原貫太オフィシャルブログ

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ヨーロッパ到達の難民、2016年は前年比約3分の1に-難民送還合意が大きな要因

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photo by Ggia (European migrant crisis - Wikipedia)

 

2016年に地中海を渡ってヨーロッパに到達した難民や移民の数は、100万人を超えた2015年と比べて約3分の1の36万3348人だったと、国際移住機関(IOM/International Organization for Migration)欧州対外国境管理機関(Frontex)が今月6日に発表した。一方で、ヨーロッパを目指す途中に地中海で死亡もしくは行方不明になった人は少なくとも5079人確認されており、過去最悪の数値となっている。2015年は約3800人だった。

 

年が明けたばかりの2016年2月中旬地点では、既に82000人以上の移民・難民が海を渡りヨーロッパに到達していた。にも関わらず、1年間の合計移民・難民数が前年比で約3分の1まで減少したこととなったが、その大きな理由はEU-トルコ間の難民送還合意にある。

 

トルコはその地理的な要因から、移民や難民が多く流入しやすい。2016年12月22日時点では、280万人以上のシリア難民がトルコに滞在している。また、シリアのみならずイラクやアフガニスタン出身の難民も流入しており、トルコは310万人以上の難民を抱える、世界最大の難民ホスト国となっている。

また、2015年にトルコから海を渡ってEU加盟国であるギリシャに流入した難民は85万7000人を記録しており、EU諸国が移民・難民の流入に関して対応策を取るには、トルコとの協力・連携が欠かせない。

 

EU加盟のための交渉を2005年から行ってきたEU-トルコだが、上述したように多くの難民を抱えているトルコに対する支援強化として、2015年11月から両国間の非正規移民の流出入の抑制などを目的にした「EU・トルコ共同行動計画(Joint Action Plan with Turkey)」を始動している。この共同行動計画を実践していく過程で、昨年3月にはEU-トルコ間で難民送還合意が締結された。

 

EU-トルコ間難民送還合意の主な内容は、以下の通りだ。

・トルコからギリシャ諸島に渡る全ての新たな非正規移民と、難民認定を受けられなかった庇護申請者をトルコに送還し、その費用はEUが担う

・トルコがギリシャ諸島からの送還を受け入れるシリア人1人に対し、トルコからEU加盟国にシリア人1人を定住させる

・EUは「トルコのための難民ファシリティ」(後述)において当初拠出が予定されている30億ユーロの支払いを速め、3月末までに第一弾のプロジェクト群への資金が確実に支給されるようにする。資金を使い切った後、2018年末までの追加資金30億ユーロについて決定する

・シリア国内で同国民や避難民がより安全な地域で暮らせるよう、人道的状況を改善させるためのあらゆる共同取り組みにおいてトルコと連携する

(引用元サイト:EU・トルコの難民対策合意―その背景と進捗状況 | 駐日EU代表部公式ウェブマガジン EU MAG

 

3月20日以降にトルコを経由してギリシャに到達した不法移民は、全てトルコへと送還できることになったのだ。1年が終わってみれば、2016年にトルコからギリシャへと入った難民らの数は18万2500人となっており、2015年の85万7000人と比べて実に2割まで減少している。これだけ大きく減少した背景として、実際にギリシャからトルコへと戻された難民・移民がいる一方で、多くの人々が「(難民送還合意があるために再びトルコへと送還される可能性があるため)命を懸けてまでギリシャに渡る価値はない」と、地中海を渡るのを踏みとどまったことが挙げられる。

 

その一方、今年5月にはギリシャ司法当局が、トルコは国際法に定められている難民のための「安全な第3国」に適していないとの判断を下しており、このEU-トルコ間の難民送還合意には広く疑問が呈されてきた。

トルコの難民受け入れ体制には様々な問題が指摘されており、教育や労働の機会、また医療へのアクセスが十分に確保されているとは言い難い状況だ。昨年7月のロイター通信では、トルコ国内に滞在する多くのシリア難民の子どもが、縫製工場での勤務など児童労働に従事していることが指摘されている(関連記事:「インド、200人の子どもをレンガ窯から救出-現場で感じた児童労働問題の難しさ」)。

 

ひとこと…

「欧州難民危機」(Europe Refugee Crisis)という言葉は、約2000人の移民を乗せた船が地中海に沈み1200名の犠牲を出した事故などを受けて、2015年4月ごろから広く聞かれるようになった。特に、2015年9月には、海岸に打ち上げられたシリア難民の少年の写真が瞬く間に世界中を駆け巡り、大きな悲しみと難民問題の厳しさを私たちに痛感させたのは、記憶に新しいだろう。

 

しかし、忘れてはならないのは、「移民・難民」の問題は、これまでも常に世界のどこかで起きていたということだ。確かに、欧州難民危機をはじめとして、第二次世界大戦以後では現在最大の難民や難民申請者、また国内避難民(IDP/Internally Displaced People)が世界中で生まれているとも言われているが、一方で、例えば経済的格差を大きな要因とした「メキシコ→アメリカ」の移民問題は、これまでもずっと指摘されてきたことだ(今月20日にトランプ大統領が誕生することによって、現在一段とその議論が巻き起こってはいるが)。

また、数値だけで難民問題を見てしまうことも、「難民」という存在を固定的イメージで捉えてしまうことへとも繋がりかねない。現在、全世界に6500万人以上の難民・移民が存在すると言われているが、そのひとり一人に顔があり、名前があり、家族があり、そして人生があるという事を忘れてはならない。

 

私は明日から東アフリカのウガンダへと渡航するが、そのウガンダへも、紛争が続く南スーダンから現在多くの難民が流入しているようだ。昨年ウガンダを訪れた際は、ブルンジ出身の難民の方から直接話を聞くことが出来たが、今回の渡航中も難民の方から話を聞きたいと考えている。

 

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