域では、現地語が複数存在する場合があります。
僕が活動するウガンダでは56の現地語があります。そのため、複数の現地語を使いこなせるようになるのは難しいです。
簡単な現地語を覚える努力をしつつも、NGO職員として仕事をこなすのであれば、基本的には英語が話せれば問題ありません。仕事で困らないレベルの英語力を身に着けるようにしましょう。
NGO職員でも、海外駐在員ではなく日本の事務所のスタッフとして働くのであれば、英語ができなくても問題はありません。
しかし、NGO職員になれば現地に海外出張で足を運ぶこともありますし、英語で海外のニュースを読めるようになれば、情報収集にも困らなくなります。日常会話レベルの英語や簡単な英語ニュースを読めるくらいのスキルがあると良いです。
タフな体と心
これをスキルと呼ぶかはわかりませんが、NGO職員になるためにはタフな体と心、言い換えると「健康」が必要です。
特に発展途上国の海外駐在員になると、日本とは全く違った環境で働き、生活するための体力や、不条理な問題を目の前にしながらも冷静に物事を進めていく精神力が求められます。
特に海外駐在員が一人や二人しかいない小さなNGOで働く場合、現地での仕事はめちゃくちゃ忙しいです。
また、NGOの国内事務所で働くとしても、基本的には常に何らかの仕事に追われています。多くのNGOは限られた人員で活動しており、ぶっちゃけ時間外労働の多いNGOもあります。
どんな仕事においても身体が資本ではありますが、NGOに就職したいと考えている人は特に健康に気を使うようにしましょう。
以上、NGO職員になるために必要なスキルを例示しましたが、NGOに就職するために必要なスキルは団体によって、また募集枠の仕事内容によって異なるため、応募要項に目を通し、自分のスキルがそのNGOで活かせるか考えましょう。
新卒でNGOを起業した僕が思う、学生時代にやっておいてよかったことは以下の記事で紹介しています。
➡国際協力を仕事にするためやっておくべき10のこと【やらないと後悔する】 - 原貫太の国際協力ブログ
NGO職員のインタビュー記事を紹介
NGOに就職した方の体験談やインタビューは、これからNGO職員になりたい人がキャリアプランを考える上で参考になるはずです。
地雷・子ども兵士・小型兵器の問題に取り組むNGO、認定NPO法人テラ・ルネッサンスに就職した鈴鹿達二郎さんは、青年海外協力隊とタンザニアの大使館勤務を経て、NGOに就職しました。
現在はテラ・ルネッサンスのウガンダ駐在員として働いています。
しかし、鈴鹿さんは学生時代からNGOで働くことを目指していたわけではありません。僕のインタビューに対して、「理系の大学院時代は、研究のためひたすら浜辺で貝を数えていたんですよ」と語っています。
➡NGO駐在員がアフリカ人から学んだ、人と”繋がる”生き方【鈴鹿達二郎さんインタビュー】
もう一人のロールモデルは、世界最大のNGOの一つ「国境なき医師団」に勤める看護師の白川優子さん。2010年に国境なき医師団に就職し、これまでにシリアやイエメン、南スーダンといった紛争地で医療活動にあたってきました。
白川優子さんが考える「これから国際協力をしたい人がやっておくべき5つのこと」は以下の記事で読むことができます。
➡白川優子が語る、人道支援の道を目指す人が今から取り組むべき5つのこと - 原貫太の国際協力ブログ
さいごに
NGOに就職するための具体的な方法や、NGO職員になりたい人が身に着けておくべきスキルを解説しました。
NGOに就職することを最終目的にせず、NGO職員という手段を通じてどんな国際協力活動に貢献したいのか、その後のビジョンも考えながら自身のキャリアプランを設計してください。
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